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私の手帳遍歴

9月になると、店頭にはチラホラと来年のダイアリーが並び始める。
中には、10月スタートで来年の12月まで、などという商品もある。
カラフルな手帳が、書店や文具店、文具コーナーに並んでいるのを見て、ワクワクするのは僕だけではないだろう。

僕は今年、「ロルバーン」( ずっとロールバーンと思っていた )のダイヤリーを使っている。
以前から、さまざまな表紙のこのダイアリーは気にはなっていたが、使うのはこれが初めて。
最初に年間ダイアリー、次にブロック型、カレンダー型の月間予定表。
あとは全てノートページ。
後ろには、透明のクリアファイルが付いている。
勤めている時には、月間予定表だけでは書ききれないほどの予定があったために敬遠していた。
しかし、これからは仮に働くことになってもそんなにイベントやアポイントが発生することはないだろうと思って、選んでみた。

これが、退職した老人には非常に使いやすい。
月間予定表には、映画の予定や、病院の予定、家族の予定を書き込み、ノートページは日記として使っている。
映画のチケットなどもここに貼り付けている。

では、来年からもこれを使うかというと、そうとは限らないのだ。
多分、僕は飽き性なのかもしれない。
これまでの人生においても、たびたび手帳は変わってきた。

僕が初めて自分で手帳というものを手にしたのはいつだろうか。
多分、幼い頃に父がもらってくる企業の名前が刻印された手帳( いつの頃からか見かけなくなった )に訳もわからずに落書きをしていたのが最初かもしれない。

手帳として意識して使用したのは、小学校の頃に流行ったスパイ手帳や探偵手帳だ。
水に溶けるメモや、こすると文字が浮かびあがるペンなどがついていた。

中学、高校では特に意識することもなく、生徒手帳を使っていた。
もちろん試験などの予定を書くのみ。
野球とナンパしかない生活にスケジュールなどあるはずもない。
思春期のなんやかんやは、これも当時流行った、白い本に書いていた。

大学に入ってからは、「システムダイアリー」を使っていた。
1968年に日本で初めて開発されたシステム手帳で、コンピュータシステムを応用などという広告を目にした記憶がある。
ただし、僕が使ったのは、父から譲り受けた手帳本体のみで、これにスケジュールとノートのリフィルを挟んで使用していた。
何を書いていたのだろうか。
大学近くの、喫茶店のモーニングの内容とか、飲み屋の情報とか、何の役にも立たないことを書いていたような気がする。

社会人になってからは、まず、当時これも勤め人の定番であったであろう、「能率手帳」を使用した。
表紙の裏に、封筒を3分の一くらいに切ったものを貼り付けてポケットを作ったり、工夫とカスタマイズが楽しかった。
巻末についているアドレス帳を毎年書き写さなくても、差し替えるだけというそれだけのことで、便利だなあと思った。

しばらくすると、

こんな本が出て、スーパー手帳、いわゆるバイブルサイズの6穴システム手帳ブームがやってきた。
分厚い手帳だけを小脇に抱えて歩くのが、できる人のあかしで、ナウかったのだ。
みんな、何万円とする手帳に飛びついた。
僕も、「ファイロファックス」を購入した。
軍人の胸ポケットに入っていたこの手帳が銃弾を食い止めたというエピソードにも惹かれた。
男は物語好き。
〇〇コンサルタントなどと名乗る怪しい人が徘徊し始めたのもこの頃。
この頃から、僕の中では、手帳は高価なものが当たり前になってしまった。

この後、A5サイズのシステム手帳「タイムシステム」の時代を経て、「ザウルス」の全盛期がやってくる。
「仕事にザウルス、あとはいらん」
ここから、大きな「カラーザウルス」、そして「パワーザウルス」へと、僕の散財は続く。
「パワーザウルス」を無理してスーツの胸ポケットに押し込んで会議に出席した。
発言する時にさっと出して注目されたい、それだけのために。
妻からは今でも、この時期に全財産を使い果たしたかのように責められている。

しかし、このデジタル機器から離れて、僕は、なぜかまた紙の手帳に戻っていくのだ。
短いサイクルで、「クオバディス」や、「フランクリンプランナー」などを渡り歩く。
「クオバディス」はフランスなのでというそれだけの理由。
「フランクリンプランナー」は「7つの習慣」を読んだので。

そして、「ほぼ日手帳」の時代がやってくる。
毎年、発売される新しいデザインのカバーも楽しみのひとつだった。
しかし、何といっても、あのゆるい雰囲気が良かったのかもしれない。
使い方を指定されない、1日1ページの白紙がワクワクさせた。
何となく、新しい1日が待っている、そんな思いがした。

最後のブームは「ジブン手帳」
人生の全てをコンパクトに記入するというコンセプトが気に入って使い始めた。
途中からビジネス仕様も発売された。
今でも、このなかの「LIFE」のノートは使っている。

退職する前の最後の一年間は、バレットジャーナルを試してみた。

これは手帳ではなく、その記入方法だ。
その良さは十分に理解できたが、面倒くさがり屋の僕には合わないと思った。

さて、来年はどんな手帳を使おうか。
シンプルにまた、能率手帳に戻ろうか。
古いファイロファックスを引っ張り出してみようか。
押入れの奥のザウルスは起動するだろうか。
いや、これはもう妻の目に触れさせない方がいい。

予定などほとんどない、手帳などなくてもいい、そんな今だからこそ、あらためて手帳選びの楽しみを味わえそうだ。

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