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消費者はどんなサービスにデータを提供したいと考えているか? Vol.1

2018年に欧州発でデータ保護法が施行されて以来、デジタルビジネスの環境は大きく変わりつつあります。

私たち一人一人もデジタルサービスの受益者であり、サービスの利用者でもあります。そんな、デジタルサービスの利用者の趣向が、法規制や事業者活動の変化とともに、これまでにどのように変化してきたのかをレポートの情報を読み解きながらご紹介していきたいと思います。

消費者サービス等でデータ活用をご検討されている方は、参考にして頂けると幸いです。

今回取り上げるレポートは、GDMA(グローバルデータマーケティングアライアンス)とAxciom(現在はLiveLamp)が消費者動向を取りまとめた調査結果を参考に、プライバシー及びデータに関する変化とこれからを紹介していきます。

(出典元:Consumers across the globe are increasingly comfortable sharing their data調査結果を参考に作成)

第一部では、グローバルでの消費者動向とこれからのデータ経済に求められるテーマを取り上げ、第二部ではデータの権利と責任に対する消費者の考え方を紹介したいと思います。

各国で変化する消費者のプライバシーとデータに関する考え方

まずは、グローバルでの消費者動向を考えるにあたり、分析対象となる消費者の共通のパターンをわかりやすく整理します。ここでは以下の3つのパターンに消費者動向を分類し、各パターンでこれまでの調査からどのような変化が生まれているのか、変化を追っていきます。

パターン①:自身のプライバシーへの関心は高いが、事業者に必要であればデータを提供するパターン
パターン②:自身のプライバシーへの関心は低く、自ら積極的に事業者へデータを提供するパターン
パターン③:自身のプライバシーへの関心が高く、事業者へデータを提供することに対して消極的なパターン

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(図:分析対象となる消費者の分類図)

GDMAとAxciomが取りまとめたレポートでは、2018年から各パターンを対象にした調査を世界10カ国の消費者(アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、シンガポール、スペイン、英国、米国)に実施しており、2018年と2022年で各対象の割合は以下のように変化したと発表しています。

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(図:2018年と2022年での各パターンの変化比較)

消費者動向を分析すると、2018年からの4年間で、パターン②が少し増加していることがわかります。パターン②はプライバシーへの関心が低く、積極的にデータを共有する対象であるため、プライバシーを懸念しデータを提供することに消極的な層が、データ提供を積極的に行う層へと徐々に変化しているような結果が見受けられます。

パターン①が現時点でも最も多いですが、プライバシーへの懸念以上に、データを提供することによる利便性を考える傾向が少しずつ増えてきているのが、分析結果から読み取ることができます。

次に国別の対象パターンの割合を見ていきたいと思います。

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(図:国別の対象パターンの割合)

日本と比較すると中国、ブラジル、シンガポール、インドではパターン①の割合が多い傾向にあります。特に中国、インドはパターン③と比較してパターン①が突出していることがわかります。シンガポールを除くと、中国、インド、ブラジルではここ最近プライバシーに関する動きが進んでいます。

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(図:地域別プライバシー法の動向)

上記の国に関しては、プライバシーへの関心が高まる一方で、これまでに明確な規制が制定されていなかった地域が含まれるため、消費者の懸念へ対応するために規制を検討する動きが徐々に強くなっている状況です。

事業者が対象の地域へサービスを展開する際には、各国の規制動向の動きに加えて、消費者動向も併せて検討する必要があります。

考察:消費者がプライバシーに対して高い関心を持っている地域では、規制の整備及び施行が進んでいる地域が多いため、今後規制や消費者趣向の変化を事前に読み取り、データの取得や利用方法を検討していく必要があると考えられます。従来のマーケットリサーチ同様に、データに対する消費者の考え方を事前に理解しておくことが必要になります。

世代や国別に考える消費者のプライバシーに対する考え方

プライバシーへの関心は対象とする年代によっても変化が見られるようになってきています。20歳代と65歳以上ではプライバシーへの関心も大きく異なるため、違いを理解した上で、訴求していくことが求められます。

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(図:年代別プライバシーへの関心割合)

18-24歳の若い世代と65歳以上の世代を比較した際に、大きく異なる点としては、若い世代のパターン③が他の世代と比較して圧倒的に割合が多いということです。

パターン③はプライバシーへの関心が非常に高い対象であるため、若い世代を中心としてプライバシーへの関心の高まりが伺えます。18-34歳に対象を広げて比較したとしても、プライバシーへの関心が高いことがわかるので、若い世代へサービスを検討する際には、プライバシーを事前に検討することが非常に重要です。

加えて、事業者へデータを共有する消費者の傾向に注目してみたいと思います。

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(図:消費者が事業者へデータを共有することに同意する割合)

日本は2018年調査を実施していないため、2022年の結果のみが公表されていますが、他国の状況と比較するとデータを広く共有することに抵抗感を感じる消費者が多いように感じます。

一方で、中国やブラジル、インド等の国ではデータを共有することが当たり前になりつつある状況ではあるため、消費者のデータに対する考え方も事前に考慮していておく必要があります。特に現地の消費者からデータを預かる際に、同意を求めるケースが多いかと思いますが、どこまでが同意として認識されるかどうかも、現地の消費者の傾向によって異なるため、事前に検討しておくことが必要です。

考察:世代や国等の置かれた環境によって、消費者のデータに対する考え方が異なることがわかります。国によって趣向が異なることと同様に、現地の消費者がデータに対して一体どういった考え方を持っているのか、そして事業者に対して何を期待しているのかを事前にリサーチした上で、サービスを展開していくことが必要になると考えられます。

消費者がデータを提供しても良いと考える事業者の特徴

消費者が自身の個人データをどのように認識しているのかを把握するために調査結果を見ていきたいと思います。

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(図:個人データを自身の資産と考え、適正な価値を要求すると回答した割合)

個人データが事業者のものであるか、個人のものであるかという論調が取り上げられるケースが昨今は多いですが、消費者の視点でどちらに該当するかを示した結果はとても興味深い数値になっています。

どこ国でも半数近くの消費者が、自身のデータに対して正当な価値を要求することを求めているため、事業者はデータを提供する際に、いかに適切な価値設定(消費者と事業者がそれぞれ適切な対価を支払っているかどうか)をできるかどうかが、今後重要になっていくと考えられます。

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(図:最低限のデータで個別に最適化されたサービスを提供して欲しい割合)

各国の消費者が求める事業者への提供サービス内容は、より個別最適されたものを求める一方で、提供するデータはできる限り少ないものであることが望ましいという回答が数多く見られています。

事業者は必要以上のデータを消費者から取得するのではなく、既存のデータ及び少ないデータ量でより個別最適されたサービスを提供していくことが必要になります。

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(図:消費者がデータを提供したいサービス・ブランド)

消費者が考えるデータを提供しても良い対象は、信頼できる企業(組織)という結果になっています。サービス単位よりは、組織に対する信頼は消費者がデータを提供するための重要な選択肢の一つになると考えられるため、事業者は組織全体で信頼される取組を推進していくことが求められると考えられます。

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(図:データの利用方法と取得方法の透明性)

消費者は事業者に対して透明性を求める傾向が調査結果から確認できます。年代が高くなるにつれて、多くの方々が事業者に対してわかりやすく説明を求めるような傾向が確認できます。

考察:消費者は信頼できる組織に対してデータを提供する傾向があり、信頼できる組織が提供するサービスやブランドは、より消費者の趣向をデータを通じて理解することができ、差別化につながっていくと考えられます。消費者が組織を信頼するポイントとしては、データの活用や取得の透明性であるため、企業は消費者に対して、データをどのように利用しているのか説明していくことが求められるようになると考えられます。

第一部では、消費者の考え方や趣向の変化をもとに、新たに事業やサービスを展開する上で必要な消費者データをどの切り口で考えて取り組んでいけば良いのか紹介してきました。

第二部では消費者自身の考え方や責任に関する内容を紹介したいと思うので、そちらも参考にして頂けると幸いです。プライバシーに関するビジネス動向や事業を検討されている方は気軽にご連絡ください👇

皆さんとプライバシーを学ぶFacebookコミュニティも運営しているので、気になる方は気軽にご参加ください。



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栗原宏平(Privacy by Design Lab代表 )
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