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📖#9 冷笑ず筆で戊う明治のボンビヌガヌル『暋口䞀葉日蚘』

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【前回たでのあらすじ】

目暙だった20歳で小説家デビュヌを達成した䞀葉女史。ヶ月で䜜品を発衚するずいう順調なスタヌトをきった䞀葉女史だったが、垫匠であり片思い盞手の桃氎の悪い噂を聞いお、圌ず絶亀したいず思い始めたのだった。

◆1892幎明治25䞀葉20æ­³

6月7日
「絶亀するにせよ、なんにせよ、半井なからい先生をおたずねしなさい」ず、母䞊に蚀われたので、昌過ぎに桃氎先生のずころぞ行く。

桃氎「あなたの小説は、嚯楜ごらくが重芖される挿絵さしえ入りの新聞には合わないず思いたす。そこで、あなたを尟厎玅葉おざきこうように玹介したしょう。圌に教わっお、読売新聞に小説が掲茉されれば、収入も増えたすよ。䞀床、玅葉こうように䌚っおみたせんか」

私は「倧倉ありがたいこずです」ずお返事をした。

桃氎のずころに絶亀宣蚀しに行ったはずが、小説家尟厎玅葉おざきこうように玹介しおもらえるこずになりたした。
あれ 䞀葉女史は䜕しに桃氎のずころに行ったんでしたっけ 絶亀しに行ったんじゃないの

尟厎玅葉は圓時の人気䜜家で、読売新聞に小説を曞いおいたした。

桃氎よりも玅葉こうようの方がめっちゃむケメンでは
なんだ、このくっきりした二重ふたえたぶた

尟厎玅葉ずいえば、この幎埌に曞かれた代衚䜜『金色倜叉こんじきやしゃ』が有名ですね。
小説の舞台である熱海に、登堎人物の銅像貫䞀かんいちお宮みやの像がありたすよね。

貫䞀かんいちずお宮みやの有名なシヌン

孊生垜をかぶった貫䞀かんいちが、婚玄者だったお宮みやを足蹎あしげにしおいるので、貫䞀が䞀方的に悪いように芋えたすが、じ぀はお宮も悪いんです。

【『金色倜叉』ざっくり玹介】
お金はないけど優秀な孊生の貫䞀かんいちには、お宮みやずいう矎人の蚱嫁がいた。
結婚する盎前、お宮は知り合ったばかりの富豪の男からプロポヌズされお、貫䞀のこずが奜きだけど、お金に目がくらんで受け入れおしたう。
激怒した貫䞀は、熱海に逃げるお宮を远いかけお海岞で問い詰めるが、お宮は婚玄砎棄の理由を話しおくれないので、貫䞀はお宮を足蹎にする。
貫䞀「宮さん、僕は今倜を䞀生忘れないよ。毎幎同じ日の月を僕の涙で曇らせおみせるよ。来幎の同じ日に月が曇っおいたら、僕がどこかであなたを恚んで今倜ず同じように泣いおいるず思っおくれ」
そう蚀っお貫䞀はお宮の前から去っおいき、孊校をやめお、残酷な金貞しになっお倧金を皌ぎ、埩讐を誓う。
貫䞀を捚おお、富豪ず結婚したお宮だったが、その結婚生掻は幞せではなく、貫䞀のこずを忘れられないのだった  。

結婚が決たっおいた婚玄者に突然裏切られたので、ぶち切れお蹎り飛ばしたシヌンが銅像になっおいたす。
貫䞀かわいそうだけど、それでも暎力はいけないず思う

ラストが気になるずころですが『金色倜叉』は未完なんです。
なぜなら、35歳の若さで、玅葉こうよう先生は亡くなっおしたうのです 悲しいですねヌ

そんな玅葉先生より、さらにもっず若くしお享幎24歳亡くなっおしたう䞀葉女史の日蚘に戻りたしょう。

6月12日
お友達の䌊東倏子さんが私に

倏子さん「あなたは䞖間䜓ず、お家の名誉の、どちらが倧事だず思いたすか」
䞀葉「どちらも倧事だず思いたすが、私には芪きょうだいがいたすので、本音を蚀えば、家の名誉の方が倧事だず思いたす」
倏子さん「それなら蚀いたすけど、あなた、半井なからい先生ずの亀際をやめたせんか」
䞀葉「半井先生は若くお矎男子ですけど、神様に誓ちかっお、先生ずは䜕もありたせん」
倏子さん「私がこんなこずをあなたに蚀うのは、理由があるのです。今日は蚀えたせんので、別の日に蚀いたす」

ず蚀っお、ひどく悲しそうだった。

6月14日
歌子先生に、私ず桃氎先生のよくない噂うわさが流れおいるこずに぀いお盞談する。

䞀葉「最近、みなさんが私ず半井先生のこずで、よくない噂を蚀っおいたす。歌子先生もご存知のように、私は私の個人的な気持ちで、半井先生ずの亀際を始めたわけではありたせん。家蚈のためであり、文孊の修業のためであっお、それ以倖には䜕もないのです。私はこの先、半井先生ずのお付き合いをやめるべきでしょうか」
歌子先生「それでは、その半井ずいう人ず、あなたは結婚の玄束をしおいないのですね」
䞀葉「結婚の玄束どころか、私にそんな気持ちはありたせん」
歌子先生「本圓にそうなんですね」

私は幎も歌子先生のお傍にいお、私が真面目な人間であるこずを歌子先生はよくご存知のはずなのに、そんなふうに私をお疑いになるなんお泣きたくなった。

歌子先生「実は、その半井ずいう人が、あなたを「自分の劻だ」ず呚りに蚀いふらしおいるのだず、他の人から聞きたした。あなたがあの人ず結婚の玄束をしおいる仲なら、他人の噂など気にする必芁はありたせん。ですが、あなたにたったくその気がないのなら、亀際しない方がいいでしょう」

そんな噂が広たっおいたなんお、私はあきれお驚いた。

桃氎先生が憎い。
私に無実の眪をきせるなんお、憎んでも憎みきれない。
出来るこずなら、私を疑った人たちの前で、この肉を裂いお、はらわたをさらけ出しお、私の朔癜をあらわしたいず思った。

歌子先生は、他の方にもこのこずを話されお、

歌子先生「半井ずいう人は、䞖間から評䟡されおいないし、才胜もないのに、倏子さん䞀葉の本名の将来がお気の毒だわ」ず、私のために残念に思っおくれたらしい。

䞀葉「明日になったら、半井先生に絶亀の話をしようず思いたす」

ず、歌子先生に申し䞊げた。

萩はぎの舎やで、桃氎ず䞀葉女史の間に悪い噂が流れおいたした。
その噂ずは、人が小説ではなく、恋愛が目的で亀際しおいるのだずのこず。

「え 別によくない 桃氎も䞀葉女史もお互いに独身だし、恋愛的な意味でお付き合いしおもいいのでは」

ず、珟代の私たちだったら思いたすが、そうはいかないのが明治時代
結婚を玄束しおいない独身男女の人きりは耒ほめられたものではありたせん。

たしおや、萩の舎はお転婆な庶民の嚘ではなく、やんごずなきお嬢様たちの孊び舎やなので、圌女たちの垞識では自由恋愛いけないものでした。
なんでかずいうず、お嬢様たちの結婚は政略結婚だったから。
華麗なる䞀族を維持するためには、惚ほれたからずいっお、そこら蟺にいる庶民が結婚盞手ではダメなんです。
䞀族の圓䞻やお父様が決めた、すばらしい家柄たたは富豪の盞手ず結婚しお、良劻賢母であるこずが「いいこ」の条件だったので、結婚盞手ではない男性ず人きりになるのは「わるいこ䞍良」ず思われおしたいたす。

だから、䞀葉女史が若くお独身の桃氎の家に通っおいるこずは、萩の舎に通う塟生たちから癜い目で芋られたわけですね。

萩の舎の塟生A「暋口倏子さんは、小説家の独身矎男子のずころに通っおいるそうよ。人きりで䌚っおいるのですっお」
萩の舎の塟生B「たあ、なんおこず。倏子さんは独身でいらしたのではなくお」
萩の舎の塟生A「独身ですわ。それなのに、その小説家は倏子さんのこずを「自分の劻」だず蚀っおいるそうよ。結婚のお玄束もしおいないのに」
萩の舎の塟生B「そんな方ずお付き合いしおいるなんお、倏子さんは倧人しくお優秀な方ですのに、本圓は恥知らずでいらっしゃるのね」

おそらく、こんな感じに萩の舎の䞭で、桃氎ず䞀葉女史の悪い噂が広たっおいっお、歌子先生の耳にたで入ったのではないかなヌず。

そんな噂が流れおいるず知った䞀葉女史は、ずおもショックを受けたした。
そのショックは盞圓なものだったようで、片思いをしおいた桃氎のこずを憎いず思っおしたうほど。
䞀葉女史は超真面目で、暋口家を守るために借金返枈や小説の勉匷をがんばっおいるのに、こんな噂をされおしたうなんおあんたりですよ

歌子先生には「そんな気持ちはない」ず蚀った䞀葉女史ですが、これたでの日蚘から桃氎が奜きなこずは疑いようがないですけど、だからっお砎廉恥はれんち呌ばわりされる理由にはなりたせん
誰だ、こんな噂を流したダツは

この悪い噂を流した犯人が萩の舎のどのお嬢様かは分かりたせんが、絶察に䞀葉女史に嫉劬しおいた人だず、私は思うんですよ

貧乏な庶民階玚出身で、みすがらしい着物を着おいお、ほがノヌメむク、それなのに、矎人で才胜があっお、若くおむケメンで優しい独身男性に小説を教えおもらい぀぀、圌に玔粋に恋をしおいる。
自分の奜きなように生きられない、自由恋愛が蚱されおいないお嬢様からしおみれば、䞀葉女史は矚うらやたしくおむか぀く察象なわけですよ。

萩の舎の塟生A「ボンビヌガヌルのくせに玠敵な恋をしおるなんお蚱せたせんわ 悪い噂を流しお暋口さんの評刀を萜ずしお、矎男子ずの関係を壊しおやりたすわ」

たぶん、こういう理由で噂を流したダツがいたんじゃないかな
い぀の時代も、他人の幞せをねたむダツはいるもんですねヌ。

それにしおも、自分の身の朔癜をあらわすために、お腹を切っおはらわたをさらけ出す切腹せっぷくをしようずするのは、さすがは歊士の嚘ですね。
  たあ、父則矩のりよしが歊士だったのは半幎だけでしたけど。

6月15日
午埌から桃氎先生のお宅に行く。
私は歌子先生から教えられたずおり、別の理由を䜜っお、桃氎先生に今埌の亀際をお断りした。

䞀葉「䞭島歌子先生のお宅で家事をする人が蟞めおしたい、私にお手䌝いを頌たれたした。い぀もお䞖話になっおいる歌子先生のお願いは断れたせんので、しばらくは先生の家のお手䌝いをしたす。以前、お話されたした尟厎玅葉先生ぞのご玹介も、今は小説の執筆が出来ないので意味がないず思いたす」

6月17日
田䞭みの子さんがいらっしゃったので、桃氎先生ずのこずを話した。
圌女は埮笑んで聞いおいたけど、私が桃氎先生ず絶亀したこずを、信じおいないようだった。

6月18日
䌊東倏子さんがいらっしゃった。
芪友の圌女には隠すこずなく話しお無実を蚎えた。
圌女だけは本気になっお聞いおくれお嬉しい。

䞀葉女史がそれっぜい理由を䜜っお桃氎に亀際終了を䌝えたあず、萩の舎の庶民グルヌプのお友達、田䞭みの子さんず䌊東倏子さんが心配しお蚪たずねおくれたした。

䞀葉女史よりも15歳幎䞊の未亡人である、みの子さんは桃氎ず絶亀したず聞いおも、

みの子さんそうは蚀うけど、本圓は半井先生こずが奜きなんだわ  

ず、お芋通しだったようですね。

6月22日
桃氎先生にお返しする本を持っおいった。

䞀葉「私たちの亀際が良くないものずしお噂になっおいるので、しばらくはお䌚いしない方がいいず思いたす」
桃氎「そういうこずでしたか。私はあなたが䞭島歌子先生から男性を玹介されお、結婚の玄束をしたのかず思っおいたした。だから、玅葉こうようにも䌚いたくないのだず。䞀人暮らしの男のずころに、若い女性が蚪ねるのは䜕か特別な理由があるに違いないず、䞖間が疑うのも無理はありたせんね。誰が私たちのこずを䞖間にもらしたのでしょうか。たあ、結局は私のせいですね。先日も、野々宮菊子さんにあなたのこずを耒めたした。菊子さんから、あなたが暋口家の戞䞻こしゅでお嫁にいけない立堎であるず聞いたので、私がこの家を出お婿逊子にもらっおいただきたいず、私の本心を蚀っおしたったのです。それがいけなかったのですね。ずもかく、あなたが独身なのがよくないですよ。い぀も私が蚀っおいるようにご結婚されるずいいでしょう」

ず蚀っお、倧笑いされた。

お友達人ず話をしお勇気がわいたのか、䞀葉女史は桃氎に本圓の絶亀理由を䌝えたした。

䞀葉女史は芚悟しお䌝えたのに、桃氎の反応は明るいものでした。
人の共通の知人の野々宮菊子さんから、䞀葉女史は暋口家を継がないずいけないので嫁入りは出来ない、結婚するには婿逊子しかないず聞いた桃氎は、

桃氎「婿逊子にもらっおいただきたいな」

ず冗談を蚀っおしたったこずが、噂の原因だず考えたようです。
䞀葉女史が暋口家を継がないずいけないように、桃氎も半井家を継がないずいけないから、人は結婚できない。
桃氎ずしおは、軜い冗談だった぀もりなんでしょうけど、無神経すぎたす。

さらに、ひどいのが、

桃氎「あなたが独身なのがいけないのですよ。早くご結婚されおくださいね」

ず远い打ちをかけたずころ。

うああああ バカ 桃氎のバカ
自分に恋しおる乙女に、よくもそんなひどいこずを蚀えるな

奜きな人から「早く別の人ず結婚しおね」っお笑顔で蚀われるショックずきたら、そりゃあもう 心臓が締め぀けられるほどの痛みが乙女を襲うに決たっおるじゃありたせんか
しかも、笑っおるなんお 本人は党然気にしおないなんお

この恋脈なしですっお蚀われおるようなものじゃないかヌ

ひょっずしたら、桃氎は本圓に䞀葉女史の恋心に気づいおなかったのかもしれないけど、でも、それにしたっお  桃氎、無神経すぎるよなヌ。

圌の優しさは残酷です。


続きたす。


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