自らの命を救ってくれた通訳を助けに再び敵地に戻る兵士の義理堅さに感服した『コヴェナント/約束の救出』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:12/30
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Guy Ritchie's the Covenant
製作年:2023年
製作国:キノフィルムズ
配給:イギリス・スペイン合作
上映時間:123分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
元ネタなど:アフガニスタンの戦争と米軍に協力するアフガン人通訳者に関するドキュメンタリー映画からの着想
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍のジョン・キンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)は、アフガン人通訳として非常に優秀だが簡単には人の指図を受けないアーメッド(ダール・サリム)を雇う。通訳には報酬としてアメリカへの移住ビザが約束されていた。
部隊は爆発物製工場を突き止めるが、タリバンの司令官に大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全員殺される。キンリーも腕と足に銃弾を受け瀕死の状態となるが、身を潜めていたアーメッドに救出される。アーメッドはキンリーを運びながら、ひたすら山の中を100キロ進み続け、遂に米軍の偵察隊に遭遇する。
7週間後、回復したキンリーは妻子の待つアメリカへ帰るが、アーメッドと家族の渡米が叶わないばかりか、タリバンに狙われ行方不明だと知って愕然とする。アーメッドを助けると決意したキンリーは、自力でアフガニスタンへ戻る——。
【感想】
ガイ・リッチー監督初の戦争映画ということで、最初からけっこう期待値は高かったんですけど、それを超える面白さがこの作品にはありました。アフガニスタンの戦争におけるアフガン人通訳がここまで命懸けだったとは。。。
<これまでのガイ・リッチー監督作品とは毛色が異なる作風>
個人的には、もともとガイ・リッチー監督の映画はけっこう好きなんですよ。『キング・アーサー』(2017)や『キャッシュトラック』(2021)のようなゴリゴリのアクションもあれば、『アラジン』(2019)のようなファンタジーもあって、現実離れしたド派手な作品を多く手掛けているイメージが強いですよね。でも、今回の映画は過去作とはだいぶ異なる作風でした。初めての戦争映画っていうこともあると思うんですが、ドキュメンタリー映画から着想を得たからなのか、かなりリアリティのあるヒューマンドラマに仕上がっていましたから。
<戦地での通訳がこんなにも命懸けだとは>
この映画、個人的には2つの点に見ごたえを感じました。まず1つ目は、アフガン人通訳の命懸けの仕事っぷりです。通訳というとそこまで危険なイメージはないように思えますが、ここは戦地ですから。アメリカ兵に付いてまわるので、常に命を落とす危険があります。しかも、アーメッドに至っては同じアフガン人から「裏切り者」とみなされ、肩身の狭い思いもしています。そりゃ敵対するアメリカ側に雇われてるんだから、面白くないと感じる人も少なくないですよね。だから、通訳とはいえ、タリバン兵との銃撃戦に巻き込まれますし、いつ死んでもおかしくない状況の中に身を置いているわけです。そんな彼の報酬は、ビザを発行してもらい、アメリカへ移住すること。作戦中に負傷したキンリーを運びながら100kmもの距離を歩いて米軍基地に戻り、一躍英雄となったアーメッドでしたが、みすみす敵を逃したことで激怒しているタリバンから狙われることになり、身を隠さざるを得なくなってしまいます。
<キンリーの義理堅さに胸が熱くなる>
その状況を打破しようとするキンリーの行動が2つ目の見どころです。彼はアーメッドが行方不明になったことを知るや否や、ビザ発行の手続きを進めようとするんですが、一向に話がまとまらず、どんなに早くても9ヶ月後になると言われてしまいます。そんな悠長なことをしている間にアーメッドは確実に殺されてしまいますよね。そこでキンリーが行ったことが2つ。1つは上司の力を借りてアーメッドのビザ発行手続きを済ませること。もう1つはビザが発行されたタイミングでアーメッドとその家族を国外へ逃すことです。ここでメインとなるのが後者。本来ならば業者に頼むところであったものの、別件が入ってしまい対応できるのが3日後になると。1分1秒でも早く行動したかったキンリーは単身アフガニスタンに戻ることを決意します。前回の作戦からタリバンは血眼になってキンリーとアーメッドを探している中、再びアフガニスタンに行くことは自殺行為中の自殺行為ですよ。でも、今こうしてキンリーが生きていられるのは、アーメッドが命を狙われている危険な中、100kmというの道のりをキンリーを運んでくれたおかげです。その恩に報いるため、キンリーのアフガニスタンに戻る決意は揺るぎませんでした。義理堅いにもほどがあるだろって。
ここですごいのがキンリーの奥さんですよ。キンリーのアフガニスタン行きの背中を押すんですから。これまでもキンリーの命懸けの任務をハラハラしながら見守ってきましたし、子供もまだ幼いので、本当は行ってほしくないはずなんです。それでも、愛する夫がどうなるかもわからない不安を抱えつつも、「やるべきことをやりなさい」と、まるで母親が息子の背中を押すような優しさと覚悟を持ってキンリーを送り出しました。
キンリーは自己防衛のために身分を偽ってアフガニスタンに入ったものの、ひょんなことから身バレしてしまい、キンリーもアーメッドもまたタリバンに追われることになります。最後の銃撃シーンなんか、あとちょっとですべてうまくいきそうなのに、大勢のタリバン兵に囲まれてまさに絶体絶命というところがものすごくスリリングでした。そこをいかにして切り抜けたかはぜひ映画を観てください(笑)
<そんなわけで>
1人の通訳と1人の兵士が物語の前後半でお互いを救出し合う、スリリングながらも感動的なヒューマンドラマでした。現実には、タリバンが政権を握った後、300人の通訳とその家族が殺されてしまうという悲劇もあったそうです。僕は報道やフィクションでしか戦地の様子を窺い知ることはできないですが、こういうことが現実にあったというのがわかる有意義な映画なのでぜひオススメしたいです。