大人って
「大人はいいな。自由だから」
ある日突然、7歳の娘に言われた。
私からすれば、自由の塊のように天真爛漫な娘。好きなことは好き、嫌なことは嫌とはっきり言う。楽しそうに学校に行って友達と遊び、もっと楽しそうにゴロゴロと休日を謳歌している。そんな娘に言われたものだから、とてもびっくりした。
「なんで、自由だって思うの?」
娘と目線を合わせて聞いてみた。だけど娘は、
「え、だってママ自由じゃん。いいな!」
「何が自由に見えるの?」
「え、ぜんぶ!」
という具合で、全然分からなかった。
もしかしたら、セリア(100円均一)に行った帰りだったから、自分は1個しか買っちゃダメと言われたのに、私が3つ買ったせいかもしれないな、と思ったりした。
「大人になりたくない」
また別の日に、娘が言った。目に涙を浮かべていた。
スマホが欲しい、と突然言い出したから、「あなたが大人になる頃には、スマホよりもっと便利で楽しいものがあると思うよ」と返した直後だった。
この前自由でいいなと言ったばかりじゃないか、とまたしても驚いて、
「どうしてなりたくないの?」
と、背中をさすりながら聞いてみた。
そうしたら、
「だって、わたしが大人になると」
「うん」
「ママとおとうさんは、おばあちゃんとおじいちゃんになっちゃうでしょ」
「そうだね」
「そしたら、ママとおとうさん、しんじゃうでしょ」
「なるほど」
「だからやだ」
今度はちゃんと理由があったし、なんとも微笑ましい理由だったので、私は娘をぎゅっと抱きしめた。
「そうだね。じゃあもうちょっと、子どもでいてね」
そんなことを言い出したのは、最近、「おじいちゃんがしんじゃった」で始まる絵本『このあとどうしちゃおう』((ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)を読んでいたからなのだろう。
「死んじゃった後の世界は、きっとこうなっている」という内容のお話は、ユーモアもたっぷりで笑いながら読んでいたのだけど、子どもながらに「死」というものを考えてみたのだろう。こんな風に言われたのは、初めてだった。
でも、この本は、「死」を通じて、「生」を考える絵本だ。
「今度ママと一緒に、『生きてるうちは何しちゃおうノート』を書こうか」
と、本の内容になぞらえて娘に言ったら、娘はようやくにっこりと笑った。
「うん、書く! ママは、”BE:FIRSTに会いたい”って書くんでしょ? わたしも会いたい! あとはね…」
やりたいことをいくつも口にして、いつも通りの元気な娘に戻った。
その後、『このあとどうしちゃおう』を読んで、あっという間に寝息を立て始めた。
大人になりたいか、なりたくないか。
いいことも、悪いことも、それぞれたくさんあるけれど。
それらを全部ひっくるめて、ゆっくり大人になってほしいな、と思った。
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