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ベストを尽くすためには何をすればいいのか?

以前に書いた記事に「ベストを尽くす」ということについて綴ったことがあります。
「意識が低いなりの「ベストを尽くす」とは?

ここでは「ベストを尽くす」ことの基準を、
締め切りや期限の制限時間内で出来たものを「ベスト」として受け止める、としました。
それを私なりに
「意識が低いなりの」という枕詞をつけてタイトルにしたのでした。

しかし、この記事を読んだ方から、
「これでは時間内で終わらせることが重視され、その質は問われないのではないか?」
という質問を受けたことがありました。
なるほど、確かに。。。

私としては
「吾、唯足るを知る」
という言葉の引用をもって、
「自らが今の己を認識し今後の成長に励み、周囲がそれを励まし見守るということが大事」ということを伝えたかったのですが、言葉足らずのところもあったかもしれません。

そこで、
人が「ベストを尽くす」というのは具体的に何をすることなのか?

ベストを尽くすために
自らがどのように成長に励むか、
周囲(上司や先輩など)がどのように励まし、見守るか?
という点について、もう少し具体的に綴ってみたいと思います。

ベストの要素を分解する

まず、ベストを尽くすということは、その仕事の質を高いものにするために全力をあげて取り組むことだと私は考えています。
あいにく手元の辞書には「ベストを尽くす」は記されていなかったので検索してみますと以下のような記載がありました。

取り得る手立ての中で最も善いと思われることを全て行う、全力で事に当る、といった意味の言い回し。

Weblio日本語例文用例辞書

「全力で事に当たる」とありますので、具体的というよりも抽象的な精神論に近いニュアンスと受け止められます。

またベストを尽くしても、結果は伴わないことも多々あります。
いやむしろ、そういう時の励ましとして「ベストは尽くした」といった表現をするケースもある。
ということで、ここでは結果の是非は一旦脇に置いて考えることとします。
もちろん結果を伴う方が良いことは言うまでもありません。

さて、私はビジネスにおいては、
精神論よりもできるだけ具体的に、また定量的に認識したい
と考える性質なので、
改めて私なりに「ベストを尽くす」を分解して書き述べてみます。

ベストを尽くしたか、を計る時に何を基準とするかですが、
私は以下のように考えます。

知識量
仕事に知識は不可欠です。
知識をどれだけ集めたか、集めるために何をどれくらいしてきたか。

経験
仕事には経験も不可欠です。
どれだけ経験を積んだか、経験を得るために何か行動してきたか。

知識と経験の整理
知識と経験で得たものは、そのまま放置していては役に立てづらいので、それらを記録して整理し分類しておくことで情報になります。そうしたアクションを行っていたか

情報化
知識と経験を整理して、自分の頭の中や私的なメモに残すだけでなく、チームでも共有できるようにライブラリー化する

例として知識や経験を通販広告を作る仕事に当てはめてみます。

  • 商品情報

    • 販売商品、競合商品、類似商品の知識や、それらの販売に関わった経験など

  • 販売情報

    • それらの商品の過去の販売データ

  • ボキャブラリー

    • 語彙、表現方法など

  • 図式、グラフィック

    • 写真、デザイン、レイアウトなど

他にもまだまだあると思いますが、ざっとこんなところを例としてあげてみます。

私は企画やプランを考える時の方法として
アイデアの方程式という言い方をしています。
これを
アイデア=観点×情報
という式に表しています。

観点と情報の要素の量が増えることで、そのかけ合わせからシナジーが生じ、新しいアイデアの量が増えて、その結果として仕事の質も上がると考えています。

つまりは、こうした情報と経験を増やすためのアクションを日々の業務や研修で行ったり、世間話の雑談といったところでも用いることで、各個人のスキルを上げていくことができると考えているのです。

そしてこれらを日常の習慣として行ったり、業務での実践やトレーニングに用いることでスキルを高めて個々人の生産性をあげることに繋げることができるという筋です。

何かの仕事に取り組んだ時に、これらをしっかりと時間内に行って完成させることが、まさに
「ベストを尽くす」
ということだと捉えているというわけです。

その仕事に取り組む上で
こうしたアクションを日々行っていたか
持っている知識と経験を時間内にフル活用しているか
それは、成果物を見れば自ずとその質や新しさというのは分かるものです。

新しい観点
新しい情報
市場や競合の分析
顧客のニーズ
過去や直近の販売データ

例えばこれらの観点と情報がそのアイデアに反映されているか、
過去の企画と比べて緻密さや大胆さが増しているか、
またそれらの裏付けを考えているか。
これらをポイントとして、
その人がきちんと
「ベストを尽くしたか」を見極められる
と思って取り組んでいました。

かといって、それがもし不十分だと感じたとしても、
そこは敢えて時間内で終了とします。
そこが今のその人の「ベスト」であったということであり、
過去の記事の話しに帰結するという訳です。

リーダーとしてすることと言えば、
振返ってみると時間内で尽くせるベストはもっとあったのではないか?
という問いかけを、
今ではなく次のアクションで生かしてもらうことで、
次以降の機会から、
時間内でのベストを尽くす技術を高めてもらいたいと思っていたのです。

ベストの質を上げるために

このアクションを効果的に行うためには、
日常での観察や情報収集の意識を高めてもらう声がけや問いかけと、
組織内での情報交換を行う時間の確保が必要になります。

具体的な例をあげると、
会議といった意思決定の場ではなく、
意思決定や評価を伴わない対話の時間の設定や雑談の推奨といったことがあげられます。

また対話や雑談を増やすことで組織内での関係性の質の向上や、自己認知、他者認知のきっかけを作ることにもなりますので、その後の思考の質、行動の質も高まることとなり、仕事の質も高まっていくものではないかと思います。

実際にこうしたサイクルを意識して経営者としてのマネジメントを継続したことで、会社としてのアイデアの創出量を増やすことができたのではと感じています。

前職ではテストマーケティングの実践を重視していましたが、
テストの量とは結局は社員からのアイデアの量に比例します。
また思いついたこと、考えたことをオープンに発せられる、
仮にそれが的外れや拙いものであり、採用されないことが続いたとしても、
そのアクションをしたことそのものを受け入れる風土や関係性こそが、
失敗を恐れずにチャレンジする風土、
言い換えれば心理的安全性の醸成にも繋がると思うのです。

「ベストを尽くす」
ということは仕事に真摯に取り組むということでもあります。
しかし単なる精神論で終わらせてしまっては、説得力もありませんし、ともすると唯の言い訳の常套句になってしまう恐れもあります。
せっかく多くの人に認知され、使われている言葉なのですから、
どうせなら使うなら論理的で具体的に取り組みやすいメソッドとして使えないものかと考えて、
こんなロジックを考えて使ってきたのでした。


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