圧倒的な歌声だけでなく、黒人差別や男性支配からの解放と自由を掲げる姿勢に魂が震えた『リスペクト』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:77/234
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★☆
【要素】
伝記映画
ヒューマンドラマ
音楽
ソウル・ミュージック
R&B
【元になった出来事や原作・過去作など】
・人物(歌手)
アレサ・フランクリン(1942~2018)
【あらすじ】
少女の頃から抜群の歌唱力で天才と称され、煌びやかなショービズ界の華となったアレサ(ジェニファー・ハドソン)。
しかし、その裏に隠されていたのは尊敬する父(フォレスト・ウィテカー)、愛する夫(マーロン・ウェイアンズ)からの束縛や裏切りだった。
極限まで追い詰められる中、すべてを捨て、自分の力で生きていく覚悟を決めたアレサは、ステージに立ち、観客にこう語りかける。
「この曲を、不当に扱われているすべての人に贈ります」
自らの心の叫びを込めたアレサの圧倒的な歌声は、やがて世界を歓喜と興奮で包み込んでいく――。
【感想】
"クイーン・オブ・ソウル"と呼ばれたアレサ・フランクリンの伝記映画ですね。僕はそもそも洋楽を全然聴かないので、彼女の歌といっても、CMで使われていた"Think"(1968)しか知らなかったんですが(笑)でも、後で調べたら、『ブルース・ブラザーズ』(1980)のこの人だとわかって、ちょっとびっくりしました。
<圧倒的な歌唱力>
この映画の魅力は何といっても歌ですよ、歌。そりゃ歌手を題材にした映画なんだから当たり前だろって話なんですが、ジェニファー・ハドソンの歌唱力がハンパなくて。実は、生前からアレサは自伝映画を作ろうとしていたらしく、ジェニファー・ハドソンには本人からオファーしたみたいなんですよね。さすが、本人が見込んだだけのことはありますよ。あの力強く、それでいて優しい感じがする歌声は。「どうやったらあんな歌声が出せるのか」と、同じ人間とは思えない声量でした。これは映画館で聴いた方がいいですね。
<アレサの歩んだ波乱万丈な人生>
この映画、見どころは歌だけじゃありません。アレサ・フランクリンの波乱万丈な人生も注目ポイントです。
本人は決して語りたがらなかったらしいですが、彼女は12歳と15歳のときに
妊娠・出産を経験しているんですよね。。。映画でも大きく取り上げられてはいないものの、わずかながらそれを匂わせるシーンはありました。テロップで出る年代と、彼女の年齢と、子供たちの年齢が、どうも不自然だなと思ったのはそういう事情があったわけです。いずれも夫となる人と結婚はしていないので、10代で未婚の母になったことになりますね。
さらに、19歳でマネージャーのテッド(マーロン・ウェイアンズ)と結婚するも、こいつもなかなかのサイコパスっぷり。すぐキレて人と揉め事を起こすわ、アレサを公衆の前で殴ることもあるわのクソ野郎です。結局、離婚するんですけど。
また、アレサの両親は、彼女が幼い頃に別居しています。それで父親のもとで育つんですが、その父親も厳しい人で、アレサへの束縛が激しいんですよ。映画では語られていませんが、厳しい割には不貞行為も多かったようで、それが原因で妻と別居することになったのだとか。
決して順風満帆とは言い難い環境ですよね。
<抑圧からの解放>
父親にしろ夫にしろ、どことなく似ている部分があるなと感じました。悪い人ではないんですが、男性優位と思っているというか、アレサを支配したがる傾向にあって。当時は、社会的にも女性の地位って今より低かったと思いますし、アレサもだいぶ生きづらさを感じていたんじゃないですかね。
さらに、昔は黒人差別も今よりもっとひどい時代です。アレサの父親ってキング牧師とも仲がよく、彼女も幼い頃から顔なじみ。だから、アレサも公民権運動を身近に感じていたと思うんですよ。
そんな環境に身を置いていたこともあってか、アレサの歌の歌詞って、虐げられてきた立場の人を鼓舞するようなものが映画では多かったです。それでいて、自分が体験していることだからこそ、より一層、歌に魂を込められたと思うんですよね。それが、彼女の類まれなる歌声と相まって、人々に受け入れられるようになったのかなーって感じました。性や人種を理由に抜きんでるのが難しい時代において、その抑圧された状態からの解放を誰よりも願っていたのは、彼女かもしれません。そんな中で、辛い幼少期を過ごし、ヒットに恵まれない時期を経て、"クイーン・オブ・ソウル"にまで登りつめたのは、奇跡に近いのではないでしょうか。
<その他>
それにしても、最近のハリウッド映画は、実在の歌手の伝記映画が多いですね。邦画でも作ればいいのにって思いますけど、権利的な問題から難しいんですかね。あとは、歌える役者さんがいないとか、映画にするほど波瀾万丈な人生を歩んだ人がいないのか。
何はともあれ、この映画自体は"歌"で魅せてくる映画なので、ぜひ映画館で堪能して欲しいです。
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