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主人公の板挟みされる立場に同情する人が多そうな『決戦は日曜日』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:1/2
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【ジャンル】
コメディ
政治
【原作・過去作、元になった出来事】
なし
【あらすじ】
とある地方都市。谷村勉(窪田正孝)はこの地に強い地盤を持ち、当選を続ける衆議院議員・川島昌平の私設秘書。秘書として経験も積んで中堅となり、仕事に特別熱い思いはないが、暮らしていくには満足な仕事と思っていた。
ところがある日、川島が病に倒れてしまう。そんなタイミングで衆議院が解散。後継候補として白羽の矢が立ったのは、川島の娘・有美(宮沢りえ)。谷村は有美の補佐役として業務にあたることになったが、自由奔放、世間知らず、だけど謎の熱意だけはある有美に振り回される日々…。
でもまあ、父・川島の地盤は盤石。よほどのことがない限り当選は確実…だったのだが、政界に蔓延る古くからの慣習に納得できない有美はある行動を起こす――それは選挙に落ちること!
前代未聞の選挙戦の行方は?
【感想】
邦画としては2022年一発目でした。「選挙に落ちる」ことが目的という、普通とは真逆の設定が面白いですね、これは。
<板挟みの谷村に同情>
この映画は、突然選挙に出ることになった有美の言動を楽しむのもアリなんですが、やっぱり一番印象的なのはその補佐役である谷村でしょう。有美の自由奔放さと世間知らずっぷりは凄まじいんですよ。記者会見で“各々”を“かくかく”と読む。失礼な配信者に殴る蹴るの暴行を加える。後援会の人に「やりたくないならやめれば?」と言い放つ。
こんな型破りな有美に振り回され、方々に頭を下げっぱなしなのが谷村です。有美からは「私の何がいけないの?!」と反省の色はなく、後援会の人からは「ちゃんと教育しろよ!」と怒られる日々。そんな人たちに対して、
波風を立てず、それでいてきちんと伝わるような、典型的な日本人らしい遠回しな言い方を連発しているところに、同情と"あるある"という共感の2つの笑がありました。
<選挙活動の大変さが伝わってくる>
この映画を観ると、選挙活動の裏側も知れたりするので、ちょっとは勉強になります。ただ、それを見て思うのは、ただただ大変そうだなということ。自分の言動もひとつひとつ気をつける必要があるのは当然ですが、過去の問題行動まで引っ張り出されることもあります。また、関わる人が多いので、挨拶やら謝罪やらもたくさんあります。さらには、自分とは関係ない、父親の不祥事や利権を狙う連中らに気を揉むことも。自分の意志とは関係ないことも多々あって、これは大変すぎると思いましたね。。。そんな苦労がわかるのもこの映画のポイントかもしれません。
<「そういうもんだから」への警笛>
上記のようなことを、面白おかしく描いたのがこの映画のいいところですね。でも、作品のメッセージとしては今の日本に対する危機感を思わせるところもあったんですよ。それが、「そういうもんだから」。
事務局で働く谷村たちも、けっこう「そういうもんだから」という言葉で、何の疑問も持たずに事を進めることがあります。有美は好き勝手暴れながらも、そういった部分は変えていくべきだと主張はしていました。
谷村自身は事なかれ主義みたいなところがあるんですけど、彼自身ももはや古いシステムにどっぷり浸かってる側だから、何が悪いのかもわからないんですよね。その事実を、古いコーヒーメーカーから作られたコーヒーを飲んで気づくシーンは、けっこう印象的でしたね。若い連中が「このコーヒーまずっ!」って言うんですけど、そのことにすら気づかないほど、慣れきってしまっている谷村は、そこで初めて危機感を覚えます。
これは選挙活動だけじゃなくて、他のところにも通ずる話だと思うんですよ。例えば、大きな会社で働いている人なんかは、すでに出来上がってしまったシステムに慣れてしまい、改善すべき点があるのに、それにすら気づかないっていうケースもあるんじゃないですかね。
<そんなわけで>
爆笑というよりは、クスッと笑える要素を散りばめたコメディ作品で、面白い設定の映画ではありました。ただ、全体的にまったりした雰囲気なのと、笑いも「あるある」への共感からくる笑いなので、ちょっと地味だったかなーという印象は否めません。もう少しドタバタ感があった方が個人的にはもっと楽しめたかもしれませんね~。