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金曜日の随筆:高原社会で生きる

また運命を動かす金曜日がやって来ました。2022年のWK4、睦月の肆です。本日は、植村公一氏と山口周氏の『変わり始めた大都市の求心力と遠心力のバランス』というテーマでの対談集(前編・中編・後編)を読んで考えたことのまとめです。

今週の格言・名言《2022/1/17-23》

Think of a way to break out of the money game.
「マネーゲーム」から抜け出す方法を考えよう
It always seems impossible until it's done.
ー Nelson Mandela, politician, lawyer/South Africa
何事も成功するまでは不可能に思えるものだ。
ー ネルソン・マンデラ 政治家、弁護士/南アフリカ共和国

山口周氏の使う印象的なことば

山口周氏は、発信内容が注目されている気鋭の独立研究家・著作家で、多くの著作があります。私も何冊か読ませて頂きましたが、視点や切り取り方に共感する部分が多い人です。対談相手(聞き手)は、インデックス株式会社代表取締役の植村公一氏です。

この対談の中を読み進める中で、幾つか面白いと感じるキーワードに出会いました。
● 高原社会
● 文明的な成熟社会から文化的な成熟社会
● サンディカリズム(組合主義)
● ホワイトカラー=情報の製造業
● 三方良しのPPP(Public Private Partnership 官民連携)(植村氏の表現)

山口氏の発言で嬉しく感じたのは、

社会に取り残された人を再び包含する必要があります。これは、経済性や市場原理にだけ頼っていても解決できません。
一番危険なのは、すべてをガラガラポンするという考え方です。あるシステムに問題があるからといって、オルタナティブを求めるのではなく、修正を繰り返していくという考え方の方がいいと思います。
近江商人の「三方良し」は、道徳論の話ではなく、システムのボトルネックに過負荷を与えないという考え方だと思います。

といったものです。とても共感できるアプローチです。

低成長社会ではなく高原社会

「日本は経済成長率が停滞している」「一人あたりGDPで韓国に抜かれた」「日本は●●で先進国で最下位レベル」というニュースや言説は、思い当たるだけに、多くの日本人の自信を失わせ、焦りを誘います。

私が「成長至上主義に囚われ過ぎている」「脱成長でもいいじゃないか」と叫んだところで、それは負け犬の遠吠えのようになってしまいます。しかし、山口周氏のような聡明で著名な論者が、「日本が長年目指してきた成熟・完熟が達成され、もはや無理に無理を重ねる高成長を必要としない高原社会に到達しただけ」と言うと説得力が増します。

『高原社会』は、絶望せずに謙虚に前を向く勇気を与えてくれる配慮の生き届いたことば、と受け取りました。

高原社会の価値観

日本社会には様々な問題があります。いつも時代も問題があります。言い古された話です。問題がなかったことなど一度もありません。問題の解決策を古典的な経済成長に求め、人や環境に負担を強いるような施策はもういいでしょう。

善意の人々が、日夜一生懸命働いているのに、力の結集方向がずれているのか、無駄に空回りしてしまっている印象もあります。イノベーションを正しく公平に使い、経済合理性や市場経済で全て解決しようとしないことが求められています。感覚的で具体性を欠く意見ですが、切り捨てるのではなく、掬い上げる発想、寛容性が不足していると感じる事象が、至る所で起こっています。経済的にうまくやろうとするあまり、選択と集中の思想が色濃く覆ってしまった弊害ではないか、という気がします。

普通・平凡が嫌で、突出した存在でありたい人はいるでしょう。私もそう思っていた時期がありました。個人で頑張ることは、尊敬されていいし、上げた成果は称賛されていいし、報われていいのです。ただ、そういう人ばかりを前提にした制度設計は、そろそろ限界が来ています。意識の上でそろそろ見直しがいると思います。

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