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海のそばを、私はずっとつま先を見ながら歩いていた。2歩ぐらい先に歩いている彼の背中を視界に入れたら見つめてしまいそうで、視線が熱を持ってしまう気がして、見ることも眺めることもできなかった。彼もまた、後ろを歩く私を振り返ることなく、前を向いて「お前次第だ」とひとこと言った。 私は迷っていた。自分のやりたいことが一体どこでできるのか、前に進んでも道があるのかどうかわからない。そんな中、ずっと下を向いて歩いていたときに掛けられたのが、その言葉だった。 その言葉は、冷たいわけでもな
「そんなの、宇宙から見たらどうでもいいことでしょ?」それが彼女の口ぐせだった。 僕がいつものように酒に呑まれた日のこと。どうしてあんなに酔っ払ってしまったのかはもう忘れた。きっと、なにか悲しいこととか、辛いこととかがあったのかもしれない。同僚といつもの居酒屋に飲みに来て、中ジョッキ三杯でフラフラしながら辿りついたトイレで、僕は彼女に出会った。 彼女は、白いワンピースに黒髪ロングでトイレにかぶさって、リアル貞子みたいだった。鍵がかかっていない男女共用トイレでその光景を見たと