万年筆にあこがれて
過日の手帳会議を機に、文房具に強い興味を持つようになりました。
手帳・ノートはもちろん、ふせん、シール、果てはいわゆる穴あけパンチまで、あらゆる文房具がきらきらと輝いて見えます。SNSの写真を見ていても、これまで目を留めなかった、隅に写りこむペンの種類が気になって拡大表示。文具店を歩いても、自分は使わないだろうと流し見していたツールボックスが気になって仕方ない。
なかでも心惹かれたのは、万年筆とインクです。
万年筆なんてヒヨッコの私にはまだ早い、そもそも手が出ない、と思っていたはずなのですが、気がつくとほんの数日の間に、2本の万年筆を迎え入れてしまっていたのです。
不動の絶対王者ジェットストリーム
そもそも私は敬虔なジェットストリーム信者です。
仕事もプライベートも、ボールペンは必ずジェットストリーム。家のあちこちに常備しています。
何をするにも基本となるペンは【ジェットストリームスタンダード】。黒1色のものです。あらゆるものをこのペンで書きます。
新卒で就職してすぐの頃に出会い、それからずっとボールペンといえばこれ。毎日の手帳を書くのに活躍してくれています。
出かける際の相棒は【ジェットストリーム多機能ペン 4&1 BAMBOO】。お店で見つけて一目惚れした黄色い軸と竹製グリップ。かわいい上にジェットストリームとなれば間違いありません。
もともと太い軸のペンが好きなので、それも大きなポイントです。
他のペンに目移りすることなどありえない。数週間前の私は、そう信じ込んでいました。
インクとの出会いとガラスペン
数年前に友人からガラスペンとインクを贈られていましたが、もったいなくて使えず、そのままになっておりました。
文房具がアツい今こそ使ってみるときでは?と思い立ち、お作法をネットで調べた上でこわごわ筆記。するする書けるきもちよさと美しいインクの色に、すっかり虜になりました。
ガラスペンは気軽にインクを変えられるところが魅力です。
じつは、ガラスペンはその軸の中にインクを吸入する、非常に扱いが難しいものなのだと勘違いしていた頃がありました。「もったいない」という気持ちと並び、なかなか使う気持ちになれなかったもうひとつの理由です。
難しいだろうという先入観を解消したことで、ガラスペンは私にとって新たな相棒になる可能性を秘めた存在になりました。いまは3色しか持っていないインクも、ガラスペンを使うならもっと増やしてもいいかもしれない…
しかしながら、ガラスペンには大きな欠点がありました。
手帳と共に持ち歩くのが困難であることです。
自宅でゆっくりノートをしたためるのにはぴったりですが、外出先で思いついたことや飛び込んできた予定を書きつけるのは、ガラスペンには荷が重い。カバンに入れて持ち歩くなんて、繊細なペン先はもちろん、軸だってどうなるかわからない。
自宅ではガラスペンを使い、外出先ではジェットストリームを使う。それでもよかったはずですが、私は非常に面倒な人間。手帳のページに、複数のペン跡を残すことがなんとなく受け入れられませんでした。
やはり私にはジェットストリームしかない。
より信心深くなった私に、その時は突然訪れました。
はじめての万年筆プロフィットジュニア
馴染みの文具店を訪れたときのこと。
あまりにもかわいいパッケージを目にした瞬間、私の記憶は途切れ、気がつくとはじめての万年筆と共に帰宅していました。
【プロフィットジュニア+10 レトロ】。大正ロマンです。
パッケージだけでなく、キャップの色、インクの色など、すべてが私の心に刺さりました。
おまけに、万年筆というものに抱いていた「非常に高価なもの」というイメージを打ち壊す価格。これほんとに万年筆か?と疑った瞬間があることを否定できません。
「これ1つですぐに始められる!」といううたい文句の通り、丁寧なマニュアルを参考にインクを吸入すれば、拍子抜けするほどあっさりと万年筆デビュー。めちゃめちゃ書きやすい。
むかし趣味で漫画を描いていた頃、丸ペン等のいわゆるつけペンを使ったことがあります。万年筆もああいう感じなのだと思っていましたが、もう全然違う。
一切言うことを聞いてくれなかった丸ペンくんとは違い、思った通りに線が書ける。ガリガリしない。筆圧が要らない。
万年筆さんってこんなにとっつきやすい奴だったんだ。もっと早く声をかければよかった。
インクを使う点はガラスペンと同様ですが、やはり持ち歩くことができるのが大きい。おまけにサイズ感がトラベラーズノートパスポートサイズにぴったり。これはジェットストリームに代わる新たな相棒となり得るか?
しかし私の信仰心は強かった。
ジェットストリームに比べて、プロフィットジュニアは字が太いことが気になってしまいます。
万年筆のペン先の太さはいくつかに分かれているとのこと。
セーラー万年筆さんのサイトを参照すると、細い方からEF・F・MF・M・Bと表記され、今回のプロフィットジュニアはMF。「細い」とは言えないランクであると伺えます。
ジェットストリームの細さに慣れている私にとっては、やはり同じくらい細いものが理想です。うーん、せっかく万年筆デビューしたけど、今回も相棒選出とはならないかなぁ…。
少しの残念さと、ジェットストリームへの強い信頼感を抱きながら、万年筆に関するサイトをめぐる私。その脳内に、誰かが囁きました。
じゃあEFの万年筆を買えばいいんじゃない?
出会ってしまったKawecoクラシックスポーツ
囁きに導かれ、辿り着いたのが【Kawecoクラシックスポーツ】ボルドー。
私の大好きな深い赤色。金具は金色。コンバーターもカートリッジも使える。なによりEF。
これ以上なにを求めるでしょうか。
キャップを閉めたときのサイズが、プロフィットジュニアよりもさらに小さいのもかわいいです。トラベラーズノートとも雰囲気がばっちりマッチ。
まずは付属の青色インクカートリッジを使用していますが、コンバーターも購入したので、いろんなインクを楽しみたいと思います。
プロフィットジュニアの購入からわずか数日で、いまの自分にぴったりの万年筆に出会えてしまいました。
ジェットストリームと相棒交代の日も近いかもしれません。…とはいえ、万年筆1本ではインク色は1色。色分けしたいときのために、【ジェットストリーム多機能ペン 4&1 BAMBOO】も一緒に持ち歩くことにはなるでしょう。
荷物は増えますが、「万年筆を使っている」という何にも代え難い満足感を思うと、ペンの1本や2本は些細な問題です。
おまけ
満足いく万年筆を得たからといって、文房具熱がおさまったわけではありません。
Kaweco万年筆のサイズ感に近い、【ユニボールワンP】がここに来て初登場です。すっかりちいさなペンに魅了されてしまいました。
色もかわいいし、私好みの太い軸。書き味はジェットストリームに一歩及びませんが、仕事用としてポケットに入れておくのにちょうどいいかもしれません。
こうして、手の届かない憧れの存在であったはずの万年筆が、私の生活にするっと入り込んできました。
今回はあまり触れていませんが、インクにも強い興味を抱いています。
コレクションし始めるときりがないので、いま手元にあるものからゆっくり使っていきたいと思っています…が、また何者かが脳内に囁きかけてくる可能性があるため、警戒を怠らないようにします。