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濃厚な人間ドラマが面白い中で、義両親の圧力が一番えげつなかった『LOVE LIFE』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:53/148
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:エレファントハウス
 上映時間:123分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:楽曲『LOVE LIFE』(1991)

【あらすじ】

妙子(木村文乃)が暮らす部屋からは、集合住宅の中央にある広場が一望できる。向かいの棟には、再婚した夫・二郎(永山絢斗)の両親が住んでいる。小さな問題を抱えつつも、愛する夫と愛する息子・敬太(嶋田鉄太)とのかけがえのない幸せな日々。

しかし、結婚して1年が経とうとするある日、夫婦を悲しい出来事が襲う。
哀しみに打ち沈む妙子の前に一人の男が現れる。失踪した前の夫であり敬太の父親でもあるパク(砂田アトム)だった。再会を機に、ろう者であるパクの身のまわりの世話をするようになる妙子。一方、二郎は以前付き合っていた山崎(山崎紘菜)と会っていた。

哀しみの先で、妙子はどんな「愛」を選択するのか、どんな「人生」を選択するのか……。

【感想】

矢野顕子さんの『LOVE LIFE』という楽曲に着想を得て作られた映画。あくまでも僕のタイムライン上では、twitterでの評判がよかったので鑑賞したんですが、面白かったです。

<ストーリー的にはやや重い>

一見すると何の変哲もない普通の家族を軸にしたお話ですが、設定としては、特に小さな子供がいる身としては重い部分があります。まあ、察しがつくと思うので言ってしまいますが、不慮の事故で亡くなってしまうんですよね。改めて、小さな子供からは本当に目を離せないなと思いました。ただ、"やや"としたのには理由があります。もちろん子供が亡くなったこと自体はとても重いのですが、映画の中ではそれはきっかけにすぎず、メインは大人たちのやり取りの方なので、そこまで引っ張らない感じでした。

<キャラクターが感情のまま動きすぎ>

この映画で面白かったのは、ストーリー以上にキャラクターだと僕は思いました。言ってしまえば、とにかくみんな勝手すぎるんですよね。それぞれ事情はあるにせよ、好き放題だなというか、感情のままに動いているように僕の目には映りました。

まず、二郎の両親。個人的には、この2人が一番エグかったと思います。父の誠(田口トモロヲ)は妙子と二郎の結婚を認めていません。再婚だからって妙子を「中古品」呼ばわりする、モラハラ全開の人物。そんな父を叱る母親の明恵(神野美鈴)は常識人かと思いきや、ある意味こっちの方がひどいかもしれません。しれっと「今度は孫を抱かせてね」と妙子に耳打ちします。敬太は妙子の連れ子だから、明恵からしたら完全に他人ではあるんですよ。まあ、妙子が子供をもう産めないっていう設定ではありませんが、静かに圧力をかける明恵は性格悪いなと思いましたね(笑)

次に、息子の死をきっかけに現れた妙子の前夫パク。結局、家出した理由はよくわからないんですが、勝手に出てって、ふらっと戻ってきました。身勝手の極みですね。まあ、結局は妙子が面倒を見ることになるんですけど。

妙子は失意のどん底にいるから、本来なら最も感情移入させたいポジションだと思います。なのに、パクが戻ってきたことで、せっかく忘れかけていたのに情が戻ったんでしょう。「彼はあたしが守らないとダメなの!」と彼に寄り添うことに。生活保護者となったパクを、義両親が引っ越して空いた家に勝手に住まわせちゃって。可哀想だなと思っていた彼女に対して、一気に疑問が湧きましたね。普通、夫に相談ぐらいするだろって。いや、しづらいか。なら、そもそもそんな選択はしないかと(笑)

そんな妙子やパクの姿を目の当たりにした二郎も、彼らの身勝手さに辟易。途中、言葉が通じないパクに心情を吐露するシーンはあるものの、そこまで強くガツンと言えないのは、彼自身も元カノの山崎と密会していたからでしょうか。

別にみんながみんなやましさがあるわけではないんですが、勝手というか自由というか、そんな印象を受けましたね。逆にそこが人間らしいというか、妙にリアルだなと思って見入ってしまった理由でもあります。

<そんなわけで>

人間ドラマが見ごたえある映画です。テーマにやや重さはありますが、それは要素のひとつでしかなく、全体的にはどこかしら共感してしまいそうな人間像を描いたいい作品だったと僕は思いました。

ちなみに、本編とはまったく関係ないんですが、『LOVE LIFE』というタイトル、字面だけ見るとラルクの『LOVE FLIES』に見えるし、“ラブライフ”と声に出すと、“ラブライブ”に聞こえますね(笑)


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