不条理な世界に生きる*世の中はかくも不条理*すみか │ 諸君の味方さんの世界
#もしスキがお金だったら
いただいたみなさんの募集記事に、PONOがショートショートを書かせていただいてます。
今回はすみか │ 諸君の味方さんの世界↓
スキを集める力は、人の能力を示した。
スキはやがて、お金そのものになった。
●”スキ”するのは無限にできる(相手のお金になる)
●”スキ”の数がそのまま収入になるけど、数はじぶんにしかわからない
「インフルエンス・パワー・カウンター」と名付けられたその端末は、決済時にマイナンバーを読み取り、インターネット上に散らばった膨大なデータからその番号の持ち主のフォロワー数やスキの数を集計し、その影響力を偏差値のように示すことができた。
「なんて不条理な世界だ」
このつぶやきからすべてが始まった。
僕はインフルエンサーである大学時代の先輩を尊敬していた。
先輩はカリスマ性がありビジネスは大成功。
ビジネスセミナーは毎回、抽選になるほどの人気ぶり。
いつもさわやかな笑顔で人々を魅了していた。
ある日、スタバで休んでいると偶然、先輩が入ってきた。
「先輩、ご無沙汰してます。
ご活躍が僕もうれしくてついついスキを大量に押してます。」
先輩もいつもにも増してうれしそうに笑って、1杯のコーヒーをごちそうになった。それが始まりだった。
たった1杯のコーヒー。
コーヒーの値段は先輩にとって3桁も高い。
僕は500円。先輩は50000円。
インフルエンス・パワー・カウンターによって導き出された「推定資産」に応じて消費税率が変動し、資産のある者からはより多くの税が徴収される。
それからチクチクと先輩からのセミナー参加やスキの催促が始まった。
「あの日の恩がわかっているのか?
おまえにとってオレからのコーヒーは価値のあるものなんだ。
まあわかっているだろうが…。
オレの言ってること正しいよな?」
なんて不条理な世界なんだ。
僕はそれからどんどん追い詰められた。
こころを奪われていく。
誰が悪いわけでもない。
ただ先輩を慕わなければならないというこころの束縛。
それに追われている毎日。
そのうち僕のこころの中に別の声がするようになっていった。
「僕は人間のクズだ。
消えてなくなってしまいたい。」
大事な人だと思っていた彼女とも別れた。
外に出られなくなった。
夜も眠れない。
涙が止まらない。
もう限界だと思ったとき
僕の書いたある記事がバズった。
”責任を負えないなら「死ななくてはいけない」なんて思わない。
僕はすべてを捨てて自分のために生きることにした。”
それからは毎日、こころの苦しさを吐き出し
少しずつだけど地道に作業を続けた。
こころの回復を”仕事”にした。
本気を出して”仕事”として取り組んだ。
そのうちオンラインセミナーの開催やzoom会議、オンラインサロンの会員数も増え、インフルエンサーの立場になった。
あの時の先輩と同じ立場だ。
もし今、先輩に会ったなら高級なワインをご馳走しようと思っている。
僕は恩にきせようなんて思わない。
むしろ先輩のおかげで今の僕はあるのだから。
炎上保険にも入ったし、こんなにも堅実に”仕事”をしているのだ。
炎上したら確実に減免対象だ。
ただ自分から望んだこととはいえ、僕はひとり。
「なんて不条理な世界だ」
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不条理の原因はいつもじぶんのこころだと、わたしは思います…。
すみか │ 諸君の味方さん、ありがとうございました!
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