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名言が与えてくれるもの⑪:Stay Hungry. Stay Foolish.

本日のnoteは、『Stay Hungry. Stay Foolish.』スピーチについてです。noteを書き始めてから、絶対に取り上げたかったテーマでした。累計で1億回以上再生されているその動画は、スタンフォード大学が運営するYouTubeチャンネルで観ることができます。


「Stay Hungry. Stay Foolish.」スピーチの概要

『Stay Hungry. Stay Foolish.』は、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ(Steven Paul Jobs、1955/2/24-2011/10/5)が、2005年スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの締め括りに使ったことばです。このスピーチは非常に有名で、世に流通するジョブズの名言の多くは、この時のスピーチの中から引用されています。

『Stay Hungry. Stay Foolish.』というフレーズは、ジョブズ自身が捻り出したことばではありません。1970年代の雑誌、The Whole Earth Catalogの最終版の最後のメッセージとして記されていたことばを引用して、スピーチの締め括りとして使ったものです。ジョブズ自身の生き方とも重なる印象的なことばとして響いてきます。

スピーチは「Connecting the dots」「Love and loss」「Death」についての3つのストーリーと『Stay Hungry. Stay Foolish.』の締めのメッセージで構成されたトータルで15分位の短いものです。

それぞれのストーリーの中に、自らの体験とその体験から導かれる教訓が盛り込まれていて、スピーチのお手本のような見事な構成です。用語や文体の選択も秀逸で、話すリズムもいい。ジョブズの発音もイントネーションも明瞭なので、英語教材としてもお奨めできます。

このスピーチを解説した記事はネット上に無数にころがっています。このスピーチに心を打たれた人が世界中にいて、それぞれ心に刻まれたお気に入りの部分がありそうです。私も、それぞれのストーリーの中から、特に心に刺さった部分を抜き書きしておきたいと思います。付した日本語訳は私の解釈に基づく私訳です。

Connecting the dots より

You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
これから先の点を繋いでいくことはできません。できるのはこれまでの点を繋ぐことだけです。だから、これまでの点たちが何らかの形になって将来で繋がるということを信じなければなりません。

Because believing the dots will connect down the road, it gives you confidence to follow your heart; even it leads you off the well-worn path. And that will make all the difference.
点たちが繋がり道となると信じることが、自分の心に従う自信を与えてくれます。たとえそれが常識的な道から外れるとしても。そうすれば、全てを変えるでしょう。

Love and loss より

The only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work. And the only way to do great work is to love what you do. If you haven't found it yet, keep looking. Don't settle.
真に満足する唯一の道は、あなたが偉大な仕事だと信じるものをすることです。そして偉大な仕事をする唯一の方法は、あなたがしていることを好きになることです。もし、まだそれを見つけていないなら、探し続けましょう。中途半端に折り合いをつけないでください。

Deathより

If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today? And whenever the answer has been "No" for too many days in a row, I know I need to change something.
もし今日が私の人生の最後の日だとしたら、今日しようとしていることをしたいと思うだろうか? そして、答えがNOの日が、何日も続くようなら、私は何かを変える必要があるとわかるのです。

Remembering that you are going to die is the best way I know to avoid the trap of thinking you have something to lose. You are already naked. There is no reason not to follow your heart.
自分はいずれ死ぬのだと思うことは、あなたが失う何かを持っているという思考の罠を避ける最高の方法です。あなたは既に何も身に付けないすっ裸なのです。自分の心に従わない理由なんてないのです。

Right now the new is you, but someday not too long from now, you will gradually become the old and be cleared away. Sorry to be so dramatic, but it is quite true.
たった今、新しいのはあなたたちです。しかし今からそう遠くないある日、あなた達も次第に古くなり、淘汰されるでしょう。芝居が買った大袈裟な言い方で申し訳ありませんが、それは全くの事実なのです。

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma — which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.
あなたの時間は有限です。だから、他人の人生を生きて、時間を無駄にしないでください。ドグマー他人の考えた結果に沿って生きることですがーの罠に陥らないでください。他人の意見の雑音に、自分の内なる声が引きづられないようにして下さい。そして、最も大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなたの心と直感は、あなたが本当は何になりたいかを既に知っています。それ以外のことは真に重要ではありません。

Stay Hungry. Stay Foolshより

Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself.
ハングリーであり続けろ、愚か者であり続けろ。私は常に私自身そうありたいと願ってきました。

このスピーチは、それまでの自分の生き方を疑うきっかけになりました。それまで深く向き合ってこなかった「自分の人生、どうありたいのか」という問題から逃げず、真剣に考えるきっかけになりました。理想と現実とのギャップに苦しんでいる時には、何度もこの動画に立ち戻りました。これまでに100回以上聴き直し、何度もスピーチテキストを追いました。今でも聴くたびに新たな気付きがあります。

ジョブズの思い出

スティーブ・ジョブズという人物に興味を持つようになったきっかけは、アメリカ留学時に授業で出された課題 ~著名な企業経営者を調べてレポートする~ に、ジョブズを選んだことです。

私は最初、日産自動車の業績をV字回復させたカルロス・ゴーンを取り上げたいと思っていました。「リバイバルプラン」「コストカッター」「コミットメント」などが話題になっていた時期だったし、私の属する日本鉄鋼業界の経営を危機的状況に陥らせた元凶のような人でもありました。先行してアマゾンで日本語版の著書を取り寄せて研究も始めていました。

ところが、指導教官から「ゴーンのことはよく知らないから、スティーブ・ジョブズ(レポートを書き始める前に候補者3人を事前に提出し、教官の了承を得るルールであり、ジョブズはその一人にしていました)にしろ」という一方的な指示がありました。

慌ててジョブズ関連本を購入して読み始めましたが、生い立ち含めて一筋縄ではいかない非常に複雑な人物であることがわかりました。考え方や行動には共感出来る部分はあるし、アイデアの独創性は抜群で文句なしに尊敬できる存在だと感じました。しかしながら、もしもジョブズが自分のボスだったら、一緒に楽しく働けるだろうか…… いや無理だろう…… と自問したりもしました。

ジョブズは、このスピーチを行った6年後の2011年10月、癌の再発によって56歳でこの世を去っています。彼は人生最後の日に何を考えたのでしょうか。

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