nikki 2019/5/13 アフリカの夜
今日は早稲田大学へ。時間は18時。帰ろうとしている学生たちに逆行して小野記念講堂へと向かう。てっきり時計台のある建物がそれだと思っていたけれど、それは大隈講堂で現在工事中、その向かいの建物が小野記念講堂だった。
約200名ほど入る、ステージに向かって傾斜のある作り。前3列以外はステージ上を少し見下ろす形となる。私が行ったのは10分ほど前、すでに前方の席は埋まっていたので、後方端っこの席を陣取る。
名作シナリオを楽しもう
傑作ドラマ「アフリカの夜」
ふたたび!
と題されたトークショー。
早稲田大学には演劇博物館(通称エンパク)があって、一度訪れたことがある。エンパクには早稲田出身の脚本家や監督の作品を中心に台本がたくさん貯蔵されていて、そのエンパクのプロジェクトでもあるようだ。
登壇者は脚本家の大石静さん、プロデューサー山口雅俊さん、ディレクター宮本理江子さん、作家柚木麻子さん、そして、エンパクの館長岡室さんが司会を務める。さらに、「アフリカの夜」出演者の室井滋さんとともさかりえさんも登場。豪華で珍しい並びだったのではないだろうか。
「名作シナリオを楽しもう」というテーマなので、実際の脚本を見て、それからそのシーンを映像で見る、という構成だった。しかしプロジェクターの文字が小さくて、脚本はほとんど読めなかったのが残念。
そもそも「アフリカの夜」を当時私は見ていない。1999年のドラマだから20年前、私は16歳。部活に勤しんでいたのでテレビとは縁遠かった時代である。
出演は鈴木京香、松雪泰子、ともさかりえ、室井滋、佐藤浩市と主役級が揃った作品。それに反して当時の視聴率はイマイチだったようだ。あらすじだけ先に下調べして行っただけだが、映像(とは言っても、岡室さんがチョイスした10分程度の短いもの)を見たら、その面白さが一瞬で分かった。ほんのワンシーンでも惹きつけられ、目に涙が浮かんだ。
もちろん、印象的なベストシーンを選んで流しているのは分かる。それでも、室井さんの長台詞と七変化する表情、女4人のそれぞれの個性と変化、脚本の妙、これは見るべきドラマだとハッキリと分かった。
面白かったのは、脚本の背景を聞かれた大石さんが「あんまり考えてない」とか「覚えてない」とか答えるシーンが多かったということ。名シーンや名セリフほど、生みの苦しみがあまりなく、流れるように書いた脚本ほど、評価されているような気がした。それは「登場人物が勝手に動く」というのに近いのかもしれない。
役者の2人も撮影時の状況(寒かったとか)は覚えているが、どのように演じようとしたか、というのはあまり覚えていないようで、役を作り上げたというよりは気が付いたら作りあがっていた、というのに近い感じがした。そのように演じることが出来るのは脚本の素晴らしさが第一にあると思うが。
「道は開かれている」
というセリフがこのドラマのテーマになっているが、最後の大石さんの言葉が何よりこのセリフを表していると思った。
私はプロデューサーの山口さんと仕事がしたかったから、直接連絡を入れてその気持ちを伝えた。そしたら山口さんから電話があって会うことになって、そのあと、この仕事に繋がった。そんな図々しいことをしていいのかと最近の子は言うけれど、それくらいしてもいいんです。しないよりはいいでしょう。
完全に聞き取れなかったけど、このようなことを仰った。「道は開かれている」というより「開くのだ」って感じだけど、行動を起こせば誰しもに道は開かれると言ってくれているような気がした。
大石さんのハキハキとした話し方や、開けっ広げなトークに、なんて素敵な人だろうと大好きになった。正直、ずっと見てた「大恋愛~僕を忘れる君と~」の脚本家とは思えない(良い意味で)。こんなサバけた人が、どうやってあんなに恋愛恋愛したものが書けるのだろう。ラブストーリーの名手にどうやってなったのだろう。大石静さんへの興味は尽きない。まずはもっと作品を見て勉強しないといけない。
20年前のドラマに関わった人たちで作品を語り合うのは素晴らしい企画だけど、実際は覚えていないことが多くて、みんな語るのが難しそうだなって思ってしまった。せめて10年前くらいだったもっと鮮明に語れるものなんだろうか。私なんて、5年前に出演した舞台のことも語れる自信はない。それが常に売れっ子の皆さんからしたら、流れるように作品に触れていくのだから、覚えている方が無理な話だろう。それでも楽しい話や裏話が聞けて、しかも無料だなんて、本当に素晴らしいイベントだった。