行き場を失った人々の鬱憤が大放出されていた『グッバイ・クルエル・ワールド』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:82/138
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
製作年:2022年
製作国:日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:127分
ジャンル:アクション、バイオレンス
元ネタなど:なし
【あらすじ】
夜の街へとすべり出す、水色のフォード・サンダーバード。カーステレオから流れるソウルナンバーをBGMに交わされるのは、「お前、びびって逃げんじゃねーぞ」と物騒な会話。互いに素性を知らない一夜限り結成された強盗団が向かうのは、さびれたラブホテル。片手にピストル、頭に目出し帽、ハートにバイオレンスで、ヤクザ組織の資金洗浄現場を“たたく”のだ。
仕事は大成功、大金を手にそれぞれの人生へと戻っていく。──はずだった。
ヤクザ組織、警察、強盗団、家族、政治家、金の匂いに群がるクセ者たち。もはや作戦なんて通用しない。クズ同士の潰し合いが始まる。
最後に笑うのは誰だ!
【感想】
個人的には、やや方向性がわかりづらいと感じる映画でしたね。基本はバイオレンスなんですが、ちょっとしたロマンスやコメディ要素もあったりして。同じ内容でも、もしこれが洋画だったらもっとポップな感じになってそうなんですけど。
<冒頭から期待度が高まる展開>
内容としてはそこそこ楽しめました。「そこそこ」ってのが曖昧な表現だと自分でもわかっているんですが、、、まあ理由はこのあと書いていきます(笑)本編開始からいきなりトップギアの興奮度ではあったんですよ。資金洗浄しているヤクザの金をごっそりいただく強盗団のシーンからすべてが始まりますから。その強盗団のメンバーもクセ者揃いなんですね。元ヤクザで今は妻の実家のホテルを切り盛りする安西(西島秀俊)。闇金業者の萩原(斎藤工)。萩原から金を借りている武藤(宮川大輔)。そんな武藤と付き合っている風俗嬢の美流(玉城ティナ)。県知事の元秘書である浜田(三浦友和)。全員知り合いではないですが、いろんなツテでいっしょの強盗団になります。
<変わり始める運命>
強盗を働いたことから、全員の運命は一気に変わります。まあ元はヤクザの金ですからね、無事に済むはずはないんですけど。金を奪われたヤクザの杉山興行は、黒いつながりのある刑事の蜂谷(大森南朋)を招集し、事態の収拾を図ります。蜂谷が動いているのと並行して、強盗団のメンバーはそれぞれが抱える問題と向き合っていきます。
自分が企画の発端であるにも関わらず、強盗の分け前がもらえなかった美流は、萩原に仕事を紹介してくれと頼むも、当日悲惨な裏切りに遭いますし、同行した武藤も無残な運命を辿ります。安西はかつて舎弟だった男に元ヤクザであることを地域住民にバラされ、家族にも迷惑がかかる始末。浜田はのんべんだらりとしながらも、地元の少年をこき使って政治家の転覆を狙う日々です(やがてその少年たちからも反感を買うんですが)。そうやっていろんなエピソードが並行して進むんですが、これがまたテンポが悪いんですよ(笑)もっとアクションやら何やら、視覚的に刺激があるシーンが欲しかったんですが。そこが、先に書いた「そこそこ」楽しめた理由です。
<登場人物は現実に生きづらさを感じる人たちの代弁者>
でも、この強盗団のメンバーには同情の余地がある人もいるんですよ。みんなそれぞれ事情を抱え、けっこう行き詰まっている人たちもいますから。だからこそ、強盗なんかに手を染めるわけだし、平穏を脅かす相手には容赦なく暴力を振るうんですよね。生きづらさを抱えている人たちによる鬱憤の放出なわけです。現実世界でこの映画のようなことをやったら、すぐに捕まってしまいます。映画の世界だからこそ、もう頭で考えたり口で話し合ったりってことをすっ飛ばして、手を出せてしまう。普段生きていても、「あー、もう!」と手を出したいときもあるでしょうから、まさにそういう人たちの代弁者なんじゃないかなーとさえ思いました。
<バイオレンス度は高いが……>
この映画って思ったよりも発砲シーンが多いんですよね。至近距離からショットガンで撃ち抜いたり、血がたくさん出たりと、けっこうハードです。なので、血がダメな人は注意が必要です。とはいえ、もしこれがハリウッド映画だったら、もっと銃撃戦やカーチェイスなどの派手なアクションが増え、スピード感も重視すると思うんですよ。そういうのと比べちゃうと、単に発砲過多でインパクトはありつつも、ハマるにはイマイチ物足りないなという印象ではありました。
<そんなわけで>
ムシャクシャしている人がスカッとするにはいい映画かもしれません。個人的には、斎藤工のクズっぷりと、それに対する報復のシーンが一番好きでした(笑)