アジア人の快挙!カンフー×マルチバースの超絶アクションを通じて心温まる家族愛を描くカオスな映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:3/33
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Everything Everywhere All at Once
製作年:2022年
製作国:アメリカ
配給:ギャガ
上映時間:139分
ジャンル:アクション
元ネタなど:なし
【あらすじ】
経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン(ミシェル・ヨー)。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。
まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て闘いに挑むのだが、なんと巨悪の正体は娘のジョイ(ステファニー・スー)だった…!
【感想】
いやー、もうすごかったですわ、この映画。いろいろとカオスすぎて(笑)監督の好みが出まくってて、作ってる方はメチャクチャ楽しいんだろうなっていうのがすごく伝わってきますね。まあそういう映画って、けっこうハマる人とハマらない人の差が激しかったりもするんですが(笑)
<マルチバースを行き来してアビリティを集める>
いろんな意見がありますが、僕は好きでしたね、この映画。その理由はやっぱり世界観にあります。マーベルやDCでおなじみのマルチバースが本作の大前提。自分がいる宇宙(=ユニバース)と並行して、無数のユニバースが存在しているという設定。そして、そのユニバースそれぞれに違う人生を歩んでいる自分が存在しているんです。この映画では、特殊な装置を使ってその無数にいる自分にリンクし、それぞれが身につけている特技を拝借して敵と戦っていきます。
<何もないからこそ何にでもなれる主人公>
すべてはアルファバースと呼ばれる世界から始まります。ここが初めて他のユニバースと接点を持ったからです。そのアルファバースにいる夫のウェイモンドが、ラスボスを倒せる唯一の存在が、コインランドリーを経営しているエヴリンだとして、"この世界"にやって来るんです。なぜなら、"この世界"でのエヴリンは何の特技もないから。全ユニバースの中で唯一の失敗と言われていましたが、何もない彼女だからこそ、何にでもなれる可能性を秘めていたんだと思います。
そんな普通のおばさんだったエヴリンが、別宇宙でカンフーの達人だったり、歌手だったり、料理人だったり、ピザ屋の看板持ちだったりする自分から特技を拝借して超絶バトルを繰り広げるシーンは圧巻でしたね。そもそもこの別世界の自分から特技を習得するっていう設定がメチャクチャかっこよかったです!ちょっと『マトリックス』(1999)でネオがスキルをインストールする設定を彷彿とさせますけど(笑)
<謎すぎるバース・ジャンプの条件>
で、これがまたぶっ飛んだ設定なんですけど、その"別ユニバースの自分"たちとリンクすることを"バース・ジャンプ"と言うんですが、そのためには"アホなこと"をするのが条件なんですよ(笑)自分の命を狙ってくる敵に愛の告白をしたり、お漏らしをしたり、そんなのを大女優のミシェル・ヨーにやらせて、現場は大爆笑してただろうなって勝手に想像しちゃいます。正直、なんでそんな設定になっているかは謎ですが、自分の殻を破ることでそれをバース・ジャンプのエネルギーに変えているってことなんでしょうかね。実はもっと頭おかしいことやってるシーンもあるんですが、それはぜひ映画館で観てください(笑)
<全ユニバース共通の真理とは>
このように、アクションは派手だし、やってることはバカバカしいし、すごく楽しめる映画なんですけど、唯一わかりづらかったのが娘であるジョイの目的です。ラスボスとなったのはアルファバースでのジョイ(アルファ・ジョイ)ですが、別にすべてを破壊するわけでもないし、エヴリンを殺すわけでもありません。彼女はその類まれなる才能で、あらゆるユニバースの自分とリンクしているんですが、自分と同じ視点を持つエヴリンを探していたらしいんですよ。ただ、僕はジョイってただの反抗期なんじゃないかなって思いました。いやね、もうザ・思春期の女の子って感じで、特に"この世界"のジョイは何かとエヴリンに反抗してたんですよ。もちろん、そのジョイの心境もアルファ・ジョイはわかっているんですが、アルファ・ジョイは自分と同じ視点で物事を見てほしいって言ってたから、それってつまり、母親に自分のことをわかってほしかったんじゃなかろうかって。最後とか割と母娘喧嘩みたいなところありましたし。結局、ユニバースは違えど、母と娘の関係性は不変なんだなって感じました。
<そんなわけで>
カンフー×マルチバースに加えてかなり独特な世界観ですが、描きたかったのは不変の家族愛っていう意外と真っ当な映画だったように思います。「こんだけとっ散らかしといて、結局それかーい!」みたいな印象はあるので、けっこうレビューサイトも賛否両論ですが、僕は好きでした。尺はやや長いですけど、このクセのある感じはハマる人にはハマりますよ。
あと、単純にアジア人の活躍がうれしいですね。長らくハリウッド映画においてアジア人が活躍できる作品ってそんなになかったですから。ウェイモンドを演じたキー・ホイ・クァンもゴールデン・グローブ賞のスピーチも感動的です。
ミシェル・ヨーの60歳とは思えないアクションもすごかったですし、ハリウッド映画においてアジア人をここまでかっこよく描いてくれて感慨深いものがありました。これは本編とは直接関係ないことですが、洋画が好きで、でもアジア人があまりメインを張っている作品ってないよなーって思ったことある人ならわかってくれるんじゃないかと信じています、、、!とにかく、映画館で観てこその映画ではあるので、ぜひ劇場へ足を運んでみてください!