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日本人だからこそ直視していただきたい。関東大震災後の朝鮮人虐殺の流れで、無知と集団心理によって同じ日本人を惨殺してしまった日本の闇『福田村事件』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:22/124
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★★★★★★

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:太秦
 上映時間:137分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:事件「福田村事件」(1923)

【あらすじ】

1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城(現・ソウル)を離れ、妻の静子と共に故郷の千葉県福田村に帰ってきた。同じ頃、沼部新助(永山瑛太)率いる薬売りの行商団15名は、関東地方へ向かうため四国の讃岐を出発していた。

そして9月1日、関東大震災が起こる。多くの人々が大混乱となり、福田村にも避難民から「朝鮮人が集団で襲ってくる」「朝鮮人が略奪や放火をした」との情報がもたらされ、疑心暗鬼に陥り、人々は恐怖に浮足立つ。

9月6日、沼部たちの行商団は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。そこで沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう……。

【感想】

これは、、、もう言葉が出ませんね。。。邦画史上最も胸糞悪い映画かもしれないです。。。しかもこれが、実際に起こった事件というのだから信じられません。日本人が犯した過ちについて、同じ日本人として目を背けてはならない映画だと感じました。以下、感想というより事件のまとめっぽくなってしまいますが、知っておいてほしいことです。なお、ここでは事件の正当性やら日韓関係などについて議論する気はなく、あくまでも映画の感想なので悪しからず。

<事件の背景>

日露戦争の後、大日本帝国(現・日本)は大韓帝国(現在の韓国と北朝鮮に相当する地域)を併合し、植民地支配のようなことをしていました。おそらく、この時点で当時の日本人は、朝鮮の人を下に見ている人もいたのではないでしょうか。朝鮮側もただ黙っているわけではなく、三・一運動などの独立運動を行い、日本軍によって武力鎮圧されるも、日本政府は彼らに対して警戒心を強く持っていました。さらに、当時の日本国内は大正デモクラシーなどで大きく揺れている状態で、とても不安定な情勢でもありました。

そんな矢先に、追い打ちをかけるようにして起きた関東大震災。死者・行方不明者は推定10万人を超え、明治以降の日本の地震としては最大規模の被害です。そこで日頃の鬱憤なのかはわかりませんが、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とか「朝鮮人が放火をしている」などのデマが流れたのです。これをテレビもラジオもなく、新聞が唯一のマスメディアだった中で、その新聞までもがそういうことを書くから、みんないっそのこと信じてしまって。竹槍や日本刀、銃などで武装した民間人が自警団を結成し、朝鮮人を殺害し始めたんです。中には朝鮮人と間違われた中国人や日本人(ろう者や方言を話す地方出身者)も殺されてしまい、犠牲者の正確な数はわからないものの、およそ6,000人ぐらいではないかと言われています。

<無知と集団心理による悲劇>

という背景がある中での、この福田村事件。簡単に言ってしまうと、舟に乗って利根川を渡りたかった沼部ら行商たちの話し言葉が聞き慣れない方言だったため、「おまえら朝鮮人か?」と疑われて殺されてしまったという事件です。もちろん、沼部たちはれっきとした日本人です。彼らは行商としての許可証も持っていました。それが本物かどうかを確かめるため、駐在所の巡査が本署にひとっ走りしている間に、興奮した村民によって命を奪われてしまったんですよ。「真偽が判明するまで待て」と言われたのに、一度興奮した村民たちの集団心理に火がついてしまったら、もう誰にも止められなかったんですよね。。。亡くなったのは、15人いた行商のうち9人。その中には妊婦や2歳、4歳、6歳の幼児までいました。彼女らが竹槍で刺され、日本刀で斬られるシーンは、子供を持つ身として目を覆いたくなる光景でしたよ。。。何も幼い子供にまで手をかけなくてもよかったろうに。。。

なんでこんなことになってしまったのでしょうか。先に書いた日本人の朝鮮人に対する見方や、不安定な日本国内の情勢という背景がある中で、四国の方言を知らなかった無知さと、「朝鮮人を殺す!」という集団心理に翻弄された結果でしょうか。方言については、映画だと割と聞き取れるので、同じ日本語だとわかるんですが、実際には本当に何言ってるかわからなかったり、朝鮮人が話すカタコトの日本語のように聞こえたのかもしれませんね。

すべてが間違いだとわかった後に、長谷川(水道橋博士)の言った「国を守るためだったし、そもそも自警団を作れといったのは国で、その結果誤って殺してしまった」と、自らに責任がなさそうな言いっぷりには虫唾が走りました。実際に検挙された人たちは、懲役3年~10年の実刑を受けたんですが、昭和天皇即位による恩赦で釈放されました。現代の感覚からすると「はぁ?」って感じで、昔の日本って本当にバカなのかなって腹立たしく感じるんですが、天皇を神と信じ、お国のために命を捧げることを厭わない時代だとそうなってしまうんでしょうね。

<この映画が提示する問題点>

この映画を観ると、日本人が間違って同じ日本人を殺してしまったことの悲惨さが主題のように感じます。もちろん、それはそれでひとつのポイントではあるんですが、僕はむしろ、朝鮮人というだけで無差別に殺してしまう当時の日本人の恐ろしさが問題だと思いました。この映画はあくまでも福田村事件のことしか描いていないので、朝鮮人の殺害はワンシーンしかありませんでしたが、この福田村事件が起こった大元の原因は、当時の日本と朝鮮との関係や、日本国内の情勢などが深く関わっています。そうした中で、クソみたいなデマによって多くの朝鮮人が無残にも殺されていったんです。当時の虐殺は聞くだけで発狂しそうになるぐらいで、殴る蹴る斬る焼くの他に、朝鮮人を一列に並べて機関銃で撃ち殺したり、生きたままトラックで轢いたり、妊婦の腹をかっさばいて中の赤ん坊を殺したりといったことまでしたそうです。どうしてそこまでできるんでしょうか。。。そのときの状況を描いた漫画があったので置いておきますね。

<そんなわけで>

学校では教えてくれない歴史のひとつとして知っておきたい内容でした。クライマックスの惨殺シーンの前には、狭い村の中での人間模様や男女関係も描かれており、歴史の教養としてだけでなく、映画としても面白かったのでぜひ観ていただきたいです。いろいろショッキングですが、これが100年前に実際にあったことなのです。。。


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