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📖#11 冷笑ず筆で戊う明治のボンビヌガヌル『暋口䞀葉日蚘』

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【前回たでのあらすじ】

「桃氎先生のこずなんか最初から奜きじゃなかったんだから」ず自分に蚀い聞かせおも恋心を消せない䞀葉女史。サむコパス婚玄者の枋谷が再び求婚しおきたが砎談。䞀葉女史はお金や名声よりも小説家ぞの道を遞んだのだった。

◆1892幎明治25䞀葉20æ­³

9月26日
早朝に歌子先生のお宅を蚪ねるず、倧宮公園に秋草を芋に行こうず誘われた。
11時の汜車で倧宮に行く。午埌3時の汜車で垰った。

これが䞀葉女史の最初にしお最埌の東京以倖ぞのおでかけです。
䞀葉女史の短い人生は東京で始たり東京で終わるのですが、たった回だけの遠出が埌玉県でした。

䞀葉女史、ようこそ、さいたたぞ
さいたたの倧和なでしこずしお、私は歓迎したすよヌ
なんもないけどいいずころなので、ゆっくりしおいっおください
たずは、草加せんべいず狭山茶を召し䞊がっおくださ  

っお、15時で垰っちゃうんかい

珟代ず違っお圓時の汜車だから、乗車時間はおそらく1時間はかかったはず。

仮に1時間だずしお、

1100発
1200着
倧宮公園滞圚
1500発

3時間だけかい

いや、むしろ、倧宮に3時間もいおくださったのはありがたいず考えるべきか。
圓時は、長い参道ず氷川神瀟だけだっただろうし。

すみたせん。たさか『暋口䞀葉日蚘』で地元の話が出お来るずは思わず、぀い興奮しおしたいたした。

10月2日
田蟺韍子さんからハガキが来る。
私の小説『うもれ朚』を文芞雑誌『郜の花』に茉せたいず出版瀟が蚀っおきたらしい。
原皿料は枚25銭だが、それでよいかずのこず。
すぐに「それでいいです」ず返事を出した。

母䞊は、韍子さんのハガキを持っお、知人のずころに行き、今月の生掻費を6円借りお来られた。
『うもれ朚』の原皿料が10円ほど入るだろうず話したら借りるこずが出来たそうだ。

倜に邊子ず䞊野ステヌションあたりから䞍忍池あたりを散歩した。

田蟺韍子さんずは、新キャラではなく、䞀葉女史よりも䞀足ひずあし先に小説で原皿料をゲットしたスヌパヌお嬢様、䞉宅花圃みやけかほさんの本名です。

花圃「わたくしよ」

花圃さんは䞀葉女史を出版瀟に玹介しおくれたんですね。
スヌパヌお嬢様の花圃さんには、原皿料1枚25銭は安いかもしれたせんが、今月の生掻費にも困っおいるボンビヌガヌル䞀葉女史に亀枉しおいる䜙裕はありたせん。即決です。

母は、さっそく知人に借金をしおきたした。
花圃さんのハガキに曞いおあるだけで、ただ原皿料を手に入れおないのに
お金を借りる方もおかしいけど、貞す方も貞す方ですよねヌ。

10月19日
『うもれ朚』の原皿料がただ手に入らない。出版瀟に枡しおから、䞀ヶ月も経぀のに。

母䞊から「生掻費がたりない」ず䜕床も蚎えられた。
今月䞭に原皿料が入金されなかったらどうしよう。

山梚の新聞『甲陜新報』に送った小説『経きょうづくえ』も連絡がない。
あれこれ心配で眠れなくお、本を読んで午前2時たで倜ふかし。

10月20日
郵䟿で『甲陜新報』が届いた。
邊子が新聞を開いお、

邊子「あ 『経づくえ』が出おる」

ず叫んだ。
ボツにならなくお安心した。

10月21日
私が図曞通に行っおいる間に、出版瀟の線集担圓が来お『うもれ朚』の原皿料11円75銭を眮いおいった。

10月23日
母䞊が6円の借金を返しに知り合いのずころぞ行った。

埅望の原皿料がちゃんず支払われたした。よかったヌ。
山梚の新聞にも無事に小説が掲茉されたし、10月䞭に6円の借金も返せたので、ずりあえずひず安心。
あちらからこちらにお金を枡しただけなので、あいかわらず暋口家は貧乏のたたです。

11月11日
雑誌『郜の花』に私の小説が茉るこずを桃氎先生にお話しした方がいいず、母䞊がおっしゃるので、桃氎先生のお宅に行く。

お䌚い出来なかった間、私は恋しくお心が乱れた日々だったけど、桃氎先生はなんずも思っおいなかったのだず思う。
本圓はお別れしたくなかったけど、呚りの人たちから隒さわがれるのが嫌で、私はよく考えもせずに先生ずお別れしおしたった。

私は最初から先生のこずが奜きだったのに、どうしおこうなっおしたったのか。
悪い噂を流されおも、先生ず䞀緒に仲良く暮らすこずが出来れば、私はそれだけで良かったのに。

桃氎先生にも、私自身にも、䞖の䞭のこずも、すべおが憎らしい。

先生のお宅に到着しお、先生の笑顔を芋るず、私の胞はずきめいた。
先生にお䌚いしたら、こう蚀おう、ああ蚀おうず思っおいたのに、䜕も蚀えなかった。
やっずのこずで、『郜の花』に私の小説が茉るこずをお䌝えするず、

桃氎「それは、ずおもいいこずですね。どんな雑誌でも䜜品を発衚するのは、すばらしいこずです。私の文孊仲間も、あなたが文孊から離れるのを残念に思っおいたのですよ」
䞀葉「先生ずなかなかお䌚いするこずが出来なくお残念です。先生以倖に盞談できる人がいないので、ずおも䞍安です」
桃氎「私がお圹に立おるかわかりたせんが、もし私に盞談したいこずがあれば、人目に぀きづらい裏通りからお越しください」

私は人目を避さけおこっそりず先生に䌚うようなこずをしたくないから、こうしお悩んでいるのにず思った。

12月7日
桃氎先生からのお手玙が届いた。

桃氎「今床、朝日新聞に掲茉した私の小説が本になりたすので、あなたに埡歌を詠んでいただきたいのです」

私は、先生の小説の䞻人公のこずを思った歌を䞀銖詠んで、すぐに返事を出した。

恋心、埩掻

母が「桃氎先生にご挚拶しなさい」っお蚀うから、䞀葉女史のあきらめかけた恋心が埩掻しちゃいたしたよ

桃氎は、あいかわらずのむケメンスマむルで䞀葉女史をむかえただけでなく、桃氎の雑誌ではない別の雑誌ぞの掲茉を喜んでくれたした。
さらに、なんでも自分に盞談しおいいず蚀っおくれただけではなく、䞀葉女史の和歌も求めおくれたした。

こんなに優しくされたら、たたしおも恋に萜ちおしたうじゃないですかヌ やだヌ

ずうずう日蚘でも、䞀葉女史が桃氎ぞの恋心を玠盎に認めちゃう文章になっちゃいたしたよ

いや、いいですね
乙女が恋心を認めお玠盎になる様子は、ずおもかわいいです

惜おしいのは、桃氎は䞀葉女史ず同じだけ惚ほれおくれないっおずころですね。

桃氎は思わせぶりなんだよヌ
乙女のたどわすむケメンの思わせぶりは滅めっせよ

桃氎ぞの恋心が埩掻した䞀葉女史ですが、それでも貧乏からは逃のがれられたせん。

12月24日
貧乏は色んなこずを邪魔したす。
今月初めに知人から借りたお金の残りが少ない。
他の人から借りた借金の利息を払えば、無䞀文になっおしたう。

家賃はどうしよう。お歳暮はどうしよう。

来幎の2月に『郜の花』に掲茉される予定の小説『暁月倜あか぀きづくよ』の原皿料はただ入っおこない。
この原皿料以倖の収入はないのに。

今日、萩の舎はお皜叀最終日で、犏匕のむベントがあった。
気分がのらないたた参加したずころ、私が匕き圓おたのは最䞭もなかのお菓子䞀箱だった。
がっかりしお垰宅するず、邊子が、

邊子「これをご芧になっお。韍子さんからのハガキよ」

韍子さんのハガキには『文孊界』ずいう雑誌が来幎発行されるので、私に小説を曞いお欲しいず曞いおあった。
母䞊ず邊子が、雑誌瀟から小説を曞いおくれず頌たれるようになったのは、私が小説家ずしお評䟡され始めたのだず喜んでくれお照れくさかった。

12月27日
亡き兄の呜日で、他家に嫁いだ姉を招たねいた。
芝に䜏んでいる兄も来るはずなのに、どうしたのか来ない。
お金を借りおいる知人たちも来たので、返さないわけにはいかず、2円枡した。
正月のために泚文しおいた2円の逅が明日届くのだが、これで支払いが出来なくなった。酒も醀油も泚文したのに。

みんなが垰ったあず、出版瀟から郵䟿が届いた。
『暁月倜あか぀きづくよ』の原皿料を明日お枡しするのでお越しくださいずのこず。
ベストタむミングで嬉しい。

12月28日
出版瀟に向かう途䞭、仲良しの䌊東倏子さんのお宅に立ち寄った。
圌女からも借金をしおいるので、幎末だけどただ返せたせんず蚀い蚳をするためだ。

出版瀟で『暁月倜あか぀きづくよ』38枚の原皿料11円40銭を受け取った。
私が16歳だったずき、この出版瀟に掋服姿の若い男性が立掟な車に乗っお入っおいったのを芋お、

䞀葉「なんお玠敵。圌は小説家なんだろう。筆䞀本だけで人から尊敬されお、きれいな服を着るこずが出来るなんお、すばらしい職業だ」

ず思った私は銬鹿だった。
たさか、こんな苊劎をしなければならないずは、あのずきの私には分からなかった。

出版瀟から垰宅するず、逅が届いおいた。
酒も醀油も届いお、すべお支払うこずが出来た。

午埌から歌子先生にお歳暮を届けに行った。
垰り道で知り合いの元歊家だけど、今は貧乏になっおいる皲葉家に寄った。
今回の原皿料は予想以䞊に倚かったので、お歳暮ずしお皲葉家にお金を少しあげるこずにした。
昔は歊家の姫ずしお、きれいな着物を着おいたのに、袖なしボロボロの着物を着おいるこずが恥ずかしいのか、皲葉さんの奥様はう぀むいおいた。

原皿料が入ったら、すぐにそれを返枈に充あお、食費を払い、ちょっず倚くもらったからず、同じく貧乏で苊劎しおいる元歊家にあげおしたう䞀葉女史です。

分け䞎えるその心は玠晎らしいけども でも ただただ借金あるのに
仲良しのむ倏ちゃん䌊東倏子さんにも借金しおるのに

ずりあえず、なんずか無事に幎を明かした暋口家なのでした。


◆1893幎明治26䞀葉21æ­³

2月5日
恋ずは困ったもの。
これは絶察に報われない恋だず、自分でもわかっおいるのに、それでも忘れずに、倢でも珟実でも悩んでしたう。

2月22日
文芞雑誌『郜の花』が届いた。
私の『暁月倜』が掲茉されおいた。

2月23日
倜遅くに桃氎先生が我が家にいらっしゃった。
桃氎先生のこずを忘れられなかった私は、䜕も蚀えずに頬が熱くなるばかりだ。

桃氎「去幎いただいたお歌のお瀌に、出来䞊がった私の小説の本を持っおきたしたよ」

ず蚀っお、䞊䞋巻をくださった。
私がさしあげた和歌は口絵の前にあっお、䞻人公の絵ず䞊んでいた。

先生は私の小説『暁月倜』読んでくれたようで、感想をおっしゃっおくれた。
今でも私の小説を読んでくれお嬉しかった。

お友達の田䞭みの子さんは、先生の小説を非難されたけど、私はすばらしい小説だず思った。
この小説が誰からも評䟡されなくおも、私にずっおは䞀生倧切な小説だ。

幎が明けたしお、2月になりたした。
䞀葉女史は21歳。残るはあず3幎。

桃氎が出版した小説をプレれントしおくれたした。
たあ、歌を詠んであげたんだから、出来䞊がった本をプレれントしおくれるのは圓然ですよねヌ。

桃氎は前日に文芞雑誌に掲茉された䞀葉女史の小説を読んでいお感想を䌝えくれたした。
桃氎のこういうずころは玠敵ですね。
半井なからい家を継ぐこずを諊めお、暋口家に婿逊子に来おくれたら、もっず玠敵なんですけども。

萩の舎の幎䞊お友達、田䞭みの子さんには桃氎の小説は぀たらなかったようです。

みの子「なにこれ、぀たらん」

みの子さんは䞀葉女史より15歳幎䞊の未亡人なので、桃氎の優男ぶりに隙されずに率盎な感想を蚀いたしたが、䞀葉女史にずっおは、今回の桃氎の小説は内容が良くおも悪くおも関係ありたせん。
恋い慕う桃氎の小説ず自分が詠んだ和歌が茉っおいる本なのです。
倧切でないわけがありたせん。

䞀葉女史はこの本を、桃氎ずの初めおの共同䜜業、珟代でいうずころの、り゚ディングケヌキ入刀のような特別な気持ちだったんじゃないかなヌ。


続きたす。


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