第8話 もうヨーロッパ人じゃないの?イギリスの若者が屈した大英帝国のレガシー
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Holger Czukay 'Movie'
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フランスの美しい地中海に面するあのカンヌから南西120km走った海岸沿いにプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏ヴァール県のイエールという都市がある。2010年7月24日、私たちは真夏の爽やかな気候の中開催されたMIDIフェスティバルへ到着した。この日は私の誕生日であったのでツアーマネージャーからバースデーケーキがサプライズで用意されていた。キャンドルが点々と灯された雰囲気のある屋外席が出演者様に用意されていた。気候は地中海性気候だから夜になっても心地よく、ワインを片手にシンプルだがなぜか激ウマなフランス料理をいただいた。
アップ・アンド・カミングの若いアーティストがラインナップされたこのフェスティバルは仕事と言うよりかはフレンチ・リビエラでのオシャレな休暇と言った方が適切だった。当時まだデビュー前の私たちは数日ほどここで過ごせる時間の余裕があった。その時の記憶は「Call Me By Your Name」(君の名前で僕を呼んで)そのもので、あの映画はイタリアの避暑地が舞台なのだけれど、南ヨーロッパは西ローマ帝国の統治背景があるもんだから似ているのはもっともで、ヨーロッパの歴史深い美しい建築物と青年少女たちの耽美な青春と、重なり合う部分が沢山あった。(この映画は稀に見る傑作なので見てください!)確かこの時もイギリスからヴァンで来たと記憶する。他のヨーロッパのツアーやフェスティバルを経由しながら来たのだ。
2016年6月23日の国民投票の結果を受けて今年の2月1日にイギリスが正式にEUから離脱した。4年にも渡るすったもんだの序章がやっと終わったと言う感じで、この4年間はブレグジットの話題しかニュースに上がらなかった。
この時の開票結果に当時の保守党キャメロン政権もひっくり返ったし、たくさんのティーンズや若者が悲観に暮れているSNS動画が出回った。彼らは生まれた時からヨーロッパ人として生きてきたのだ。ロンドンに住んでいるとヨーロッパ圏の友達や同僚が必ずいるし、夏の休暇にはスペインへ行くのが中流階級のトレンドなのだ。英仏海峡トンネルから気軽に車を走らせるとフランスの美味しくて安いワインや食物が非課税で買ってこれる。ピザ屋さんやタパスバーなんかは20年前と比べ物にならないくらい本物の味に近いのはイタリア人やスペイン人が経営しているからである。近年のイギリスのご飯の美味しさ度アップはヨーロッパ内の自由交易の賜物だ。
そもそもEUは戦争が起こらないようにとヨーロッパ諸国が手を取り合って始めたもので、平和政策なのだ。それがどうして壊されたのかと言うとかつての大英帝国のプライドと言うレガシーだと思う。大昔の統治時代の名残がまだ残っている。まさにアジアに置ける日本みたいだ。自分たちは特別だという傲慢な中・高年層が多く、その傲慢さは怠惰さ、いい加減さを招き、最高にしくじってる事にはしっかりと目をつむって、ナイジェル・ファラージのような(UKIP党元党首)極右の政治家に煽られた不満をうまいこと利用されたのだった。
コロナでもしっかり、世界でも指折り、ヨーロッパーでも一番最悪なインパクトを被っている。イギリスの天狗ぶりで脆弱だったNHS(国民保険サービス)にひずみが行ったし、老人ホームでも見捨てられたと思う施設がたくさん出た。何も対応しないっていうのは神の子だとも思っているのかしらと思わせるほどのボリスの自信。結局コロナにかかってたし…。
大英帝国は、その全盛期には全世界の陸地と人口の4分の1を版図に収めた史上最大の面積を誇った帝国である。唯一の超大国と呼べる地位にあり、第一次世界大戦終結から第二次世界大戦までの間は、アメリカ合衆国とともに超大国であった。第二次世界大戦後、イギリスは超大国の地位からは離れ、各植民地を独立させることでイギリス連邦を発足させた。Wikipedia
EU離脱を支持したのは地方の中・高年保守層で、ヨーロッパ移民から職を奪われたと感じている人たちだ。有能でよく働く人たちだからね、そりゃ踏ん反り返って働かないイギリス人は競争には負けます。それに拍車をかける様に古き良き大英帝国を取り戻せ的な傲慢な人種差別者からは「中国は出て行け」と本気で言っているバカもいた。人間一人の性格を見ても奢りがあると成功できない。社会全体で見ると隙にしかならない。この隙をロシアや中国が狙っているのは分からぬのかね。
幸か不幸かこのコロナ禍で離脱問題が忘れ去られている。世界が一斉に止まってしまったからEU離脱がどう影響しているのかが見えにくい。
当初バンドはヨーロッパでのツアーが難しくなるだろうと言われていた。関税やビザの問題ができるわけだから、前の様に気楽にライブができなくなるのだ。イギリスのバンドがアメリカで成功しにくい理由はそうゆう壁が立ちはだかり、経済的に難しいという理由が大きくある。それが同じ様にヨーロッパに適用されようもんなら音楽文化は衰退していくのかしら。混ざるということは何事においても大事だと思います!
アルバムについて
ホルガー・シューカイ 「ムービー」1979年
この作品はドイツのクラウトロックバンド、カンのベーシストであるシューカイさんのソロアルバムの2枚めです。非常に心地よく狂っているアレンジメントで当時のプロダクションのクオリティーの高さを感じさせられる作品です。カンの繰り返しのグルーブや歪みとはまた違ったアプローチでシンセや綺麗目な上物が夜リラックスしたいときに聞きたい一枚だなと思います。楽曲の鳴りが美しすぎて、当時のアナログ機材はもちろん、楽曲に対してのアプローチも極上です。そうゆう面からピンク・フロイドのダーク・サイド・オブ・ザ・ムーンを彷彿とさせました。
肩の力がいい感じに抜けているし、キャッチーでポップな所も一押しです。3曲目のペルシアン・ラブは日本のウイスキーのCMにも80年代に使われたことがあるらしいです。