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夜間の不穏や徘徊行動にどう対応する?

介護の現場でよく見られる問題の一つが、夜間の不穏や徘徊行動です。特に認知症の利用者さんに多く見られ、夜になると落ち着きがなくなったり、突然歩き出してしまったりすることがあります。こうした行動は、転倒や怪我のリスクを高めるだけでなく、他の利用者さんや介護職員にも負担をかける原因になります。

夜間の不穏や徘徊は、利用者さん自身が不安や混乱、身体的不快感を感じているサインでもあります。無理に止めたり叱ったりするのではなく、原因を探り、適切な対応を取ることが大切です。

今回は、夜間の不穏や徘徊行動への対応方法と、安心して過ごせる環境づくりのポイントをご紹介します。

夜間の不穏や徘徊が起こる理由

夜間の不穏や徘徊は、様々な原因が絡み合って起こります。まずは、なぜこのような行動が起こるのかを理解することが、適切な対応への第一歩です。

1. 認知症による混乱や記憶障害
認知症の方は、昼夜の区別がつきにくくなったり、場所や時間がわからなくなることがあります。そのため、夜になっても「家に帰らなきゃ」「仕事に行かなきゃ」といった思い込みから徘徊することがあります。

2. 不安やストレス
慣れない環境や体調の変化によって、利用者さんが不安や緊張を感じると、不穏な行動が現れることがあります。特に夜間は静かで暗いため、不安感が増しやすいです。

3. 身体的不快感(痛み、かゆみ、尿意など)

  • トイレに行きたいけれど言葉で伝えられない

  • 体のどこかが痛い、かゆい

  • 暑い・寒いといった環境の不快感

こうした身体的不快感が原因で落ち着きがなくなり、徘徊することもあります。

4. 昼間の活動不足
日中に十分な活動ができていないと、夜になってもエネルギーが余り、眠れずに不穏な行動が現れることがあります。

5. 薬の副作用
一部の薬(睡眠薬や抗精神病薬など)は、副作用として不穏や混乱を引き起こすことがあります。

夜間の不穏や徘徊に対する具体的な対応方法

夜間の不穏や徘徊に対しては、利用者さんの気持ちに寄り添いながら、安全を確保することが大切です。以下の対応を参考にしてみましょう。

1. 優しく声をかけて安心感を与える

  • 「どうされましたか?」「何かお手伝いしましょうか?」と優しく声をかける

    • 無理に止めるのではなく、相手の気持ちを受け止めることで、落ち着いてもらえることがあります。

  • 怒ったり叱ったりしない

    • 不安や混乱が原因のため、叱ると余計に興奮したり不安が増すことがあります。

2. 身体的不快感をチェックする

  • トイレに行きたいのではないか確認する

  • 衣服がきつくないか、体が痛くないかを確認する

  • 室温や湿度が適切か確認する(暑すぎたり寒すぎたりしないように)

3. 安心できる環境を作る

  • 部屋に馴染みのある物(家族の写真、好きな音楽)を置く

    • 「ここは安心できる場所」と感じてもらえるような環境作りを心がけましょう。

  • 薄明かりをつけて、真っ暗にならないようにする

    • 夜間の暗さが不安を増すことがあるため、優しい光を保つことで安心感を与えます。

4. 昼間の活動量を増やす

  • 日中に軽い運動や散歩、レクリエーションを取り入れる

    • 体を動かすことで、夜間の睡眠が深くなり、不穏行動を減らすことが期待できます。

  • 昼寝は短時間に抑える(長時間の昼寝は夜の睡眠に影響します)

5. ルーチン(決まった流れ)を作る

  • 毎日同じ時間に夕食や入浴、就寝を行うことで、生活リズムが整い、夜間の不穏が減ることがあります。

  • 就寝前のリラックスタイムを作る(音楽を聴いたり、温かい飲み物を飲むなど)

6. 福祉用具を活用して安全を確保する

  • 徘徊センサーやベッドセンサーを活用する

    • 利用者さんが立ち上がったり、ベッドから離れたときに職員がすぐに対応できるようにすることで、事故を防ぎます。

  • 転倒防止マットや手すりを設置する

    • 徘徊しても安全に移動できる環境を整えることが大切です。

緊急時の対応方法

万が一、転倒や事故が発生した場合は、落ち着いて迅速に対応することが重要です。

  • 怪我がないかを確認する(頭部を打っていないか、出血がないか)

  • 必要に応じて医療機関に連絡する

  • 再発防止のために、原因を分析し対策を考える

60歳から介護職を選ばれた方々へ

60歳から介護職を始められた皆さんにとって、夜間の不穏や徘徊対応は少し不安に感じることがあるかもしれません。特に、夜勤や夜間の見守りは体力的にも精神的にも負担が大きいと感じる場面があるでしょう。

しかし、一番大切なのは「利用者さんの気持ちに寄り添うこと」です。徘徊している利用者さんも、「家に帰らなきゃ」「どこかに行かないと」といった強い思い込みや不安を抱えて行動しています。そんなときに、**「どうされましたか?」「一緒にお部屋に戻りましょうか?」**と優しく声をかけるだけでも、安心してもらえることが多いのです。

また、職場の仲間と情報を共有しながら、無理をしない働き方を心がけてください。夜勤は一人で対応することが多いですが、事前にチームで話し合い、サポート体制を整えることで安心して業務に取り組めるようになります。

まとめ

夜間の不穏や徘徊行動は、認知症や不安、身体的不快感などが原因で起こることが多く、適切な対応が求められます。

  • 優しく声をかけて安心感を与える(叱らず、気持ちを受け止める)

  • 身体的不快感や環境の問題をチェックする(トイレ、室温、痛みなど)

  • 昼間の活動量を増やし、生活リズムを整える

  • 福祉用具を活用して、安全な環境を作る

小さな工夫と配慮を積み重ねることで、利用者さんが安心して夜を過ごせるようになります。ぜひ、日々の介護に取り入れてみてくださいね!


夜の介護施設で、布団で静かに休む高齢者を見守る介護職員。温かい光に包まれた安心感あふれる空間

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