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世界のデジタル責任者がデータプライバシーに注力する理由とは?

企業内でのデジタル責任者の役割はより多岐に広がってきています。

今回はデータやデジタルの責任者が集まる世界的なコミュニティCDO Clubの創設者で代表のDavid Mathisonさんにデジタル責任者にこれから求められる事をお伺いしていきます。。

第二回はDavidさんのこれまでの慈善活動とデジタル責任者とプライバシーの関係性をお聞きしています。

CDO Club・CDO Summit創設者兼代表               David Mathison氏                           チーフデジタル、データオフィサーの世界的なコミュニティCDO Clubを設立。出版したBE THE MEDIAは各国の大学で参考書籍として購読され、ビジネス活動だけでなく、社会活動などを様々な分野で活躍される。起業家。

危機時に必要な慈善活動

当時の取り組みはイギリスで誕生したライヴ・エイドと同様のコンセプトを実現しようという思いでスタートしました。

ここからは当時の話をお伝えしたいのですが、USA for Africaという活動を始めた中心人物について紹介したいと思います。

これはライブエイドに呼応して黒人スター=ハリー・ベラフォンテが発起人として始めた活動で、音楽業界の実力者だったケンクラゲンがマネジメントする形で企画が進んでいきました。その二人が組んだのは興味深かったです。

ハリー・ベラフォンテは当時USA for Africaを通じて人助けをしたいという思いがあり、ライブエイド同様に1984年に起きたアフリカ(エチオピアの大飢饉)での飢饉に対して何かアメリカから活動ができないか考えていました。

今から考えると20か25年前当時のケンクラゲンはスマザーズ・ブラザーズのショーや音楽家のトリシャ・ヤーウッドケニー・ロジャースなど有名な音楽家やアーティストのマネジメントを行なっていた時期ですね。

ハリー・ベラフォンテはケンを呼んで何かできないかということで相談した時に、“We Are the World” という曲を通じて発信するアイデアを構想したと話しています。

その声がけからブルース・スプリングスティーンボブディランなどの有名ミュージシャンを集め、“We are the World”を作曲し、マイケルジャクソンライオネル・リッチーと書き下ろすというとても豪華なメンバーが実現しました。

そのおかけでとても素晴らしい作品ができ、レコードを通じて多くの支援を集めることができたという話です。

(動画:U.S.A. For Africa - We Are the World (Official Video))

私もそういった取り組みを知りケンにコンタクトを取りました。有名な人なのでやり取りできるか不安でしたが電話で話を聞いてくれて、それをきっかけにHomeaidのチャレンジングな活動を始める事ができました。

今はコロナの影響で社会全体に大きな影響が広がっていますが、こういった困難の時には道を切り開く新しいチャレンジが必要になりますね。特に医療や医療機器の提供は個人を守る上で非常に重要ですね。Homeaidを通じてまさに “We are the World”を伝えていきたいですね。

発信の形も当時から色々と変化してきています。私が書いた“Be The Media” の書籍を読んで頂くとわかるのですが2008年に内容の半分が公表されデザインされています。2002年に書き始めて、2000年代始めにポッドキャストとブログもスタートしています。

初期はフレンドスターやマイスペースといった昔のFacebookみたいなものが流行っていて、当時はほとんどFacebookを利用している人はいなかったですね。

変化するデジタルメディアの役割

初期に書き始めた本では音楽家や映画作家、出版社向けにメディアをどのようにビジネスに利用するかを記した内容で、レーベルやエージェントと一方的な契約をしなくても自らビジネスを立ち上げられるようにという願いがありました。

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"自分で立ち上げて運用することで価値を広げていくことができる点"がデジタルメディアの素晴らしい点ですね。今では誰でも利用できるようになっていますが、当時はそうではありませんでした。始めの半分の内容は慈善活動に関する内容で、残り半分は非営利活動においてのメディアの重要性を紹介しています。

新しいメディアをうまく活用することで社会の手助けになることができるし、これまでのメディアのやり方に囚われる必要もありません。私が書いた内容の半分はメディアの重要性を説明する内容で、これはメディアがただのお金を生むための機械ではなく新しい価値を創造するためのものという意味づけですね。

メディア企業はこういった責任感を元に情報を発信するべきだと思いますし、そういった価値のある情報によって救われる命もあります。

私が本を書こうと思ったのは

メディアを通じてお金を稼ぐだけのものではないということを伝えたかったから

ですね。ほんの後半では非営利活動においてのメディアの重要性を紹介することで、これまでの課題を解決できると思ったということもあります。

Kohei: なるほど。それは素晴らしいですね。自分も長年ソーシャルメディアを運用していますが、フォロワーの人たちのためになる情報や力になる情報で気になるものを紹介するようにしています。

特にデジタルメディアの力はこれまでマイノリティ(少数派)として考えられていた人たちの力にもなりますね。気になっているのはDavidさんが初期に本を出版されてから、10年以上経つと思うのですがメディアを取り巻く状況に関しては変化が起こっているのでしょうか?I

David: そうですね。実際に今でも色々と変化していると思います。

この本は世界中のメディアコミュニケーションやジャーナリズムの授業で活用されていて、有名な大学の教授の人たちにも紹介頂いて居ます。ネブラスカ大学では10年前にプレゼンテーションを実施させてもらう機会をいただきました。

その時にメディアに関して、ここ10年でどのような変化があったのかを簡単に話してほしいと言われました。今夜の時間にスピーチの練習を行なっているのですが、これまでメディアで起きている変化の問題点としては "オーナーは変わって居ないにも関わらず、つけるライトが変化してきている" という点が挙げられます。

これまでは、幅広く知ってもらおうとすれば大手のメディアに行って、特にメジャーのパブリシャーのところに行って発信するのが当たり前でした。メジャーなところだと90%、時には95%のロイヤリティを取られる時もあり、これは音楽や映画業界でも契約上大きな問題になっている点ですね。

今では音楽家はSpotifyやPandoraなどのサービスを利用できるようになってきていますが、それでも非常に弱い立場にある人たちが大半です。

音楽をアップして1000万回以上再生されても以前より稼ぐことは非常に難しくなっています。システム自体にも問題はあると思っています。音楽も過去と比べて大きく変化した一面があることに加えて、映画や本に関しても一気に広がるようになってきています。

これまではテレビや一部の映画スタジオが栄えて、インディーズや個人の映画などが存在して、そういった分野は幅広くリーチすることが困難でした。

撮影した映画もYoutubeや時にはNetflix、Amazonなどに発表できる可能性も出てきているので一気にマイナーから確立できるようにもなってきています。本の世界もポッキャストやブログと組み合わせることでコストをかけずに作成して幅広く伝えていくことができるようになってきています。

私自身が問題に思っているのは多くのブロガーにとって多くの注意を引くのは非常に難しい状況になっていると思います。全ての人がポッドキャスターになれ、音楽を作曲し、映画や動画を作ることができるようになったのです。

より注目を集めるためにはマーケットプレースで投資を行う必要があります。そのためにメディアで広告を掲載したり、ペイドメディアを利用したりする必要があります。私は上手くこういったメディアを利用するべきだと思っていて、TikTokなどのメディアは一例で歌が上手くなくても(口パク)、上手く機械を操作できなくても発信できるようになっています。

今現在私たちが取り組む方法としては以下の二つの内容があると思います。一つ目が”どのように注目を集めるのか”ということです。”様々な情報が行き交い気移りしやすい中でいかに注目してもらえるのか”というのが重要です。

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2つ目が最も重要で、”どうやってお金を支払ってもらうか”という問題です。これまで数多くのクリエイティブなコンテンツがネット上に広がっていますが、お金を払ってもらうのは至難の技です。PandoraやSpotify上でもテイラースウィフトやブルース・スプリングスティーンクラスでなければ中々直ぐに稼ぐことは難しいと思います。

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再生数を増やしても十分に稼げるまでには多くの努力が必要ですね。重要なことは、自分自身の視聴者を獲得して、その視聴者がファンとして周りに広げてくれるように設計することです。これは、写真や映画、音楽、本でも同じことが言えると思います。

私はブロックチェーンを活用することで、クリエイター向けに視聴者と直接繋がることができる仕組みを実現できるのではないかと思っています。これまでは中間に業者がいて、視聴者とクリエイターをつないでいましたがテクノロジーの進化で直接繋がることができるのです。

そして、自分が撮影した写真をオンラインにアップして、その写真を誰かがウェブサイトに利用したり、クリエイティブとして利用する際にスマートコントラクトの要素を利用して契約が執行されるようになると、クリエイターが個人で独立して収益を得ることができるようになります。

注目を集めることはまだまだ重要ですが、全ての人がメディアプロデューサーとして活躍することは難しくになりつつあります。それに加えてスムーズに支払いができるインフラも必要になってくると思います。

Kohei: それは素晴らしいアイデアですね。ブロックチェーン分野ではこれまで直接ユーザーとつながることの重要性が言われてきていましたが、中間業者の存在しない分散型の流通ネットワークはコンテンツクリエイターの人たちにとってもファンや消費者にサービスを届ける上で非常に重要な役割を担うと思います。

最後のトピックとしてお話を伺いたいのですが、企業のデータ責任に関してお伺いできればと思います。デジタルサービスを展開する上で利用者のデータを内部で管理することはより重要になってきていると思うのですが、これからデジタルオフィサーやデータオフィサーにはどういったことが求めらるようになるのでしょうか?

デジタルオフィサーに必要なプライバシー戦略

David: そうですね。チーフデジタルオフィサーはまだまだ発展途上ですが、数多くの企業が仲間として迎え入れたいということを話しています。どの企業もデジタル変革を進めていて、今のマーケット環境ではより重要な役割になってきていますね。

もし教会や宗教関連の組織、モスクなどを運営していても、小学校や大学などの教育機関を運営していてもデジタル化は避けられない状況です。オンライン教育や遠隔診療などリモートを前提にした新しい産業化が進んできていて、今後さらに広がっていくと思います。

デジタル分野ではタレントや専門性を持った人がまだまだ少ない状況なので、そういった人たちをいかに集めて新しいことを行っていくかが重要になります。

データという分野で考えると、データオフィサーはプライバシーのガバナンス問題をどのように考えるかコンプライアンスの視点からも日々考える必要が高まってきています。特に欧州では利用者がデータの権利を持つなどこれまでにない考え方も徐々に広がってきています。

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(参考写真:IBM CDO Summit登壇内容より

GDPRなどの法律に関しては世界各国の政策としても重要になってきていて、メールでのコミュニケーションなどもスパムなど含め気をつける必要があります。これは欧州だけでなくカリフォルニアでもプライバシーに関する動きが活発化しているので事前に確認する必要がありますね。

具体的には例を上げるとすると、世界中に販売チームがいる組織の場合は全ての人にプライバシーチームをつけて誰がやりとりしているかを確認することは難しいと思います。

その場合にデータオフィサーはデータ利活用を進めていく際にデータのガバナンスと設計をセキュリティとプライバシーを理解した上で取り組んでいく必要があります。

状況はより複雑になってきていて、さらに多くのプライバシーに関する規制も広がってきていてるので、プライバシーを前提としてスケールするビジネスの検討を始めていく必要があります。

分析に関してはアナリティックスオフィサーの役割も重要になってくると思っていて、企業はデータのインフラを実装し始めるフェーズへ移行していくと思います。

そこで、リアルタイムでデータ分析ができる人材が必要になるので適切な情報に適切なタイミングでリーチできる人材が求められると思います。こういった変化は一気に変わっていくと思いますね。

マーケティングテクノロジーも4、5年前から一気に多くのサービスが出てきたので、使いこなして利用できる人はまだまだ人が追いついていない状況だと思います。セールスフォースをはじめとして、オラクル、アドビなどM&Aも積極的に行われているので今後どのように変化していくのか注目が必要ですね。

現在はアナリティックスオフィサーがこういったツールを利用していますが、M&Aの流れもあり、良いものは残り、必要が無いものは消えていくのではないかと思います。

そういった意味でもアナリティックスオフィサーの役割は良いツールを見分けて、組織内で適切に分析できる仕組みを作っていくことに変わっていくのだと思います。実際に誰でも分析できるような仕組みを組織内で作ることは、今後求められる内容の一つだと思いますね。

Kohei: そういった変化が起こった際に、デジタルオフィサーの役割も変化していきそうですね。今はデジタルの世界がより複雑になりつつあるので、プライバシーは重要なポイントとして利活用も考えていく必要はありそうですね。こういった問題は誰が責任を持つのかなどを考える必要があって、チームを前提とした上でどのように成功に導いていくのかが改めて問われていきそうですね。

David:まさにそうだと思います。

Kohei: ありがとうございます。では最後に日本の視聴者の人や読者の方にメッセージを頂いて良いでしょうか?CDO Club Japanも活動されているということで、是非皆さんにもお届けれできれば嬉しいです。

最後のメッセージ

David: 今は過渡期で色々と変化が生まれている時期だと思いますが、ビジネスのみならず私たちの生活も大きく変わりつつあると思います。

日本の文化や社会はこういった有事に関して専門性を発揮できるような準備がこれまでの経験から整っていると思い、そういった素晴らしい教育環境でデータを活用し、より精度の高い分析ができるような取り組みは重要だと思います。勿論分析の専門性を持った人材の育成がアジア全域でも必要になってくると思います。

こういった問題はコロナ以外にも出てくると思うので、これまで日本が経験してきていたことはこの状況を乗り越えるためにも、他国よりも重要な役割を担うことができると思います。5年前日本政府の方と話をした時に地震や台風などの災害を前提とした計画を立てていたことにすごく感銘を受けました。

次のステップは日本社会全体で人々が安心して生活できるような環境を作っていくことだと思います。例えば家から免許の更新ができ、承認できるような仕組みが実現したり、当たり前のように買い物や会社を設立できるなどこれまでに無いモデルを実現できるようなことが求められると思います。

それによってこれまでのモデルで成り立たなくなる事業も出てくるので、社会全体として大きな絵を描いていくことが重要になりますね。

通勤時の騒音や渋滞の問題も、石油やガスの資源の問題も家を中心とした働き方、遠隔診療やオンラインショッピングによって消費が変化していくと思います。

短期的には産業全体が大きく変化していくことになると思いますが、これまでの生活にパンデミック以降戻っていくことは難しいと思うので、そういった変化に柔軟に対応していくことが必要になりますね。

宏平さん。10年、20年単位で見た時にはこれまで築いてきた状況は環境問題やエネルギー関連の消費を見ても長く続くものでは無いと思います。こういった変化を受け入れて一時的には厳しい状況も考えられますが、より良い市民社会と生活を未来に向けて設計していくことが必要だと思います。

日本社会はそういった基盤を持っていると思いますし、その他の国も同様に変化していくと思います。

Kohei: 素晴らしいメッセージをありがとうございます。今は様々な人たちが一緒にって状況を乗り越えていくタイミングだと思うので、同じ状況に置かれていても乗り越えていきたいですね。.

David: ケンクラゲンが “We Are the World” を提唱していたのは正に今の状況のことで、様々な人たちが協力してお互いを支え合う必要がありますね。

Kohei: 正にそうですね。今回はインタビューに参加頂きありがとうございました。Davidさん。

David: 宏平さん。ありがとうございました。

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栗原宏平(Privacy by Design Lab代表 )
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