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マーケティング視点からの人事

人事は一般的には管理部門として社員を管理する部署と考えられがちです。
管理というと固く感じてしまいますが、平たく言うと会社の業績を挙げていくために、社員みんながより活躍できるようにすることを考える部門とも言えます。
社員皆が活躍するために、人事をマーケティング視点で考えてみたら上手く行ったという話を綴ってみたいと思います。

中小企業の人事とは

今回の人事の話は人事異動とかのエピソードではなく、採用、人材育成、人事評価、労務の領域です。
まず、社員数が少ない会社にはそもそも人事部門や人事専任担当がいないという会社は少なくないと思います。
実際に中小企業の経営者の集まりなどに参加すると、社長自ら担っている人の割合も多く、営業的な悩みだけでなく、というよりもそれ以上に人事的な領域の悩みを共有する機会は実に多くありました。

「いい社員がいないんだよね」
「即戦力はどうやって探せばいいのか?」
「社員が思った通りに動いてくれない」
などなど、社長の悩みあるあるなのですが、これらをどうも社長の悩みとして捉えてしまいがちな気が致します。
しかし本来は自社の人事戦略をどう構築していくかという話でもあります。

社長の悩みと捉えてしまうよりも、自社の人事戦略を考えると認識して動く方がなにやら社長としての仕事感の重みが増すような気がしませんか?
単なる「物は言いよう」なのですが、
私は根が通販屋なので、こうした「物は言いよう」が好きですし結構大事だよなあと思っています。
なぜならその方が楽しくできるから。

人事の顧客は誰か?

私は通信販売を生業として、
私たちが販売する商品の良さをお客様にどのように伝え、
どのように感じてもらい、
そして「欲しい!」と感じていただき
購入のアクション(電話とか申込書とかポチるとか)を起こしていただくかを考えてきました。

商品開発においても、
お客様がどんな問題を解決したいと願い、
どのように解決したいと思っていて、
それを許容できるであろう価格で販売可能な商品として完成させるという観点で行ってきました。

とするとです。

社内の人事戦略や施策を考える際には、
どうしてもそのターゲットとなる顧客は社員となってしまいますし、新卒採用となれば学生です。
扱う商品はまさに自社の人事施策そのものとなりますので、社員や学生にとってつい「欲しい」と感じるような施策を考えなきゃとなってしまうわけです。
それをどのように伝えるかにおいても、ターゲットに魅力的と感じてもらういわば広告表現を考えることと同じ思考になってしまうのです。

これってつまりマーケティングなんですね。

一方でこんな意見もよく耳にします。

社長は社員に阿ってはいけない!

阿るは媚びへつらうという意味のネガティブな表現ですし、さすがに媚びへつらうとなると私もどうかとは思います。

とはいえ、私はやはりマーケティング視点で考えてしまう。
例えば
「社員にとって喜ばしいと感じる魅力的な人事の施策を考えている」と私が言うと、
「そんな考えでは社員を増長させるだけだ」とか、
「社員を甘やかすようでは社長失格」と言った
厳しい意見をいただくことの方が多かったのです。

つまり社員をお客様扱いすることは会社のためによくないということです。

この考えも確かに分かるのです。
そもそも給料という代金を支払っているのは社長(会社)なわけです。
お客様は売り手に代金を支払っていますが、
社員には会社が給料を支払っています。
だったら会社こそお客様だ、というロジックも当然成り立つからです。

でもそのことは充分に理解した上で、
いざ採用ページを作るとか、
人材育成施策を考えるとか、
人事評価制度を作るとか、
休暇制度を改定するとか、
そんなことを考え出すと、
私はどうにもマーケティング視点で社員をターゲット顧客として考えて、
そのターゲットが満足する商品(ではなく施策)を作り、
その施策が魅力的に伝わる広告(ではなく告知)を考えてしまうのです。

他の記事でも書いたことがありますが、
マーケットイン、またはカスタマーインならぬ、
エンプロイーインの視点です。


これはもう仕方ないのです。
長年気づき上げたマーケッターとしての習性なのでなかなか治るものでもない。

そう覚悟を決めてエンプロイーインに徹する思いで人事兼任社長を務めてきたわけです。

エンプロイーインは上手く行ったのか?

マーケティング視点で人事を考えたら社員は増長したのか、と問われたら
私の認識では、そんなことは起こらなかったという回答をします。
それどころか、むしろよく働いてくれるようになったと胸を張れるくらいです。
そして実際に売上は向上し一人当たりの生産性も格段にあがり、残業時間も減ってコスト削減にもなったのですから。

まず、マーケティングを考える上ですべての人をお客様と考えることはありません。
セグメントを行い、ターゲットを選択します。
ポジショニングも考えてペルソナを設定し、そのペルソナに合った販売手法を検討するといったプロセスを踏みます。

同様に採用するにあたってはまずは自社が求める人材像があり、その人材を探すところから始めているわけです。
人材育成もその考えに従って進めていきます。
また、社員目線でひとりひとりの仕事内容の意義を深掘りします。
次に人として得られる学びや経験の価値も考慮します。人生でこんな経験をしたかったとか、こんなことを言われるようになりたかったといった、社員それぞれの個人ビジョン的なものにもフォーカスします。
マーケティング視点での人事施策なので、社員満足は重要な指標にならざるを得ません。
会社の業績も上がり且つ社員の生活も充実するという、
実に欲張りな施策を追求しているのですが、
そこを丁寧にしたことで、実際に社長と社員でそこまで大きな齟齬が起きることはなかったのです。

付け加えるなら、私の求める「社長がラクできる」という要素もきちんと網羅しました。
私の究極な目標としては、
「社長(自分)がラクして会社が儲かる」の実現なのです。
その上で社員も満足とまではいかなくとも一定以上の納得感を感じることができて、
本当の意味でのお客様も喜んでリピーターになってくれるような成功循環のサイクルです。

そんな話はあり得ないと感じる方もいると思います。
まあ、知っている人によっては話「盛り過ぎ」と感じるかもしれませんが、
まあまあの線までは行けたと自負しています。

自社に可能な領域で、
自社が作れる商品サービスを作り
自社の力量に相応しい適正規模を認識し、
自社が選択したターゲットの満足を追求し、
自社の事業の継続を果たす。
いわゆる3C、4P、STPのようにマーケティングではこんな考え方をすると思いますが、
ある意味そこに忠実に人事施策を重ねていった結果でした。

マーケティングだからデータも抑える

マーケティングですから結果については何らかの定量的なデータ、
例えば人事評価の得点の率、過去からの推移、分布だったり、
有休の消化率や残業時間の平均値などの労務データと
売上に関する諸数値やテストマーケティングの成功率といった営業データも考慮して、
施策の成果を検証し改善していったことも付記しておきたいと思います。このようなデータも示すことで、社員側の納得感を後押しできます。

具体的に何をしたか、についてはノウハウもあるのでここで詳らかにはしませんが、そんなに難しい、予算がかかる施策ではありません。
このnoteの記事に今まで書いてきたことも、この循環の取組みに沿う形で行ってきたものが多いのでよろしければご参照ください。
というか、それらの考え方は既に書いてある気がいたします。

そんなにハードルが高いものであったら、私が自社で取り組むことなどできなかったです。

そして結果として、
以前よりも社長の負荷は自分基準で言うと大きく減らすことができたと感じています。
そうです。
ラクになったのです。
自分なりの人事戦略の軸を持てたことも大きいですが、
自分の得意分野の思考を活かす取り組み方を選択したことも大きかったと思います。

経営課題の領域を人事戦略で解決するという、私にとっては一見難しいテーマではありましたが、
個の得意分野と結びつけることで、仕事が楽しく感じられるようにする。
まさに私が考えているマネジメント思考を自ら実践し、
成果に結びつけられた実例とすることができたと思っております。

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