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ポルノ映画を撮りに来た若者たちが宿泊先の肉欲ババアと心臓悪いジジイにグッチャグチャにされるエクストリームホラー『X エックス』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:22/106
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:X
製作年:2022年
製作国:アメリカ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:105分
ジャンル:ホラー、スプラッター、サイコスリラー
元ネタなど:なし
【あらすじ】
1979年、テキサス。自分たちの映画でドル箱を狙う野心むき出しの6人がいた。女優のマキシーン(ミア・ゴス)と、そのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン(マーティン・ヘンダーソン)。ブロンド女優のボビー・リン(ブリタニー・スノウ)と、ベトナム帰還兵で俳優のジャクソン(スコット・メスカディ)。そして、自主映画監督の学生RJ(オーウェン・キャンベル)と、その彼女で録音担当の学生ロレイン(ジェナ・オルテガ)の3組のカップルだ。
彼らが作ろうとしている映画のタイトルは『農場の娘たち』。6人は撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。彼らを迎えたみすぼらしい老人のハワード(スティーヴン・ユーア)は、彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。
一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目が合ってしまう……。そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった――。
【感想】
『ミッドサマー』(2020)で強烈な印象を残したA24が今回世に出したのは、色気と恐怖を混ぜたレトロな雰囲気漂うホラー映画です。
<エロとホラーの混在による双方の際立たせ>
僕自身はけっこうビビりなので、ホラーはあまり好んで観てきませんでした。なので、ホラー映画に詳しいわけではないんですが、なんかエロとホラーっていっしょになることが多くないですか?一昔前の洋画なんか特に。僕が思うに、エロが生への、ホラーが死へのメタファーで、相対する2つの属性が混在することで、お互いの存在を際立たせているんじゃないかなって思うんですよ。そういう意味では、今回まさにそのエロとホラーの2つが入っていることで、どこか懐かしい感じが漂っていました。
<若者と老人の対比によるこれまた双方の際立たせ>
若く自信があり、未来が明るい若者たち(ウェインは40歳過ぎてますけどw)と、望んだ人生を歩めないまま歳を取り、生い先短い老人の対比。この両者も混在することで、お互いの存在がより際立ってるなって思いました。特にばーさんがもうとんでもないやつでしたね。「まだ女として見られたい」という欲が強すぎて、男には性を求め、女にはその若くハリのある肌に羨望の眼差しを向けます。世の中には老いを受け入れる人もいる一方で、このばーさんのように、いつまでも「あの頃の自分」を追い求める人もいるでしょう。よっぽどこのばーさんは望まぬ人生を歩んだんだろうなあと思いました。現にもとはダンサーだったのに、戦争のせいでその道をあきらめざるを得なかったみたいなことをチラッと言っていたので、若さに未練があるんでしょうなあ。
<殺害動機が不明>
とはいえ、若者を殺しまくる動機がよくわからないんですよ。嫉妬からの殺意なのか、はたまた老化によって判断力が鈍ったのか(その割には被害者を手にかけるときは力強いです)。手に入らないならいっそのこと失くしてしまおう的な考えでしょうか。じーさんもいっしょになって殺しに参加しますからね。目的がよくわかりません。でも、ゾンビやお化けでもなく、変に宗教や伝統に縛られているわけでもない、あくまでも普通の人間の老夫婦が、ここまで惨たらしい事態を引き起こす恐怖といったらないです。
<役者の体当たり演技>
もともとポルノ映画を撮りに来た若者たちっていう設定なので、ベッドシーンは激しいんですが、まさかの老夫婦までもが愛を確かめ合うという衝撃もあります。よくこんなベテランそうな女優さんにここまでさせるなと思いましたけど、このばーさんを演じた人はなんと、、、?公式サイトでも役者名が「???」となっているのでここでおあずけにしておきます(笑)
<そんなわけで>
真夏の暑さをすっ飛ばすエクストリームホラーとして十分に楽しめる作品だと僕は思いました。この前観た『ブラック・フォン』より恐怖が強く、『哭悲/THE SADNESS』よりもストーリー性はあって暴力性がマイルドになったバランスのいいホラー(サイコスリラー?)でした。
なお、映画館で観る場合は最後まで席を立たないことをオススメします。マーベルのようにポストクレジットシーンがあるんですけど、そこでまさかの展開が明かされますので。