年齢も人種も音楽性も超えた伝説の女性歌手の歌声に思わず涙がこぼれた『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:33/200
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebody
製作年:2022
製作国:アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:144分
ジャンル:伝記映画、音楽映画、ヒューマンドラマ
元ネタなど:歌手「ホイットニー・ヒューストン」(1963-2012)
【あらすじ】
"THE VOICE"と称される圧倒的な歌声。今なお世界中の音楽シーンに影響を与え続けている歌姫ホイットニー・ヒューストン。
彼女はいかにしてスターダムを駆け上がり、グレイテストソングを生み出したのか?ジャンルも人種も超え、「歌いたい曲を、自分らしく歌う」ことに命を燃やした先に彼女が見たものは――。
彼女を失ってから10年。一番輝いていたホイットニーの声が、歌が、圧巻のパフォーマンスが、数々のNo.1ヒットソングと共にスクリーンに蘇る。
【感想】
はい、僕の中で、本作が2022年に日本で公開された新作映画としては締めの作品となります。ホイットニー・ヒューストンの伝記映画ですね。「クスリ、ダメ絶対」。それを強く強く感じる内容でした。
<恵まれていたと思うホイットニー・ヒューストン>
ホイットニー・ヒューストンといえば、やっぱり「エンダァァァァアアアアイヤァァァァアアアア!」が有名ですかね。自身も出演した『ボディガード』(1992)の主題歌、『I Will Always Love You』。ちょっと映画の話から逸れますが、実はこの歌、もともとはドリー・パートンという歌手が歌ったカントリーミュージックらしいんですよ。僕も初めて知ったんですけど。なので、ホイットニーは彼女の歌をカバーしたってことになるわけです。聴き比べてみると全然違いますね。オリジナル版はかなり高い声で歌われているのに対し、ホイットニーの方は力強さを感じます。僕はホイットニーの歌ってこれしか知りません(笑)
さて、ホイットニーは母親も従妹も有名な歌手だったそうで、サラブレッドみたいな感じでした。名付け親があのアレサ・フランクリンらしく、ホイットニーは生まれながらにしてレジェンドに囲まれていたわけです。で、歌に関しては母親から厳しい教育を受けて育ちました。劇中にもありますが、「楽しく歌う」とは正反対のスパルタみたいな指導を受けていましたね。でも、見方を変えれば才能と環境が共に揃っていることになるので、もうなるべくして歌手になったというわけですよ。恵まれていますよね。
そんな境遇から生まれたホイットニーのな歌唱力は本当に素晴らしいです。今回ホイットニーを演じたのはナオミ・アッキーですが、劇中の歌はすべてホイットニー本人の声だそうで。あの力強さと包容力に満ちた歌声は聴く者すべてを魅了する力があります。デビューから7曲連続で全米シングルチャート1位を確立し、ビートルズの6曲を超える新記録を打ち立てたのも頷けます。
<恵まれていたはずなのに何が彼女を狂わせたのか>
ホイットニーは歌を世に出すたびにヒットを飛ばし、これ以上ないほどの富と名声を手にしました。ですが、プライベートでは徐々に暗雲が立ち込めてきます。
まずは、資産を管理している父親の無駄遣いっぷりです。日本円にしたら何百億円と稼いであろうホイットニーですが、父親はそのお金で車やジェット機を買い、社員にクレジットカードを配るなどの散財を繰り返します。何をやるにしても父親の許可が必要ということに不信を抱いたホイットニーが帳簿を見ると、驚愕の事実が発覚します。稼いだ割には残高が極端に少なかったんですよ。具体的な金額は言及されていませんでしたが、袂を分かつほどだったので相当な使い込みだったんでしょうね。
そして、夫であるボビー・ブラウン(アシュトン・サンダース)との不仲も大きな影響を与えたと思います。ここは『ホイットニー ~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』(2018)というドキュメンタリー映画の方が詳しく描かれていますね。彼も有名な歌手だったんですが、ホイットニーが『ボディガード』で売れすぎたためにパワーバランスが変化していきます。さらに、ボビーの素行の悪さもあって、ホイットニーは心労が絶えなかった様子でした。ホイットニーは自分の両親が離婚していることから、家族に対して憧れが強い人でした。だから、ボビーと円満な家庭を築きたかったんだと思いますが、それが叶わないことは精神的に相当辛かったと思いますよ。
さらに、ボビーとの結婚前に恋仲であったロビン(ナフェッサ・ウィリアムズ)も、ずっと親友関係を続けていたものの、ホイットニーの父親や夫と折り合いがつかず、縁が切れてしまいます。
<大いなる力には、大いなる責任が伴う>
そんな状況で、ホイットニーはドラッグの摂取量が増加していきました。もともとたまに吸っていたようですが(まあアメリカの人ってけっこうポップにやってますよね)、中毒になるレベルにまで達してしまい、、心身共にズタボロでした。最後は、ホテルでの入浴中に不慮の溺死という悲劇によって、48歳の若さでこの世を去ってしまいます。。。
もう本当にドラッグはダメだと思うんですが、そのドラッグを摂取する用になった大元の原因は、やっぱり彼女を取り巻く人間たちなんじゃないかなと思います。父親や夫の裏切りですね。とはいえ、それもホイットニーの大成功の裏返しだったりもするので、彼女の圧倒的な富と名声が、彼女のまわりの人生をバグらせたとも言えます。これが「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ってことなのかなと。
<今回はあまり描かれていなかった娘の話>
先に挙げたドキュメンタリー映画を観た人ならわかると思うんですが、ホイットニーにはボビー・ブラウンとの間に一人娘がいました。一応今回の映画にも出てきていますが、ほとんど取り上げられていませんでしたね。娘は酒とドラッグに溺れた両親を見て育っているので、彼女も18歳でヤク中になり、不慮の事故でホイットニーが亡くなった3年後に、25歳の若さでこの世を去ってしまいます。。。尺の関係と、あとはこの映画はあくまでもホイットニー・ヒューストン本人が題材となっているため、あまり娘には触れなかったのでしょう。
<そんなわけで>
ひとりの伝説的歌手の人生を2時間に収めるので、多少の駆け足感はありましたけど、ホイットニー・ヒューストンの半生がわかる興味深い映画です。
例のドキュメンタリー映画と併せて観ると、より詳しく彼女について知れると思います。とにかく、圧倒的な歌唱シーンは見どころですよ。特に、1991年の第25回スーパーボウルの試合前に行った国歌斉唱。1994年に南アフリカで歌った『I Will Always Love You』。そして、ラストのメドレー。魂が震えるほど感動するので、これはぜひ映画館で観てほしいです。