鍋とカロリーブック

転校して少し落ち着いたころ、冬がやってきました。

夜は鍋ものになることが多くて。

長ネギのおいしさに目覚めて長ネギをたらふく食べて。そんな生活をしていたある日ふと、体重が減っていることに気づきました。

これ、いいんじゃん?そこから、鍋の時は野菜ばかり食べるようになりました。

ちょうどその頃だったでしょうか。我が家に糖尿病用のカロリーハンドブックと調理用はかりが登場しました。糖尿病だった父のために母が購入したものです。

糖尿病では80Kcal=1単位として、その人の状態に合わせて1日@単位と数える、ということで、肉、魚、野菜、それぞれ食材ごとに80Kcal分に該当するグラム数と写真が載っているものでした。

気づけば、いつもそのカロリーブックを開き、たいていのものは覚えてしまいました。

ごはん1単位=80Kcalは50グラム。茶碗に軽く1杯は100グラムくらい、大人のお茶碗1杯だと150グラムくらい。父が指示されていたのは1食のごはんは2単位までだったので、自分もなんとなく、ご飯は2単位、100グラムまで。自分が普段使っている茶碗だとだいたいこのくらい・・・

納豆1パックだいたい1単位、マグロはカロリーが高いけど白身の方がカロリーが低い・・・

温泉まんじゅう約30グラムで1単位、だいたい小さいの1つくらい・・・

次第に、食卓に上がるものや自分が食べるものをすべて、何単位か、に換算して考えるようになっていったのです。

人間が1日に最低必要とされるのが1200kcal、だから1日3食にわけると1食400Kcal,5単位まで。ごはんで2単位だから、おかずは3単位まで。

食パン1枚2単位、でもマーガリンを塗るとカロリーがあがっちゃう。カップスープ1袋1単位とすると、のこり2単位。

きょうはおやつで1単位食べちゃったから、ご飯で1単位減らさなきゃ・・。

どんどん、食べるものを単位数で考えていくようになったのです。

母がそんな私のことを気にし始めて。叔父とこんな話をしていました。

母「この子最近食べるものセーブしちゃって」

叔父「大丈夫、まだ若いんだから。もし太っちゃったらプロテイン飲めばすぐ痩せるから」

・・・そういうことじゃないんだな。

自分の中でダイエットしているつもりはなかった。きっかけは確かに「痩せたい」だったけど、単に、自分で立てた数値目標を立ててそれを達成することそのものが目的になっていた気がする。

決めたカロリーを守ること、そして、体重という「数字」を減らしていくこと。

美しくなりたいとか痩せて可愛くなりたいとか、そういうことじゃ、なくなっていった。



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