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それは偶然か必然か〜佐々木朗希投手とは

プロ野球の投手なら、アウトのひとつくらいは取れるだろう。
それが、たまたま、27回続けば完全試合だ。
その偶然は奇跡とも呼ばれてきた。

もちろん、27個のアウトを取るには、野手にもしっかり守ってもらわなくてはならない。
いくら投手が討ち取ったとて、野手にエラーされては、さっぱりわや、だ。

しかし、27個のアウトを全て三振で取ったならどうだろうか。
これはもう、投手ひとりの力と言っても過言ではないだろう。
強いて言えば、バッテリーとふたりの力だ。

そして、それはもう、たまたまではなくなってくる。
それは、成るべくして成し遂げられた快挙、偶然ではなく必然だ。

それに近いことを、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手はやってのけた。
昨日のオリックス戦での完全試合。
27個のアウトのうち、19個のアウトを三振で取っている。
しかも19個の三振のうち、13個を連続して。

奇跡が奇跡でなくなってきた。
僕たちの世代では、完全試合というと、野球生活の最後に、野球生命を懸けて成し遂げるものという、あのアニメのイメージが強く残っている。

だが、佐々木投手は、まだ入団3年目、20歳だ。
彼なら、「今日は完全試合で行きますからね。あ、それから打たせる時はサイン出しますから。それ以外は、野手の皆さん、ゆっくりしておいてください」みたいなことをやってくれそうだ。
それくらいの期待を抱かせてくれる。
「今日は、9回にノーアウト満塁で盛り上げましょうか。安心してください。その後は3三振で締めますから」
文字通りのメイク・ドラマだ。

大谷といい、佐々木といい、奇跡が奇跡でなくなってくる。
これまで涙とともに成し遂げたものが、笑顔で達成するものに変わってくる。
これまでゴールだったものが、ステップにすぎなくなってきた。
偶然を必然に変えていく力。
新しい野球が始まっている。

大谷も、佐々木も、まだまだ突然変異かもしれないが、彼らのような選手が当たり前に出てくると、自然淘汰が始まっていく。
人類の祖先がアフリカに誕生して約700万年。
ホモ・サピエンスが誕生して約30万年。
ようやく、僕たちは、新しい進化の段階に達したのかもしれない。
そんなたいそうなと言われるかもしれないが、それだけのことを彼らはやっている。
毎年すごい選手が出てくるというレベルではない、何かが始まっている。

もうひとつ。
誰一人、セーフティバントなどしなかったオリックス打線も圧巻であったとつけ加えたい。

バックがしっかり守って、点を取ってくれるから、佐々木投手も全力で投げられることは言うまでもない。

それにしても、日本のテレビ業界の皆さん、どうして中継しなかったのだろうか。
「番組の途中ですが、ここでマリンスタジアムからの中継に切り替えます」
ってやって欲しかった。
それくらいしか、テレビの価値がなくなってきているのに。




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