シーンとカルチャーの関係性
ブランディングとマーケティングを生業とする中で、『シーンとカルチャー』の関係性を紐解いてみた。
私は日本の改造車文化やドリフト文化が大好きで、今も積極的に追い続けている中、「Liberty Walk」というカスタムショップがパイオニアとなり築いた「日本の暴走族文化をスーパーカーに融合させる」ドレスアップ手法が海外で受け入れられ、1つのジャンルとして定着している様子を見てふと疑問が浮かんだ。
■文化?流行?
約10年前、何千万円もするスーパーカーのボディに電動カッターの刃を入れ、フェンダーをリベット留めした車が海外のイベントでお披露目された。
その独特のスタイルが海外のセレブ達にたちまち広がり、タブーだった(風潮があった)スーパーカーのボディを切る行為が受け入れられた。
10年以上経った今でもそのスタイルは支持されており、当時よりも人気を博している。
その様子をヨーロッパでインタビューしている映像がYouTube上にあったので見ていたが、Liberty Walkのファンが語る言葉で「Liberty Walkが作ったスタイルや『シーン』にとても共感している!」というコメントが多々あった。
10年も根付いているのに「カルチャー(文化)」じゃなくて「シーン(流行)」なのか?
この「シーン」と「カルチャー」の違いがすごく気になった。
■シーンを作る?カルチャーを作る?
よく、「◯◯シーン」という言葉を聞くことがある。
音楽:ロックシーン、ジャズシーン、ヒップホップシーン、EDMシーン
ファッション:ストリートシーン、モードシーン、カジュアルシーン
アート:ストリートアートシーン、コンテンポラリーアートシーン
文化:カフェシーン、グルメシーン、クラブシーン など
調べていくと「◯◯シーン」という表現は、流行を創り出した人やパイオニアに対して使う場合と、特定のジャンルや文化全体を指す場合の2つの意味合いがあるようだった。
『じゃあなぜ「◯◯カルチャー」ではないのか?』
「ヒップホップ」を例に紐解いてみると
「ヒップホップシーン」
と言えば、近年流行しているヒップホップ音楽やファッションなどを指すニュアンスになる。
「ヒップホップカルチャー」
と言えば、ヒップホップ音楽、ファッション、ダンス、グラフィティアートなど、ヒップホップに関連するすべての要素を含む、より広い概念を指すニュアンスになる。
『ニュアンスの違い』
「シーン」: 比較的新しい動きや流行を指すことが多く、瞬発的な活気やエネルギーを感じるニュアンスを持つ。
「カルチャー」: 伝統や歴史を含む、より広い概念を指すことが多い。深みや重厚さを感じるニュアンスを持つ。
「シーン」と「カルチャー」は、文脈によって使い分けられるようだった。
■積極的か客観的か
「シーン」と「カルチャー」は発言した人の意図と立ち位置でも変わる。
話し手がそのジャンルに積極的に関わっている状態であれば「現在進行形でシーンを作っている」立ち位置で、話し手がそのジャンルに対して客観的な視点で関わっている状態であれば、「作られたカルチャー」を語ることとなる。
シーンは新しい動きや流行を指す言葉であり、常に変化・進化し続ける。
一方カルチャーは、伝統や歴史を含むより広い概念で、ある程度の安定性がある状態となる。
シーンはカルチャーに活力を与え、変化をもたらす要素になる。
カルチャーはシーンに基盤を与え、方向性を示す役割となる。
シーンとカルチャーは、相互に影響を与え合いながら発展していく関係だった。
■シーンを創り、カルチャーを築く
何かのカルチャーを築くためには様々なシーンが必要になり、そこには長い年月や社会性も加わるという側面と、逆にシーンから始まり、気づけばカルチャーになっているという側面がある。
『カルチャー形成におけるシーンの重要性』
シーンは、カルチャー形成において重要な役割がある。
新しいアイデアや表現方法の場
人々が集まり、交流し、共感する場
カルチャーの基盤となる価値観や考え方を形成する場
シーンを創らなければ、カルチャーは生まれない。
シーンとカルチャーを創り上げていくためには「共有と共感」が大事だと感じた。
シーンにおいては、共通の趣味や興味を持つ人々が集まり、情報や経験を共有する。
カルチャーにおいては、人々が共通の価値観や考え方を共有し、相互に共感することで、強い絆を築く。
『カルチャー形成における時間と社会性』
また、カルチャーが形成されるには長い年月と社会性が必要。
シーンで生まれたものが人々に受け入れられ、広まっていくには時間がかかる。
カルチャーは、社会との相互作用の中で形成されるが、価値観やニーズの変化によって変化するものである。
カルチャーを築きたい場合は、シーンの重要性を理解し、長い時間をかけて、人々と交流し、社会と関わっていくことが重要。
■まとめ
私は人生のテーマとして「共有・共感」を軸にしている。
仕事においてもプライベートにおいても例外なく思いに共感できるか、それを誰かに共有したいかが判断基準になっている。
ずっとどこかで「カルチャーを創る」ことがブランディングとなると考えていた。
しかし、今回カルチャーは創るものではなく、築くもので、カルチャーを築く為には『様々なシーンを創り重ねる』ことが重要だと理解した。
ただ、ここで言う「シーン」はカルチャーを構成する枠組みの中にある要素の1つであり、全てではなかった。
カルチャーを構成する要素には
シーンがあり、共有があり、共感があり、歴史があり、伝統があり、起源がある。
これからは
『ルーツを紐解き、シーンを創り、カルチャーを築く』
この3つのレイヤーを意識していこう。
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