『ズートピア』が好きなら楽しめるのと、RPGで遊んだことがある人ほど火と水の絆に感慨深さを覚えると思った『マイ・エレメント』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:11/113
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:Elemental
製作年:2023年
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
上映時間:101分
ジャンル:アニメ、CGアニメーション、ヒューマンドラマ
元ネタなど:自身も韓国系移民である監督の少年時代からのインスピレーション
【あらすじ】
ここは火・水・土・風の4つのエレメントが暮らす街、エレメント・シティ。火の街で生まれ育ったエンバーは、家族のために、大好きな父の店を継ぐ夢に向かって頑張っていた。
ある日、エンバーは偶然、涙もろくて優しい自由な心を持つ水のウェイドと出会う。自分と正反対の彼といっしょに、初めて世界の広さに触れたエンバーは、ふと自分の新たな可能性を考え始める――私の本当にやりたいことって…?
だが、この街のルールは、"違うエレメントと関わらないこと"…。そんなとき、シティに"ある大事件"が!エンバーとウェイドは、この試練を乗り越えられるのか!?
【感想】
「ピクサー長編アニメーション作品」第27作目。個人的に、最近のピクサー作品がそこまでハマっていなかったので、あまり期待はしていなかったんですが、、、これはメチャクチャ面白い作品でした!
<火と水の絆が感慨深い訳>
この映画、火と水の絆を描いているんですが、これが個人的にはすごく感慨深いポイントだったんですよ。ディズニーおよびピクサーなら、いろんなキャラクターを出して、異なる種族同士の交流を描いた作品なんて全然めずらしくも何ともないんですが、僕がそこまで感慨深さを感じたのには訳があります。
僕はRPGも好きで小さい頃から『ファイナルファンタジー』シリーズを始めとしてよく遊んでいるんですが、火と水はどの作品でも共通して相反する関係性として設定されていますよね。火のモンスターには水(氷)が弱点となっていますし、水(氷)のモンスターには火属性の攻撃が効きます(まあ水に関しては雷の方が弱点になってることも多いですが)。だから、このお互いがお互いの弱点となりうる2つのエレメントが、どう交わっていくかってのが一番気になるポイントだったんですよ。
<『ズートピア』を彷彿とさせる世界観>
本作の舞台となるエレメント・シティなんですが、この街並みに僕は一目惚れしました。4つのエレメントがそれぞれの特性を活かせるような設計になっていて、いろんな動物が共存している『ズートピア』(2016)みたいでした。ただ、今回のエレメントに関しては、絡み方によってはお互いの存在が脅威になりかねないので、すべてのエレメントにとって住みやすい形ではなさそうでしたけどね。やっぱり、エンバーのように全身が火っていうのは不便そうです。水は蒸発させちゃうし、土(木)は燃えちゃうし(笑)でも、人間の世界では考えられないような多様性を感じられる点において、とても夢があるなと感じます。
<要素はオーソドックスでも設定でカバーしている>
そんなエレメント・シティで暮らすエンバーですが、順風満帆な人生というわけでもなく、劇中で家族の問題や自分のやりたいことについての葛藤に直面します。そして、決して交わることがないと思っていた水のウェイドとの出会いが彼女の人生を大きく変えるんです。正直、ここらへんの内容自体はオーソドックスというか、別にエレメントじゃなくても成立しそうではあるんですが、相反する関係性の火と水が上記の要素とどう向き合っていくのかってのは興味深いですよねー。特に、2人の距離感の変化は一番の見どころですよ!最初はいっしょにいることすら考えられない2人だったのに、属性や見た目では計れないお互いの内面(本質)に惹かれ合い、徐々に距離感が縮まっていく過程はとても面白かったです。エンバーもウェイドも最初は「お互いを傷つけてしまうのではないか」ってビビってるんですよ。これは火と水ならではの悩みですよね。下手したら火は消え、水は蒸発してしまい、存在そのものがなくなってしまう可能性だってあるんですから。でも、その不安を超える愛情によって小さな一歩を踏み出すのは見習いたいなと思いましたね。何事もやってみないとわからないんだってことを教えてくれます。
また、本作はピクサーらしく、尺が短めでテンポよく進むのもオススメできるポイントです。それでいて、登場人物の対立や葛藤もわかりやすいですし、失敗からの挽回というストーリー展開の中に興奮と感動を詰め込んだスタイルは、観る人を選ばず楽しめる要素だと思いますね。そういう全方位で面白い映画だと、「確かに面白いんだけど、"これ!"っていう特徴がないんだよなあ」と思われがちですが、この映画は違います。各エレメントの特徴を見事に掴んだ街並みやそこで暮らす人々の生活スタイルをリアルに表現している上に、誰もが合わないと思っていた火と水の交流こそが、他の作品にはない本作の一番の魅力になっていましたから。
<そんなわけで>
個人的には、ピクサー作品の中で上位に入る面白さでした。世界観もストーリー展開もキャラクターも、子供と安心して観れる内容なのはいいですね。一見、お互いを傷つけ合いかねないように見えても、一歩踏み出せば新しい関係性が築けるっていうのは、ぜひ子供にも教えてあげたいなと思います。韓国系移民であるピーター・ソーン監督だから描けた作品かもしれませんね。