映画史上最も感動する冤罪映画だけど、あのパーシーとかいう看守の冷酷で不注意でバカなキャラクターが一番印象に残った『グリーンマイル』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:5/15
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:The Green Mile
製作年:1999年
製作国:アメリカ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
上映時間:188分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『The Green Mile』(1996)
【あらすじ】
1935年、ジョージア州コールド・マウンテン刑務所。死刑囚監房の看守エッジコム(トム・ハンクス)のもとに、少女強姦殺人の罪で巨漢の黒人死刑囚コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)が送られてきた。その風貌や罪状に似合わず、繊細で純真な心を持ったコーフィには不思議な能力があった。
重い尿道炎を患っていたエッジコムは、ある日、監房内で倒れてしまう。だがその激痛を取り除いたのは、コーフィの奇跡の超能力だった。
こんな奇跡の力を持つコーフィが本当に殺人なぞ犯すのか。そこには誰も知らない悲しい真実が隠されていた。
【感想】
「午前十時の映画祭13」にて。1999年のアメリカ映画。原作小説は未読ですが、心優しい死刑囚と看守との交流を描いた感動のヒューマンドラマです。中学生のときにリアルタイムで鑑賞して以来、2回目の鑑賞でしょうか。あまりにも感動したのでストーリーはほぼ覚えていたのですが、当時とまったく同じところで憤り、同じところで泣いたので、中学生のときから自分の感性変わっていないんだなと感じましたね(笑)
<コーフィは死に場所を求めていたのだろうか>
物語は主人公のエッジコムが60年前の出来事を回想する形で始まります。ある日、死刑囚として収監されたコーフィ。2m近い身長と筋骨隆々のぶっといガタイで、その風貌だけで見る者すべてを圧倒するほどの威圧感があるのですが、見た目に似合わず臆病で暗闇が怖いという子供のような面もあります。そのギャップに観ている方もびっくりです。しかも、彼にはあらゆる病気やケガを治す不思議な力があるんですよ。これはもうそういうファンタジーな設定ってことなんですけど、その力でエッジコムの尿路結石を治し、後述する潰されたネズミを復活させ、刑務所所長の妻の脳腫瘍を取り除き、いろんな人のトラブルを解決するという優しくていい人なんですよね。
実は、コーフィは殺人にはまったく関与しておらず、真犯人は別にいるんです。なので、これは冤罪事件として本来ならコーフィは死刑を免れるはずですよね。そもそも、彼は自分でやったとは(劇中では)一言も言っていませんし、現場検証などから彼がやったかどうかなんてわかるはずなんですけど、、、1935年という時代かつ容疑者が黒人となるとそうもいかなかったんですかね。。。ただ、コーフィは事件関与への否定もせず、結局刑を受け入れてしまうんです。「愛が利用されて人々が苦しんでいる。それを感じることに疲れてしまった」と。彼は人の気持ちを敏感に感じ取る体質っぽく、それゆえに人一倍、人間の裏側というか見たくない本性を知ってしまい、嫌になってしまったんでしょう。もともと死ぬ気でいたから、あえて否定せずに死刑を受け入れたのかもしれません。彼の性格を考えるに、自殺する勇気はなかった(もしくは上記の癒しの力で出来ないのかもしれません)と考えられるので、死に場所として死刑を選んだような気もします。
コーフィは罪を犯していないばかりか、こんなにも優しく純粋であるにも関わらず、彼を死へと誘わなければならない看守たちの苦悩は辛かったですね。せっかくいい関係を築けたのに、それを自分たちの手で切らなくてはならない状況は、今観ても号泣でした。。。
<パーシーのクズっぷりに憤りを感じるも映画としてはアリ>
そんな感動的なエピソードを超えてこの映画で一番印象に残るのは、パーシー(ダグ・ハッチソン)という冷酷で不注意でバカな看守です。彼はある意味、あらゆる映画における悪役の中でも上位に位置するぐらいの怖さがありました。なぜなら、彼は根っからの悪人というわけではなく、あくまでもごく普通の一般人でありながら、人の希望を奪うことに何の躊躇もないサイコパスだからです。自分の心ない言動が他人を傷つけているという概念がまるでないんですよ。その上、自尊心が高いので決して自分の非を認めたり謝罪したりといったことはしません。
中でも、デル(マイケル・ジェッター)との相性は最悪で、彼の指の骨を折るばかりか、彼がかわいがっていたネズミを踏みつぶし、死刑執行の際に正しい手順を踏まなかったがためにデルを必要以上に苦しめたのです。その様子は目も当てられないほどひどいものでした。。。今すぐにでもパーシーをぶん殴りたい衝動に駆られますが、凶悪な死刑囚ウォートン(サム・ロックウェル)にちょっかいを出されたり、終盤でコーフィから罰を与えられたりして、ちょっとはスカッとしましたね(笑)
まあでも、映画としてはパーシーがいたからこそ面白くなった部分はあります。彼がいたからこそ、他の看守や囚人たちに親しみや人間味を感じられたので、こういう悪役というのはどんなジャンルにでも必要なのかもしれません。
<そんなわけで>
映画史に残る感動のヒューマンドラマとしてマジでオススメの映画です。残念なことに、コーフィを演じたマイケル・クラーク・ダンカンは、2012年に心筋梗塞を発症し、54歳の若さで亡くなってしまいました。デル役のマイケル・ジェッターも、2003年にてんかん性の発作により50歳の若さでこの世を去りました。けれど、この映画は後世に残り続けるので、ぜひ彼らの秀逸な演技を観てほしいです。