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認知症の方の突然の暴言・暴力にどう対応する?

介護の現場では、認知症の方の突然の暴言や暴力に直面することがあります。普段は穏やかに過ごしている方が、急に怒ったり、大声を出したり、手を挙げたりする場面に遭遇すると、介護職員も驚き、戸惑うことがあるでしょう。

しかし、認知症の方が暴言や暴力的な行動をとる背景には、必ず何らかの原因があります。その原因を理解し、適切に対応することで、利用者さんの気持ちが落ち着き、安全で安心できる環境を作ることができます。

今回は、認知症の方が突然暴言や暴力をふるってしまう理由と、介護職員が落ち着いて対応するための方法について詳しくお話しします。

なぜ認知症の方は突然暴言や暴力をふるうのか?

認知症の方の暴言や暴力は、「BPSD(認知症の行動・心理症状)」の一つです。これは、本人の意思でコントロールできるものではなく、認知機能の低下や不安、混乱などが原因となっていることがほとんどです。
主な原因として、以下のようなものが考えられます。

1. 不安や恐怖からくるもの

  • 見慣れない人が近づくと警戒してしまう

  • 自分の置かれている状況が分からず混乱する

  • 知らない場所にいると感じて、怖くなってしまう

例えば、「あなたのことを知らない」と言われることがありますが、これは顔を認識する能力が低下しているためであり、決して相手を否定しているわけではありません。

2. 自分の気持ちを伝えられないストレス

  • 「何か伝えたいのに、言葉が出てこない」というもどかしさ

  • 「自分の思い通りにならない」というイライラ

  • 「なんで分かってくれないの?」という不満

このような感情が高まると、怒りの表現として暴言や暴力が出てしまうことがあります。

3. 身体的な不調や痛み

  • お腹が痛い、頭が痛い、便秘で苦しい

  • トイレに行きたいのに、どう伝えていいか分からない

  • 暑い・寒い・お腹が空いたなどの不快感

身体の不調を適切に訴えることができず、イライラが募って攻撃的になることがあります。

4. 環境や状況によるストレス

  • 施設のルールやスケジュールが理解できない

  • 知らない人や大きな音に驚く

  • 食事や入浴の時間が予想と違って混乱する

環境の変化に敏感な方は、予想外の出来事に対して不安を感じやすいため、それが暴力的な行動につながることがあります。

認知症の方の暴言・暴力にどう対応する?

では、実際に認知症の方が暴言を吐いたり、暴力をふるったりしたときに、介護職員としてどのように対応すればよいのでしょうか?

1. まずは落ち着くことが最優先
突然の暴言や暴力に驚くかもしれませんが、介護者が冷静でいることが最も重要です。

  • 大きな声で叱らない(興奮を助長してしまう)

  • 感情的にならず、一歩引いて対応する

  • 目を見て、落ち着いた声で話す

「どうしましたか?」「何か嫌なことがありましたか?」と、優しく声をかけるだけで、気持ちが落ち着くこともあります。

2. 安全を確保する
暴力がエスカレートしそうな場合は、まず自分や他の利用者さんの安全を確保しましょう。

  • 興奮している間は距離をとる

  • 後ろから近づかず、正面からゆっくり声をかける

  • 周囲に危険なもの(硬い物、鋭利な物)がないか確認する

特に、認知症の方が物を投げたり、叩いたりする可能性がある場合は、無理に押さえつけようとせず、一度距離を取ることが重要です。

3. 何が原因か考えてみる
暴言や暴力が出る前に、何か不安や不快感を感じていなかったかを思い返してみましょう。

  • 「お腹が空いていないか?」

  • 「トイレに行きたがっていなかったか?」

  • 「暑すぎたり、寒すぎたりしないか?」

小さな違和感に気づいてあげることで、次回の予防につながります。

4. 言葉を選びながら対応する
認知症の方は、「自分を否定された」と感じると怒りやすくなります。そのため、安心できる言葉を使うことが大切です。

  • 「大丈夫ですよ」「焦らなくてもいいですよ」

  • 「○○さんのお気持ち、分かりますよ」

  • 「一緒に考えましょうね」

このような声かけをすることで、安心感を与え、落ち着きを取り戻すことができます。

5. 環境を整える

  • 騒がしい環境は避ける(大きな音や人混みが苦手な方もいる)

  • 照明を明るすぎず、落ち着いた雰囲気にする

  • リラックスできる音楽を流す

環境を整えることで、不安や混乱を和らげ、暴言や暴力を防ぐことができます。

60歳から介護職を選ばれた方々へ

60歳から介護職を始められた皆さんにとって、認知症の方の暴言や暴力に対応するのは、最初はとても不安に感じるかもしれません。

しかし、大切なのは「本人が悪いわけではない」と理解することです。暴言や暴力は、認知症による症状の一つであり、「助けてほしいというサイン」でもあります。

また、一度の対応でうまくいかなくても大丈夫です。少しずつ経験を積みながら、「この方はこういうときに怒りやすい」「この声かけが安心できる」など、対応のコツが分かってきます。

焦らず、利用者さんと一緒に穏やかに過ごせる時間を増やしていくことを目指していきましょう。

まとめ

  • 認知症の方の暴言・暴力の原因は、不安やストレス、身体的な不調などが関係している

  • まずは介護者が落ち着き、安全を確保することが最優先

  • 優しく声をかけ、安心感を与えることが大切

  • 環境を整え、予防策を考えることでトラブルを減らせる

認知症の方が安心して過ごせるよう、一人ひとりに合った対応を心がけていきましょう!


介護職員たちが円になって座り、「最近の利用者さんの様子」について情報を共有しながら話し合っているシーン

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