0601「自分を信じて描くしかない」
ただの日記です。
通常、イラストを着彩するときは、まず下絵(原画)を本紙にトレースします。本紙に、耐水性のインクや色鉛筆で主線を描き、上から水彩やマーカーなどで色付けをしていきます。(わたしの場合)
トレースというのは、原画を描き写すことです。トレース台という下からライトがあたるテーブルの上に原画を置き、その上に本紙を重ね、映し出されたラインを描きとっていくわけです。
ただ、この方法は、本紙が薄い紙でないとできません。厚紙だと透けないので、トレースできないのです。
いま描いているイラストは、水彩ブロックを使っています。ブロックタイプの水彩紙は、20枚程度の紙の四方を、糊でがっちりと固めたものです。通常のノートやスケッチブックのように1枚ずつめくることはできません。
なぜ糊で固めてあるのかというと、水張りの手間を省くためです。水彩で着彩するときは、いきなり絵の具を載せると紙が水を吸って波打ってしまいます。それを防ぐために、事前に紙に水を含ませておく工程が、水張りです。水張りは一度紙全体を水で濡らし、紙が水で伸びきった状態で木の板などに貼り付け、完全に乾かしてから描きはじめるので、時間と手間がかかります。
ブロックタイプの水彩紙は、その手間が不要で、すぐに描きはじめることができます。しかし、名前のとおり厚みがあるので、トレースはできません。
この場合は、原画の裏側に、やわらかめの鉛筆で主線をなぞり、それを水彩紙にのせ、ヘラでこすって主線を写すという方法をとります。水で濡らすと消えるチャコペーパーを使うという方法もあります。
ただ、どちらにしてもこの方法だと、原画の勢いがうまく写せなくて、いつもちょっとだけ、がっかりしてしまいます。
下絵を描く作業、わたしのなかでは、脳内にある「あの感じ」を、なるべくこぼさないようにすくい取って紙に注ぐようなイメージなのですが、下絵で「あの感じ」がいい感じに表せたな〜と思っても、本紙に注ぐときに、それがこぼれてしまい、ああーーーと切なさと悔しさがないまぜになったような気分になり、絵の前からいったん逃げてしまいます。
しばらく部屋の中をうろうろしたのち(あるいは一晩寝たのち)「いや、でもだいじょうぶ、最終的にはいいものが出来上がる」と、自分の腕を信じて描くしかないという結論に達して、手を動かし続けます。
というのを、毎回繰り返しています。これを書いているいまも、逃避している最中です(笑)