名言が与えてくれるもの17:「まとめ役」はいらない
誰もがドキっとし、心に刺さったことばを持っていると思います。第17回目の名言は、『「まとめ役」はいらない』です。今もずっと私の心の中に刺さり続けています。
ジョン・レノンのことば?
このことばは、ジョン・レノン(John Lennon 1940/10/9-1980/12/8)のものだとされています。『「まとめ役」はいらない』は、一部を私が切り取ったもので、全文は『何かを象徴する人物や尊敬できる人間、あるいは自ら行動を示すような人達はいてもいいけれど、「まとめ役」はいらない』です。
このことばに出会ったのは、20年以上前に読んだ『CROSSROAD 20代を熱く生きるためのバイブル』という本でした。当時、衝撃を受け、かなり影響を受けました。
ジョン・レノンは、名言を数多く残しています。『人生』や『平和』について語った素敵なことばも多い。今年12月で没後40年を迎えますが、今でも特別な存在として輝き続けているアーティストだと思います。
今回このことばを取り上げるにあたり、ネットで原文や出典を探しましたが、レノンが『「まとめ役」はいらない』と語ったエピソードは見つけられませんでした。本当にレノンが語ったことばなのか、信憑性は微妙です。でも、ジョン・レノンならばこういうことを言いそうだな、と感じさせる凄味があります。
会社は「まとめ役」を必要とする
29歳でこのことばを知って以来、「まとめ役」にはなりたくない…… と思ってきました。実際「まとめ役」のような仕事は、好きでも、得意でもありませんでした。
プロジェクトやコミュニティを円滑に運営していくために「まとめ役」が必要とされる局面は多々あります。組織では「まとめ役」を高度に務められる調整型の人材は、「有用な人」と評価されることも多いです。
私が28年半勤めた企業は、お堅い業界の歴史ある会社だったので、組織内のヒエラルキーはなかなかに強固でした。手掛けている事業分野も広く、上席の意思決定者が、日々起こるビジネス事象の隅々までフォローするのは困難です。自分の代わりに情報を整理し、分析し、助言や改善策を手際よく創出できる有能な「まとめ役」が重宝されるのは理解できました。
社内のあらゆる組織の中に「総括」という「まとめ役」を務めるポジションがあり、その組織内を意思統一するスポークスマン的役割を担っていました。組織と組織を繋ぐリンクマンです。小さな組織をまとめる力は、より大きな組織の中のヒエラルキーの階段を上っていく上で絶対に必要な能力でした。私も苦手なりにその役割を果たしてきました。
「まとめ役」に泣かされたこともあった
私が会社員時代に一番嫌いで苦手だった仕事が、社内稟議でした。関係する各部門へ根回しをするのはうんざりでした。相手にするのが面倒くさかったのが『自分では手は動かさない。勉強もする気もない。応援する気もない。しかし、評論家風に口だけは出す』というタイプの「まとめ役」です。
「まとめ役」が、自分の存在を誇示するため、仕事してますアピールをしなければならない事情はよくわかります。「まとめ役」を担う人には、会社の中枢で重要な意思決定や円滑な組織運営に寄与しているという強烈な自負があります。故に、自分の理解の範疇を超えるアイデアや施策を、自分が十分に咀嚼した上で認めたいというプライドや意識があります。結果、虎の威を借りて、自分が納得できるまでやたらと資料や説明を求めてきます。
「上役が納得するかどうか」を常に意識していて、視線や判断軸が社内の上層部に向いています。そして、そういう保身的な仕事の進め方がビジネスの最前線で働く私のようなポジションの人間の時間とモチベーションを奪っているという自覚が乏しくて、何度も泣かされました。「慇懃無礼」ということばの意味を何度も痛感しました。
私は「下位職の人間が、上位職の都合や能力に合わせるのが当たり前」という「まとめ役」の論理に強い反発を感じていました。残念ながら、下っ端は自分の貴重な時間を吸い上げられる働き方が当たり前という空気を、自分の力では変えられませんでした。組織内の非生産的で内向きな仕事に忙殺されることが馬鹿馬鹿しくなった、というのも会社を辞めた理由の一つです。
「まとめ役」とどう向き合うか
私は、何かを象徴する人物でも、尊敬できる人物でもありませんが、せめてレノンのことばの最後の、自ら行動を示すような人達ではありたいです。
私は、組織内の有能な「まとめ役」になる意欲も資質も欠けていました。そう自覚するのなら、「まとめ役」を超えていく強い信念を持ち、一目置かれるだけの腕力を身に付け、味方を増やす巧妙な戦略が必要でした。大きな仕事を求めるのであればその視点が欠けていた…… と今では思います。
どの分野にも既存秩序を守ろうとする善意/悪意の「まとめ役」がいます。一旗挙げたい野心家は、「まとめ役」との向き合い方を真剣に考えていく必要があります。世の中には、「まとめ役」の守っている門に阻まれ、潰されていった人材が一杯いる筈です。
門をこじ開ける為には、武器で薙ぎ倒すのか、味方につけて共闘するのか、はたまた自分が番人になるのか、自分のキャラクターと強みを考えて戦略を考えておく必要があると思います。