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こりゃ世界が勝てないわけだと感じるカンフー映画の秘密がわかる『カンフースタントマン 龍虎武師』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:1/1👑
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:龍虎武師(Kung Fu Stuntmen)
  製作年:2021年
  製作国:香港・中国合作
   配給:アルバトロス・フィルム
 上映時間:92分
 ジャンル:ドキュメンタリー
元ネタなど:カンフー映画に携わってきたすべてのスタントマンたち

【あらすじ】

1970年代から90年代にかけて、数多くのアクション映画を生み出し、世界中に大きな影響を与えた香港映画。膨大な作品群を支えたのは、危険なシーンにも命を顧みず、華麗かつ危険なアクションの代役を務めた武師(スタントマン)たちの存在があった。

サモ・ハン、ブルース・リャン、ユエン・ウーピン、ドニー・イェン、ツイ・ハーク、エリック・ツァン、アンドリュー・ラウら、香港映画人や実際に活躍した武師たちの証言。さらに、映画の本編シーンや貴重なメイキングなど膨大なアーカイブ映像を交えて、香港映画界のスタントやアクションの歴史を紐解き、世界最高峰のアクションを生み出すことができた香港映画の光と影に迫っていく。

【感想】

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年も時間の限り、映画を観ていきたいと思います。さて、2023年の映画初めはカンフー映画のドキュメンタリーからです。すんごく面白かったですよ!自殺行為としか思えないアクションの数々だからこそ、世界を圧巻するクオリティになるのだと痛感する良作でした。カンフー映画も特撮映画と同じで、ある程度の年齢以上に刺さるジャンルじゃないかなーと思います。多分、ブルース・リーの映画をリアルタイムで観れた世代が一番そうかもしれませんね。

<カンフー映画の発祥>

詳しくは公式サイトにも書いてあるんですが、カンフー映画のルーツって中国の古典劇である京劇にルーツがあるらしんですよ。1930年代、中国の京劇役者の多くが、日本の本土侵略から逃れるために香港に移住しました。彼らは、貧しい家庭の子供たちに京劇を教えるようになり、1960年代には香港に4校の京劇学校ができたそうです。それぞれの学校から、後に有名になるスタントマンを輩出されてきたんですが、これがさ、すごいのなんのって。7歳ぐらいからそういった専門学校でみっちり訓練を積むんですよ。中には、代々武闘家の家系の人とかもいて。もう文化として成り立ってるんですよね。カンフーってのが。昔、つんく♂さんがテレビで、「韓国の子たちは小さい頃から歌や踊りの英才教育を受けている」なんて言ってましたけど、それと同じかもしれません。そりゃ世界が真似できないクオリティになるよなあと。

<体張りすぎなスタントマンたち>

で、スタントマンになった人たちは、とにかく「No」とは言いません。言ったら仕事がなくなりますからね。監督から言われたことは全部やります。全部やるんですが、その内容が体張りすぎていて。。。高さ3-4mのところから落ちるのは当たり前。下にマットも敷かず、ダイレクトに地面に叩きつけられに行くんですから。走ってくる車の上に落ちるのも、タイミングがズレてコンクリートに激突なんてことも。

近接戦も寸止めではなく、マジ当てです。あれ、戦いのときに「ホワチャア!」って叫ぶのは技を忘れないようにするためなんですってね。初めて知りましたけど。1つのカットに多いと50もの動作があって、役者はそれを全部覚えてから撮影に臨むから、次に出す技や動きを思い出すために叫ぶそうです。僕も小さい頃からカンフー映画に憧れはありましたけど、今回観たアクションの裏側は、想像以上に痛々しくて観ていられないほどでしたね。

<スタントマンのお給料やいかに>

そんなスタントマンたちの懐事情ですが、給料はよかったみたい。うろ覚えで申し訳ないのですが、1970年代の平均月収が100香港ドルだったのに対し、スタントマンは2000~3000香港ドルだったとか。とはいえ、経済的に当時の香港はまだまだ貧しく、スタントマンたちも小卒なんてザラでした。他にやれることがないからとスタントをやるようになり、得た給料も飲み代に全部消えてしまったとか。だから、一部の成功者(転職したり指導者になったり)以外は、歳をとってからの生活が楽ではないみたいです。もしもう少し貯金して、まともなお金を使い方をしていれば、もっと違った人生があったかもと言っている人もいましたね。

<スタントマンの命がけの姿勢が尊い>

とにかく、安全対策とか今以上にそこまで考えられていなかった時代に、あそこまで体張れるのがすごかったです。日本で芸人たちが体張るのとは訳が違います。スポーツのようにルールがあるわけでもないし、CGで誤魔化せる時代でもありません。命がいくつあっても足りないぐらい、ガチで体をぶっ壊しに行くその姿勢が尊いですよ。中には、麻痺が残ったり、命を落としてしまった人もいるそうで。命綱なしでロッククライミングするのと似ているかもしれませんね。

<そんなわけで>

カンフー映画が好きな人には特に観てほしい映画です。僕たちが興奮し、熱狂したアクションは、誤魔化しが一切ない、ある意味自殺行為とも捉えられる体の張りっぷりから生まれていたのです。また、カンフー映画の盛り上げに多大な影響を与えたブルース・リーとサモ・ハンの偉大さを改めて知れるいい機会でもありました。


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