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2025箱根駅伝(往路)観戦記
駅伝観戦三昧の新年二日目は、『第101回東京箱根間往復大学駅伝競走』の観戦記です。
第1区 21.3㎞ 大手町〜鶴見
快晴、ほぼ無風の最高のコンディションの中、大手町をスタートしました。1区での出遅れはレースプランを狂わせ、致命傷になりかねません。
スタートからまもなくして、中央大学の吉居選手が飛び出し、ひとり先行します。前回は7区区間賞、10000mのベストタイムは27分台を持ち、このメンバーの中で頭抜けた実績を持つ存在です。兄、大和選手の持つ区間記録更新を目指し、軽快なフォームで快調に進んでいきます。後方は、関東学生連合の片川選手を挟み、大集団が牽制しながら進みます。優勝候補の三強は、國學院大學の野中選手、青山学院大学・宇田川選手、駒沢大学・帰山選手が集団の中で淡々と進んでいきます。
吉居選手はポイントとなる六郷橋を過ぎても快調で、そのまま歴代4位の好タイムで押し切って区間賞を獲得しました。後方のスパート合戦は、駒沢大学が2位、日本体育大学が3位で来たものの、大きな貯金を作って2区にタスキを渡しました。
区間賞 吉井駿恭(中央大学3年)1時間1分7秒
第2区 23.0㎞ 鶴見〜戸塚
各校のエースが揃い踏みする『花の2区』には、今年も留学生を含む豪華なメンバーが揃いました。権太坂のアップダウンまでをテンポよく抑えて走り、ラスト3㎞からはじまる"戸塚の壁"をどう克服するかがポイントとなる屈指の難コースです。
首位でタスキを受けた中央大学のエース、溜池選手が淡々と走ります。1分32秒の大量リードに守られ、理想的な走りで最後まで危なげなく走り切りました。1時間6分39秒の好タイムで区間9位はなんとも気の毒なハイレベルなレースが展開されました。
前半は、2位で襷を受けた駒沢大学の大エース、篠原選手を、4位でタスキを受けた早稲田の山口選手が自信満々で置き去りにして飛ばしていきます。また、4つの長距離学生最高記録を持つ、史上最速の留学生ランナー、東京国際大学・エティーリ選手が14位からぐんぐん追い上げていきます。昨年区間賞の青山学院大学・黒田選手は自重気味で順位を2つ落とします。
保土ヶ谷橋を右折し、権太坂へと差し掛かるあたりから、前半抑えていた黒田選手と、チーム事情優先で2区起用となった創価大学・吉田選手が猛烈な追い上げを開始し、先行チームを面白いようにまくっていきます。初優勝を目指す國學院大學の主将で大黒柱の平林選手(区間8位)も、中央学院大学の主将、吉田選手(区間7位)も、帝京大学の主将、山中選手(区間6位)も、駒沢大学の主将、大エースの篠原選手も次々とかわしていきます。区間新をマークして40秒差の2位まで進出したエティーリ選手には及ばなかったものの、1時間5分台の区間新で、3位に青山学院大学・黒田選手(区間3位)、4位に創価大学・吉田選手(区間2位)が躍進してきました。
区間賞 R.エティーリ(東京国際大学2年)1時間5分31秒=区間新
第3区 21.4㎞ 戸塚〜平塚
先頭を快走する中央大学は、ここに10000m27分台の2年生、本間選手を起用してきました。追う2位の東京国際大学は、4年生の佐藤選手、3位の青山学院大学は今季無敵のエース、鶴川選手が起用されています。4位の創価大学・ムチーニ選手も冷静に走ります。
素質は折り紙付きながら、過去3年間走れなかった悔しさをバネに最終学年の今季覚醒した鶴川選手が爆走するかと予想しましたが、意外と控え目な走りで、ムチーニ選手にかわされ、佐藤選手をかわして3位は死守したものの、区間賞の快走を演じた首位の中央大学に2分24秒差を許してしまいました。
駒澤大学は、1年生の谷中選手が、早稲田大学のスーパールーキー、山口選手に迫られながらも5位を守りました。
ここまでエースの欠場で後方に沈んでいた東洋大学がルーキー迎選手の区間8位の力走で16位まで挽回したのが目を引きました。
区間賞 本間颯(中央大学2年)1時間0分16秒
第4区 20.9㎞ 平塚〜小田原
4区は、細かなアップダウンが連続してペースが掴みづらい難コース。各チーム力のある実力者を配しています。
2位に上がった創価大学に1分34秒のリードを持って、中央大学・白川選手が快調に走っていきます。ところが、過去3年間箱根路を沸かせてきた青山学院大学の切り札、太田選手が今年も鬼神の走りで追い上げていきます。2分24秒差は想定外の差だったでしょうが、全く怯む気配もなく、創価大学・野澤選手をかわして2位に上がると、5区中継では首位と45秒差まで肉薄しました。区間2位の好走を見せた、5位の國學院大學・青木選手に45秒も勝つ圧倒的な走りでした。
駒澤大学の未来のエース、ルーキー桑田選手が4位に進出し、6位には2年生、長屋選手が順位を一つ下げたものの射程圏内にまとめた早稲田大学が入りました。山に自信のある選手を擁する両校の後ろ8位に、城西大学・林選手が滑り込み、箱根山中が楽しみな展開です。
東洋大学は、前回10区区間賞の岸本選手が区間3位の力走で、遂にシード圏内の9位まで盛り返してきました。
区間賞 太田蒼生(青山学院大学4年)1時間0分24秒
第5区 20.8㎞ 小田原〜芦ノ湖
首位を走る中央大学の5区は、最終で最後の箱根を走る4年生、園木選手。最初の5㎞をハイペースで入り、解説の渡辺康幸氏が不安を口にします。最初のチェックポイント函嶺洞門を出場選手トップのタイムで通過します。45秒差で追う青山学院大学の若林選手は三度目の5区起用です。山を心得た走りで、本格的な上りに入るあたりから先頭との差を確実に削っていき、最も急峻な宮ノ下の坂で抜き、ぐいぐいと引き離していきます。
追う展開の駒澤大学は、エース格であり、経験者の3年生山川選手でジャンプアップを狙いましたが、更に後方からスタートした、「山の名探偵」こと、早稲田大学2年生の工藤選手がかなり好調で、箱根山中で逆転を許してしまいました。
若林選手は危なげない走りで、下りに入ってからは更にペースを上げ、歓喜のテープを切りました。前回"山の妖精"、城西大学・山本選手(当時)が記録した区間記録を更新しました。また、"初代・山の神" 、順天堂大学・今井選手(当時)が刻んだ旧区間記録も1秒上回りました。
2位には中央大学が粘りきり、3位には工藤選手の快走で早稲田大学、4位駒澤大学、5位創価大学、6位國學院大學とゴールしました。7位には城西大学が斎藤選手の区間3位の力走で入り、立教大学も山本選手の区間5位の走りで8位を占めました。
区間賞 若林宏樹(青山学院大学4年)1時間9分11秒=区間新
往路成績
① 青山学院大学 5時間20分01秒
② 中央大学 5時間21分48秒(+1分47秒)
③ 早稲田大学 5時間22分30秒(+2分29秒)
④ 駒沢大学 5時間23分17秒(+3分16秒)
⑤ 創価大学 5時間23分38秒(+3分37秒)
⑥ 國學院大學 5時間25分26秒(+5分25秒)
勝手に寸評
青山学院大学が、途中何度か見舞われた細かな誤算を乗り越え、二年連続の往路優勝を果たしました。3区終了時点で負った2分24秒の差を、四年連続出場、3区→4区→3区→4区で常に箱根を沸かせてきた4区の太田選手の快走で埋め、三度目の山を上る5区若林選手の区間新で鮮やかに逆転してみせました。実力伯仲の他校を、底力と経験の差で捩じ伏せた勝利、という印象です。
1区宇田川選手が区間10位で滑り出し、昨年区間賞を獲得している2区の黒田選手が序盤で順位を12位に下げた時点では、黄信号かと思われました。ところが、この区間の走りを知り尽くす黒田選手は、中盤から一気にギアを上げて先行するチームを次々と抜き去ると1時間5分台をマークする圧巻の爆走で3位まで浮上し、流れを呼び込みました。原監督がエースと呼ぶ鶴川選手が3区で差を開かれ、再び黄信号が灯ったかに見えたものの、それすらも演出だったのか? と思わせるほどの鮮やかな逆転勝利でした。
2位の中央大学、3位の早稲田大学は、大きなブレーキなく往路を走り抜け、古豪の力を存分に発揮しました。2区では、エースの溜池選手、山口選手が地味ながら粘りの走りを披露し、中央は3区・早稲田は5区が素晴らしい出来でした。
4位の駒澤大学も随所に力を発揮したように思いますが、大砲・佐藤選手が1区か3区にいれば.... と思わせる展開でした。5位の創価大学は、終わってみれば額面通りに実力を発揮したと言えるでしょう。復路に有力ランナーを残す國學院大學は、6位という順位は許容範囲でしょうが、タイム差は誤算の筈で、逆転優勝は厳しそうな雲行きです。
明日の復路も激闘を期待します。
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駅伝観戦歴40年以上の経験を活かし、中長距離、マラソン、駅伝に関する観戦記や備忘録のnoteを書いています。一度覗いて見て下さい。
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