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みんな知っていた、ジャニーのことを

僕はこの記事を見て愕然とした。

日本国内に衝撃が走ったのか? いや、走らなかった。
それよりむしろ、「みんな知ってたけど、誰も何もしなかった。それがついにおおっぴらになった」という感覚の方が強い。

シャイマ・ハリル、BBC東京特派員  

これは、ジャニー喜多川事件と、ジャニーズ事務所及びマスコミによる隠蔽事件に関するBBCの記事だ。

そうだった、確かに、みんな知っていたのだ。
ジャニー喜多川が、そのような性的指向の人物であると。
そして、ジャニー喜多川のその性的指向に適った少年たちがデビューできるのだと。
それが事実かどうかは、ここでは関係ない。
事実かどうかわからなくても、僕たちはそう思っていた。
そして、多少下卑た笑いとともに、そのようなことを仲間内で口にもした。
しかし、その時に、僕たちは犯罪のことを話しているのだとの認識はこれっぽっちもなかった。
人権侵害などとは、毛ほども思わなかった。
少なくとも僕は、そうだった。
多くの日本人もそうではないだろうか。

「みんな知っていたけど、誰も何もしなかった」
この「みんな」は、何もジャニーズ事務所やマスコミだけではない。
日本人のすべてのことなのだ。
「みんな知っていた」のだから、確かに、今回のことは衝撃でも何でもない。
みんなで隠していたこと、知らないふりをしていたことが、バレてしまった。
それだけのことだ。
僕たちは、それをさも「衝撃」であるかのように、さも初めて目にしたかのように装っているだけではないのか。

もちろん、犯罪を犯したのはジャニー喜多川であり、それを隠蔽したのはジャニーズ事務所とマスコミだ。
ついでに言えば、頬被りをしているが、大手広告代理店もその一味だろう。
被害者への補償については、それらが協力して当たればいい。
しかし、僕たちも決して無罪ではない。
日常に罪がありすぎて、身近なところにありすぎて、もう何年も何十年も昔から、毎日毎日目にしているのに、それは通過儀礼のような位置付けになって、それが犯罪であるなどとは誰も思わなかった。

もう海外からは、日本とはそのような国であると思われているのだろう。
日本とは、性犯罪や人権侵害は罰せられることなく蔓延って、子供や弱者は誰からも守られない国であると。

ジャニー喜多川は結局罰せられることなく、英雄のままで亡くなった。
ジャニーズ事務所は、これからも存続し続けるのだろう。
テレビ局の番組キャスターがマスコミの姿勢について反省をしているが、上層部が顔を見せて謝ることは一切ない。
本当の責任なんて感じていないから。
各局は、これからもジャニーズ事務所のタレントを、「タレントに罪はない」という言い訳の元に使い続ける。
(テレビ出演の報酬は全てタレントに支払うとのことだが、ジャニーズ事務所との契約には違いない。報酬の配分なんて、内輪の話でどうでもいいことだ)
やがてこのことは報道もされなくなる。
誰も口にしなくなり、あと10年もすれば検索しても出てこなくなる。
犯罪者の人権は保護され、被害者の人権は踏み躙られたままだ。
そして、少年少女は犯され続ける。
子供は虐待され続ける。
いじめたもの勝ちの教室。
いたるところで、セクハラやパワハラが横行し続ける。
日本でMeToo運動が生まれることはない。
活躍しているタレントは誰も声をあげない。
いや、あげられない社会。
その社会とは、僕たちのことだ。

僕たちは、子供を守るために、青少年を守るために、すべての弱き人を守るために、認識を改めるべきだと思うのだ。
そして、速やかに、法を含めて、社会のシステムを立て直すべき時だと思うのだ。
でなければ、この国は世界から笑われ、僕たちは笑われていることも知らずに、海外からの人に「おもてなし」などと胸をはることになる。

僕が初めてアイドルのレコードを買ったのは、女性ではなく、郷ひろみの2曲目のシングル「小さな体験」だった。
なぜ2曲目なのかは、謎だけれども。
僕もくせ毛で、何とか同じ顔にならないものかと毎日、鏡と睨めっこした。
フォーリーブスの歌も、平凡や明星の歌本で覚えた。
特に「新しい冒険」は大好きだった。
矢吹丈はあおい輝彦だった。

僕の娘は、10代の頃からジャニーズの誰彼を取っ替え引っ替えして推していた。
ライブにも何度も足を運び、グッズにもかなり注ぎ込んでいるはずだ。
僕が知っている最新の情報は、キンプリ(元?)の平野紫耀推し。
何年か前に、単身赴任先の名古屋で、彼の実家近くにある橋を平野橋と呼んでいるとかで、朝早く起きて、写真を撮りに行った。
当時50代のおっさんが、恥ずかしかったけれども、娘のためだ。
その娘の心中やいかに。
先日会った時には、怖くて話題にもできなかった。

被害者という意味では、10代の頃の僕も、30になっても追いかけている娘も、多くのファン、みんなが被害者なのかもしれない。
その被害者が、加害者でもあるのが今回の事件だ。
1日も早く、解決までは無理でも、前に進まなくてはならない。
そのためには、日本人みんなが、本当のことを言うことだ。
そして、これがジャニーズ事務所だけの問題ではなく、日本人ひとりひとりの問題として、捉えていくことだ。
そう思う。

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