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利益をどのように使うか?

会社を経営をする時に、利益というものをどのように扱うかは非常に大事な問題です。
利益をどのように位置づけるか、利益をどのように使うのか、そして利益はどうして大事なのか。利益の取扱いを間違えてしまうと、社内的にも社外的にも大きなトラブルの原因にもなり得るとさえ感じますし、経営者への評価や信頼にも大きな影響を与えます。場合によっては命取りにもなり得る。
そこで今回は、自分自身の経験や思考を振り返りながら、利益について考えてみたいと思います。

偉大な先人の教え

経営学の偉大なる先人、P.ドラッカーは利益について以下のように述べています。

「利益は企業が存続するために必要な条件であり、どこまで貢献するべきかの妥当性をはかる基準である」

ピーター・ドラッカー

一般的に企業は利益を追求するために存在し、利益を得ることを目的とした集団である、といった考え方も言われます。しかしドラッカーは利益は目的ではなく、存続するための条件であると説いています。

目的か条件か、この問いかけは非常に大事な観点だと感じます。
「人それぞれ」な私にとっては、どちらであってもいいとは思っています。その会社が利益を目的として存在するならそれもあり。存続することを目的として、その条件とするならそれも良し。

しかし実際には、私は後者の存続の条件として利益を扱ってきたのは確かです。

以前に別の記事でも書きましたが、前職時代に会社の目標は「長く続く会社になる」こととしていました。長く続く会社になることが、社長としての顧客への責任であり、社員への責任でもあり、株主(創業者)への責任と考えていました。そしてそのために必要なものと言えば、それはまさに利益であると。

会社を続けるということは正直お金がかかります。どんなに社員がいいアイデアを持ってきても、お客様のご要望にどんなに真摯に応えようと思っても、お金がなければ無い袖は振れないからです。だから利益が必要ですと社員に話していました。なので給料を上げたいと思うなら、まずは利益をしっかりと上げようということもよく話していました。

これはドラッカーに影響を受けたからか、というと実はそうではありません。創業者が会社を作った以上は長く続く会社でありたいと話していたからなのです。創業者自身もおそらく、個人の考えとして語っていたと思います。後にドラッカーを知り、著作を読んでみて同じような事が書かれていたことで、より考えを確かなものにしたというのが実情です。
しかし偉大なる先人の教えというものは非常に有難いもので、社員たちに伝える際に「あのドラッカーもこう言っている」という枕詞を着けることで、非常に説得力を持たせることができたのでした。

利益をどのように使うか

さて、利益は長く続くための条件であると定義したわけです。とすると、この利益を何に使うか、というのが大きな問題となります。社員たちとともに知恵を絞り努力をして積み上げた利益。その大切な利益を長く続く会社にするために使わなければなりません。当然社長が独り占めするわけにはいかない。というか雇われ社長ですから、そもそもそんな権限はありません。
創業者自身も、長く続く会社を目標にと言っているので、そのために使うようにという考えです。私の社長としての役割は、利益を高く上げる会社にすること。それと、その利益を長く続く会社にするために使うこと、ということになります。

こうして書くと、至極当たり前の事を書いているように思われるかもしれませんが、意外と出来ていない会社が多いような気が致します。(私の気のせいですかねw)

会社のために使う

利益の使い道として、大きく3つの分類を作りました。
ひとつ目は会社の資金。軸としたのはいわゆる「無収入寿命」です。
無収入寿命とは、売上が0になった場合にその会社が何年存続できるかという指標です。私なりにシンプルに言い換えると、災害などで営業が出来なくなった場合、社員に何年間給料を払い続けられるか、という言い方をしていました。実際には他にも会社の維持費等の固定費もあるわけですが、社員に話す場合は、大地震が起きて売上0になっても給料は払える貯えは必要だよね。それがあれば復興した後にまた会社を再開できるからね。と話す方が分かりやすいと思ったからです。社員にとってもその方がリアリティもあるし安心を感じてもらえますし、会社への信頼度も増してくれると思ったのです。

社員のために使う

ふたつ目は社員への還元。
これは給料や賞与といったお金の側面もあります。財務上では人件費は固定費として考えていましたが、社員に説明する場合は、こう言った方がすっきりします。しかしお金だけではありません。福利厚生に関する予算、健康診断などの社員の健康維持に関する予算もありますし、社員のスキル向上のための研修予算などもあります。他にも社員の自己実現を支援する予算や、働きやすいオフィス整備、チームビルディングといったものに用いる予算もあります。
ここはひとつ難しいところがありました。例えば社員旅行や忘年会といった会社行事です。こうした行事は慰労の意味合いもあれば、チームビルディングの意味合いもあります。扶養の範囲内で働いているパートさんとかは、時給を上げ過ぎると労働時間が減ってしまい逆に困るという人もいたりするので、その分こうした行事で高級旅館に社員旅行に行ったりするで還元する方が喜ばれるなんてこともありました。しかしその一方、中には「そんな予算を使うくらいなら、ボーナスをもっと下さい!」という社員もいたりするわけです。気持ちは分からなくもないのですが、スキル向上やチームビルディングなど、社員会社双方にとって利がある使い方も大事なわけです。こうした社員には、利益は「長く続く会社」の実現を目指して分配しているという趣旨で理解を求めるよう心掛けました。幸いこの点ではそこまで不満が高まるということはなかったので、一定の効果はあったかもしれません。

お客様のために使う

最後はお客様に還元するとなります。
ここも実は難しいところで、利益をお客様に還元すると言うと値引きキャンペーンや値下げをするのかという話になりがちです。利益の還元ですから、選択肢としてはあるのですが、お客様相手に商売をするという観点から考えると、安易に値下げ施策というのは取りたくはありません。そこでお客様にもっと喜んでいただける値下げ以外のサービスを充実していこうとか、お客様を待たせない仕組みを作ろうとか、もっと喜んでもらえる新商品を開発しようといった観点での還元の施策を考えるようにしていました。

分配と循環

これらの3つの分類に利益を分配するという考え方を示して経営をしておりましたが、実は分配という言い方とは異なる観点もありました。

それは循環です。

利益

社員への還元(社員のエンゲージメントとモチベーション、スキルの向上)

顧客への還元(商品の品質、サービス、商品ラインナップの向上)

利益の更なる向上

会社の資金(無収入寿命向上により経営の安定化)

社員への還元(会社への信頼の向上とエンゲージメント、モチベーション、スキルの向上)

顧客への還元(品質、サービスなどの更なる向上)

と言った感じで利益が社員、顧客、会社と回り、更なる利益の向上に繋がる循環の仕組みにもなると考えたのです。

分配というとなんだか一方通行の感じですが、循環とすると継続性が高くなるように感じます。そして好循環となるとスパイラルアップのイメージに繋がり、より長く続く会社の実現イメージが湧くのではないかと考えました。

これが考え通りに上手く行ったかどうかは分かりません。
しかし、お陰様で在職中は大きなトラブルもなく売上も向上し利益を上げ続けることはできました。無収入寿命も伸びましたし、社員の離職率、残業時間は減り、有給取得率は向上しました。あと賃金ベースアップも行ない、平均賃金も上がったんです。そしてお客様も増えて優良顧客も増やすことができたのも確かです。
利益を分配し、循環させていくスパイラルアップもある程度は実現できたかなと思っています。


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