ウミガメのコンスピラシーと青い海のセオリー
表紙の写真は南シナ海の人工建造物を写真で撮ったものを使ってモザイク手法でウミガメを描いた。この紛争地域での建造物は人類の醜悪さ。ウミガメはプラ海洋ゴミに対するリベラル派の権化。イノセントに美しく写されたものも実は腐った欲や嘘で成り立っている事を表現した。
最近南シナ海での緊張についてのニュースを耳にした。そこではかつての島や環礁に、冷たいコンクリートの基地がいつの間にか建設された衛星写真が流されていた。なんちゅう事をするもんかねと、ロックダウン解除も目前のロンドンからまた再びバーチャル旅に出ることにした。今回は中国の南に広がり、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが囲む南シナ海へ。
各国が領有権を主張する南シナ海には海洋資源が詰まっている。石油やガス、そして美味しい魚たちだ。軍事的にも支配できれば他のアジア諸国がより近くなる。侵略するには超便利!
南シナ海にいくつかの環礁地帯が広がり、衛星写真で見てもよく分かるほど綺麗な所だ。島にはリゾート地もちらほら窺えるが、見つけた!灰色の直線でできた軍事基地は周りの海の青さと相反してかなり異様だ。まっすぐ機械的な滑走路や開口小さく、奥に深々と開いた港には船も見える。この建設でいったいどれだけの海の生物が犠牲になったのかと思うと心が痛い。
中国の軍事基地
亀の尻辺りのズーム
人間の経済活動は全て自然を破壊する所から始まっている。私は直接軍事基地を建てたのではないが、中国で作られた衣服を身にまとい、中国産の食品を食べ(間接的にでも)、アップル製品を使っているならば、私が建てたようなもんだ。グローバル化で日本は、世界は生産力を失った。今更避けようにも避けられないメイドインチャイナ。どうすりゃいいの?H&Mがんばれ!
そう、私はリベラル派。
私はEU離脱にも反対だし、トランプ率いる共和党にも賛成しない。自民党も今の日本の官僚も女性蔑視の方々ばかりで嫌になる。夫婦別姓や女系天皇・女皇や、格差問題に環境問題にウイグルの人権問題に爆発するくらいたくさんの問題があって、ただただ人に優しくできる世の中ができるにはどうすればいいのか?とグレタを賞賛し肉食をやめ、有機野菜を買い、中国産のものを避けてきたのに…騙しやがったな、このリベラルを装った偽善団体め!
Seaspiracy(sea=海、conspiracy=陰謀を合わせた造語)がNetflixから放送されると瞬く間に話題となった。プロデューサーは酪農の闇を暴いたCowspiracyのキップ・アンダーソンだ。カウスピラシーは私が肉食をやめたきっかけになった映画だから、ついに魚もやめる時が来たのかと腹を括って見たのだ。
映画は和歌山県太地町を舞台に始まる。イルカの追い込み漁を撮影するのだが、警戒が激しい。警察がホテルに張り込んでいたりととてもじゃない民主主義の国とは思えない。中国や北朝鮮で撮影されているんじゃないかと信じたかったが、聞こえてくるのは懐かしの日本語だった。酷い。日本でイルカを食べるなんて聞いたこともない。なぜイルカを殺すのか。その理由がが、イルカによる魚の乱獲を防ぐ為という大義名分があったなんて…。
そして高級食材フカヒレの無惨な捕獲過程と続き、ここまでは、ああ、知ってる、知ってると許容範囲内。マイクロプラスティックね、それも知ってる。乱獲で漁獲量が減っているんでしょう?それも知っている、だから私絶滅危惧されていない魚をいただけばいいし、サスティナブルな保証の付いたお魚や、養殖ものを買ってるの。え?それがサスティナブルでないって?!
ラベルの発行元に聞いた。
「海の上で漁船が本当にルールを守っているのか分かりません。その監視も十分にできるものではありません」
イギリスでは昨今の海洋資源問題において、シーフードには「sustainably sourced」というラベルが付いている食品がある。環境を考えて捕獲されていますという安心材料として使われている。
私たちが海洋資源問題に貢献したいと思って手に取るサスティナブルのラベルのついたお魚は、リベラルの顔をした団体が金儲けの為に発行している、実に邪悪なものだった。そして何よりも、国を絡めて世界規模で乱暴な地引網漁などで、お魚と一緒に大量に捕獲される商業価値のない、ありとあらゆる生物(イルカ、さめ、ウミガメ、エイなど)を殺戮し破壊している事実を全力で伏せている、国を支える漁業の為に。タイに至ってはマフィアが関わり奴隷や人身売買や殺人も含めた犯罪が行われている。タイ産のエビをスーパーで見た事もあるし食べた事もある。映画の中ではブラッド・シュリンプと呼ばれていた。私もそうするとタイの殺人に一役買ったことになる。
アフリカの昔ながらの小さな漁村はヨーロッパやアジアから来る大きなオートマ化した漁業に太刀打ち出来ず、漁業を離れる。そして食料を求めて内陸へ入る。ブッシュミートは言わずと知れずエボラやコロナのような新しい病気の根源だから、またいつどんな病気が動物から飛んでくるのか分からない。このエピデミック、もしくはパンデミックがアフリカや中国での遠い話ではなくなったは周知の事だろう。そしてこの問題の起源や要因においても、これはグローバルに世界が、もっと言うと、先進国が引き金になっている事を私たちは知らなければいけない。
リベラル派が眉をひそめるプラごみ問題。海に浮かぶたくさんのプラごみの大半はフィッシュネットなど漁業関係のもの。海洋に浮遊するネットは破棄されてからもたくさんの命を意味もなく奪う。私たちが一生懸命、紙ストローにしたり、レジ袋やめたり、ペットボトルの非買運動したり、環境大臣の進次郎さんがコンビニのスプーンとフォークを有料にするとか得意に言ったりするのも海洋プラごみ削減の1%にも満たない。いやいや私たちの意識から変えていきましょうよなんて実に綺麗だ。ふと武田邦彦教授のプラストロー鼻ぶっ刺しウミガメや地球温暖化はリベラル派の金儲けに使われているとする陰謀論を豪語していたことを思い出した。
鑑賞中、久しぶりに軽くパニックアタックに襲われた。動機がしてめまいがした。だってこの状況から世界がすぐに変わるなんて奇跡は絶対に起こらないから。日本の寿司は世界中で流行っているし、健康志向な西洋人が魚介の消費量を近年加速させている。日本人だって昔からお魚を食べてるんだから、そんな魚が居なくなることなんて想像もつかない。悪い事をしているなんて一ミリも思わない。呑気に「今年は秋刀魚の水揚げ量が少なく値上がりした」と言っていたっけ。ワイドショーは中国船のせいにしていたなぁ。農林水産省は本当の事実を知っていて、しめしめと思っているのかしら?漁業によって減少した海洋生物のデータは把握していない(調査していない)と言って済ませるのか?または管轄外と言って逃れるのか?
地球の生物の80%が海に住んでいるらしい。その生物が死滅したら一体どうなるか?万物はお互いにバランスを取り合って生きて来た。そのバランスが崩れた時に種は絶滅の危機に直面する。たくさんの種がすでに絶滅してる。私たちの番は一体いつなんだろうか?マッドマックスみたいな食糧難で殺しあう世界が先進国にも来るのだろうか?
映画では2048年問題が言及されていたが、それについては提唱した科学者の間違いが発覚したらしい。それでも2079年だか何だかという新しい年が発表され、海がカラになる日まで人間は愚かに「マグロがもう貴重品だね」なんて言いながらゆっくり滅びて行くんだろうか。その頃には私は死んでる。ああ、よかった、すっかり死んでいるわ!
私はその日まで、ただ、その悪事の一味とならぬように、気持ちよく朝が迎えられるように、スーパーに並ぶ、どのようにして捕獲されたか分からないお魚を買って食べないことにした。需要が減れば供給も減る。肉食と一緒で、売れなければスーパーは別の物をストックする。数年前とは格段に種類の増えた植物性食材コーナーがそう証明している。そうなると漁も減るだろう。私たち個人の力は小さすぎて全く意味がないと思われるかも知れないが、私たちの消費癖が世の中を変えてきた歴史がある。
映画ではシーシェパードの創立者ポール・ワッツソンの言葉が印象に残る。破壊された自然を直す唯一の方法は、人間が自然を放っておく事。彼は文字通り体を張って戦っているのですが、私たちはそんなことはしなくてもよい。私たちができる事はまず知る事。そしてどのように関わっていくかは一人一人で考えればいいかなと思う。
これはシースピラシーが掲げる世界をより良い方向へ変えるための署名運動です。イギリスをはじめ、世界のリーダーに、2030年までに海洋において漁業しない地域を30%に定める事を要求しています。人間が立ち入れないサンクチュアリを作ることはとっても重要。自然公園など陸地ではありますが、海洋においてはイギリスの現状では4%に留まっているようだ。
ページには彼らの思いが英語で書かれてあります。日本語にすぐ翻訳してくれるのかわかりませんが、コピペで簡単にできると思うので、読んでみてください。