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📖#15 冷笑ず筆で戊う明治のボンビヌガヌル『暋口䞀葉日蚘』

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【前回たでのあらすじ】

明治時代のボンビヌガヌル䞀葉女史は、貧乏から脱出するために商売を始めたものの䞊手くいかず閉店。䞀発逆転をねらっお、うさんくさい占い垫を蚪ねたが䜓を芁求されおぶちギレ。桃氎ぞの想いは結ばれず、䞀葉女史の心はすさんでいくのだった。

【奇跡の14ヶ月】

䞀葉女史の1894幎12月1896幎2月たでの14ヶ月は、暋口䞀葉研究家の和田芳恵わだよしえ先生が「奇跡の14ヶ月」ず名づけられたした。

蚀葉のずおり奇跡のような14ヶ月で、䞀葉女史は毎月のように、小説か随筆を曞きあげるずいう、怒涛どずうの執筆掻動をしたす。

以䞋、奇跡の14ヶ月の䜜品たずめ。

1894幎明治2722æ­³

12月 小説『倧぀ごもり』 掲茉「文孊界」

1895幎明治2823æ­³

1月 小説『たけくらべ』 連茉開始翌幎1月たで 掲茉「文孊界」
4月 小説『軒のきもる月』 掲茉「毎日新聞」
5月 小説『ゆく雲』  掲茉「倪陜」
8月 小説『う぀せみ』 掲茉「読売新聞」
9月 随筆『雚の倜』 随筆『月の倜』 掲茉「読売新聞」
   小説『にごりえ』 掲茉「文藝倶楜郚」
10月 随筆『雁がね』 随筆『虫の音』 掲茉「読売新聞」
12月 小説『十䞉倜』 掲茉「文藝倶楜郚」

明治29189624æ­³

1月 小説『この子』 掲茉「日本乃家庭」
   小説『わかれ道』 掲茉「囜民之友」 
2月 小説『裏玫』䞊 掲茉『新文壇』


す、すごすぎる

ほが毎月、小説のネタが浮かぶのはもちろん、䜜品ずしお完成させるのもすごい

これたで溜めに溜めおいたストレスを爆発させお、執筆掻動にぶ぀けたんでしょうねヌ。

䞀葉女史「お金は党然なくお、借金は増える䞀方で、恋愛もうたくいかない 萩の舎の歌子先生もダメだし、うさんくさい占い垫も頌りにならなかった 信じられるのは自分だけだ このやり堎のない怒りをぜんぶ執筆にぶ぀ける」

◆1895幎明治28䞀葉23æ­³

この幎の1月から文芞雑誌『文孊界』で、䞀葉女史の代衚䜜にしお傑䜜の『たけくらべ』を連茉したす。

日付なし
あるずころで、玫匏郚ず枅少玍蚀のどちらが優れおいるかずいう話になった。
ほずんどの人は玫匏郚を耒めたけど、私は枅少玍蚀掟だ。

枅少玍蚀は名門の家の人だけど、埌芋人がいなかったので萜ちぶれおしたった。
䞭宮定子様に採甚されお有名になるたで、぀らいこずが倚かったそうだ。
父ず兄がいる玫匏郚ず違っお、枅少玍蚀は自分で考えお生きるしかなかった。

『枕草子』を読むず、さびしい気持ちが䌝わっおくる。
玫匏郚は倩地に愛された子で、枅少玍蚀は雪が降る䞭の捚お子のような感じだ。

ずいうこずを私が蚀ったら、みんなはあきれお笑った。

䞀葉女史は知り合いず「あなたは玫匏郚掟 それずも枅少玍蚀掟」ず語り合ったようです。
叀兞奜きの人なら、䞀床は考える二択ですね

ほずんどの人が玫匏郚フォロワヌでしたが、䞀葉女史は枅少玍蚀フォロワヌ。

玫匏郚先生は、あの䞖界最叀の長線恋愛小説『源氏物語』を曞いた倩才䜜家なので、倚くの人がフォロヌするのは玍埗です。
それに察し、枅少玍蚀先生は感受性豊かな゚ッセむ集『枕草子』を曞いた倩才゚ッセむスト。

暩力者からのバックアップ䜓制が敎っおいる玫匏郚は、才胜はあるけど貧乏で苊劎しおいる䞀葉女史からしおみれば、

䞀葉女史「恵たれた環境で執筆出来るのだから、長線倧傑䜜を曞けお圓然でしょ」

ず、あたり評䟡せず。

䞀方で、バックアップ䜓制はほずんどなく、䞖間から抌し぀けられた女性の幞せずいうものを疑い、自分の教逊ずセンスだけでのし䞊がった枅少玍蚀先生に、䞀葉女史が共感するのは玍埗です

䞀葉女史もバックアップ䜓制はなく、貧乏に苊しみ、あるのは教逊ず文才だけなので、枅少玍蚀先生に自分を重ね合わせたんでしょうねヌ。

ちなみに、私はどちらの先生も倧奜きですけど、どちらか人を遞ぶずしたら、枅少玍蚀先生掟ですねヌ。
女性が䞀人で䞖間を生き抜く姿にあこがれるので。

皆様は、どちら掟ですか

䞖間の人は、倫も子どももいない私のこずを、なんのために生きおいるのかず䞍思議に思うだろう。
私は私の生き方で生きおいくしかない。

ぜんぶ質屋に出しおしたい、䜕もなくなっおしたった我が家で、静かに本を読むのも、考えおみればおかしいこず。

぀ぎはぎの着物の䞊に矜織を着お、いろんな䌚に出垭しお、裟すそを螏ふたれお砎れないように気を぀けるのも面癜い。

今幎の倏は、江の島ず箱根に行こう。
お金がないのに、こんなこずを蚀うのも面癜い。

すべおのこずは面癜い。

前向きに生きおいこうず決めお、䞀葉女史が元気になったような文章のように芋えたすが、私はこの文を読んだずき、「あ、やばいな。䞀葉女史、もう限界だ」ず思いたした。
あたりにも珟実が぀らいず、ポゞティブなこずを自分に無理やり蚀い聞かせるしかないですもんね。

出版瀟はもっず原皿料あげおよヌ



【奇跡の14ヶ月・継続䞭】
1月 小説『たけくらべ』 連茉開始翌幎1月たで 掲茉「文孊界」
4月 小説『軒もる月』 掲茉「毎日新聞」



4月20日
萩の舎の皜叀日。早朝に出版瀟の方が来蚪。
倕方、萩の舎から垰るず、久䜐賀くさがが来蚪。
久䜐賀ず倜たで話しお、お金を60円借りたいず頌んだ。

5月1日
久䜐賀に「早くお金を貞しおほしい」ず手玙を出した。
他の人のずころにも手玙を送っお、借金をお願いしたのに返事がない。

どい぀もこい぀も、あおにならない。
30円や50円ずいう少ない金額なのに、それさえ惜おしんで出せないのか。
貞せないのなら、はっきりず断ればいいのに。

いばっおばかりいる醜みにくい男たち。
私は間違ったこずはしおいない。間違っおいるのは、あの男たちだ。

私は人をだたしお、莅沢ぜいたくな遊びはしない。
母ず効を逊うために、わずかな揎助をお願いするだけ。
そもそも、圌らがお金を貞すず蚀ったから、こうしお頌りにしおいるのに。
貞すず蚀っおおきながら䜕もしおくれないのは眪ではないのか。
私にはなんの眪もない。

お金を借りるこずに埌ろめたさがなくなっおいたす。
むしろ、

䞀葉女史「お金を貞すず匕き受けたんだから、貞しおくれお圓然だ」

ず、堂々ずしおいる䞀葉女史です。

こんな悪い子じゃなかったのに
真面目ないい子だったのに

すべおは貧乏のせいです。
真面目に生きおいる人が損をする冷たい䞖の䞭が悪い

  なんだか、珟代日本を芋おいるみたいで心苊しいですね。
い぀の時代も真面目に生きおいる人が報むくわれお欲しいけど、必ずしも報われないずころがなんずも歯がゆい

「30円や50円ずいう少ない金額」ず、䞀葉女史は蚀っおたすが、明治時代の1円は今の䟡倀にあおはめるず、玄3,800円だそうです。むンタヌネット調べ

ずいうこずは、

30円玄11侇4千円
50円玄19䞇円

うヌん  普通の人は、おいそれず貞せるような金額じゃないですね。
必ず返しおくれるず玄束できる人になら貞しおもいいけど、暋口家のような生掻に困っおいる人には、返しおくれなさそうだから貞したくないな。

他の人には30円、50円をお願いしお断られたしたが、うさんくさい占い垫 盞堎垫そうばしの久䜐賀くさがには、

60円玄22侇8千円

を早く貞しおくれず催促さいそくする䞀葉女史です。

たあ、久䜐賀はたくさんお金をもっおるだろうから、こんな金額痛くもかゆくもないでしょうけど。

5月2日
早朝、借金5円玄19,000円の返枈催促の手玙が来たが、今は手元に䞀銭もないので返せない。
母䞊が返枈の延長をお願いしに行き、延長を承知しおもらったずころ、新しく郚屋を増築したので、そこの壁にかける額を私に曞いお欲しいず蚀われたらしい。
い぀もは私たちからお金を貞しおず蚀われるのが嫌で避けおいるくせに、こういうずきだけお願いをしおくる。

箄2䞇円もお返しできない暋口家です。
お金を貞しおくれおいる人は、䞀葉女史の才胜を認めお、増築したお郚屋にむンテリアずしお食りたいからず䞀筆求めおきたした。

䞀葉女史「い぀もは私たちを避けるくせに、こういうずきだけはお願いしおくる」

ず怒っおたすが、そのお願いを逆手さかおにずっお「䞀筆曞いおあげるから借金垳消しにしお」ず亀枉したら良かったんじゃないかなヌ

野々宮菊子さんが来たので、和歌のお皜叀ず源氏物語の講矩をする。
その埌、野々宮さんが銬堎孀蝶ばばこちょうに぀いお話した。

菊子「廊䞋ですれちがっただけだから、姿はよく芋えなかったけど、立掟な方です。将来倧成功するか、たったくダメになっおしたうか、どちらかになる人ですね」

ず蚀っお、私に埮笑んだ。
私がなんだか分からずにいるず、

菊子「あなたがあの人の劻になったら、あの人は幞せでしょうね」
䞀葉「それは難しいですね」

ず私が笑うず、野々宮さんは倧笑いした。

倜、母䞊ず邊子が質屋に走っお、4円50銭玄16,200円を借りおきた。

野々宮菊子さんは、䞀葉女史に桃氎を玹介しおくれた人です。

銬堎孀蝶ばばこちょうは、2カ月前の3月に初めお、平田犿朚ひらたずくがくず䞀緒に暋口家を蚪れた文芞雑誌『文孊界』の人です。
のちに、翻蚳家ず慶応矩塟倧孊の教授になりたす。

なぜ、野々宮さんが銬堎孀蝶のこずを䞀葉女史に話したのかずいうず、胡蝶が呚りの人にもバレバレなくらい䞀葉女史に惚れおいたからです

どのくらいバレバレなのかは、日蚘の続きに曞いおありたす。

い぀だったか、銬堎孀蝶氏ず戞川秋骚ずがわしゅうこ぀氏が二人で我が家を蚪れたずき、

秋骚「孀蝶君は長い間、あなたのこずを思っおいるのですよ」
䞀葉「それは、ありがたいこずです」

ず、ほほ笑んだら、圌は黙っおしたった。

このあず、孀蝶氏の蚪問が倚くなったので心苊しい。
孀蝶氏が遠くに出かけたずきは日も欠かさずに手玙を送っおきお、野山で摘んだ花などを送っおくれるのは嬉しいけど申し蚳ない。

孀蝶「あなたをお姉様のように思っおいるのです」

こう蚀っお、日ずおかずに蚪ねお来る。

秋になる前には、私のこずなど飜きおしたうだろう。
人の心は氎の䞊を流れる花のように移り倉わるのだから。

戞川秋骚ずがわしゅうこ぀は、孀蝶の同玚生で『文孊界』の人です。
同玚生の秋骚に恋心をバラされおしたった孀蝶は、開き盎ったのか、毎日手玙を送っおきお、日ずあけずに家にやっおきたす。

孀蝶「あなたをお姉様のように思っおいるのです」

嘘぀け 姉だなんお思っおないだろ
おたえのその感情は、家族愛じゃなくお、恋愛感情だろ

孀蝶の熱愛はヶ月もしないうちに冷めおしたうだろうず、䞀葉女史は冷静に受け流したす。

そうですよねヌ。幎䞋からの熱愛は、ただ甘えたいだけなのかもしれたせん。
「䞀葉女史が䞀歩匕くのは分かるなヌ」ず思っお、幎霢差を調べたずころ、

銬堎孀蝶 1869幎明治2生たれ この時26æ­³
暋口䞀葉 1872幎明治5生たれ この時23æ­³

おい どういうこずだよ
孀蝶、おたえの方が3歳幎䞊じゃないか

3歳幎䞋の矎女に「私のお姉様だず思っおたす」ず蚀う孀蝶26歳。
11歳幎䞋の矎女に「私を女性のお友達だず思っおください」ず蚀う桃氎34歳。

なんなんだ、こい぀ら  。


続きたす。


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