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📖『DIE WITH ZERO』📖
実はこの本が日本語で出る前から我が家で話題になっていたキーワードがあり、それとこの本のタイトルが全く同じだったので、当時本屋のベストセラーコーナーの前でギョッとした記憶がある。
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』
私たちは身近な人たちの死を何度か経験し、この本の中で何度も言われているように「ゼロで死ねたら理想的だね」という話をしていた。夫は資産という意味で言っていたのかも知れないが、私自身は物的なものとして身軽になってこの世を去りたいという意味の方が強かったように思う。
「ゼロで死ぬ」という話は、実は数年前、私の祖父の死を通じて、より一層強く感じられた体験でもあった。私の祖父は90歳を超えてから膵臓癌が発覚し、色々と悟った祖父は自分で自分の葬儀の手配を完璧にこなし、葬儀会社さんと自分で生前に何度も打ち合わせをして支払いも済ませ、墓石も自分で墓石屋さんに行って選び、古くなった先祖代々の墓石を買い替えて設置まで見届け、そうやって亡くなった。最後は少し入院もしたので死後あれこれの病院への支払いやあちこちへの清算などを祖父の貯金から使ったという計算にしてみると、貯金残高はびっくりするくらい少額で、もうあのまままだ生きていたらどうやってお暮らしになるつもりだったのだろうかと問いたくなるような残高になっていた。田舎の資産価値は殆どない家が残っているが、今後あの家についてなんらかの動きが必要になった場合の費用が残高から出ると考えてみれば、これはもう「ゼロで死ねた」と言ってもいいのではないだろうか。残された私たちは開けてびっくりで、正直相続人たちはヒーヒー言っていた部分も多いと思われるのだが、最後の最後まできっちりしていて潔く、祖父本人としては良い人生だったのかも知れないなと、相続蚊帳の外の孫としては感じていた。
逆にゼロどころかマイナスでお亡くなりになった人も私の身近にいる。父親だ。多額の借金をお残しいただき、土地建物などの資産は無し。車も携帯も会社の持ち物だったし、とにかく細かいところまで見ても何もなくて、貯金もほぼ無し。あるのはマイナスの借金だけというとんでもない状況で、祖父母に助けてもらって解決した記憶がある。父がゼロで死ぬことを目指していたかは定かではないが、お金に無頓着だったことと、お金を巡らせることに向いていなかったこと、会社員ではあったが実際は職人気質で、彼は結婚さえしなければ人生本当に幸せに慎ましく楽しく生きていけたかも知れないし、他の家と比べずに身の丈に合った暮らしを家族全員が認識できるように振る舞っていれば違った人生だったことだろうと娘の私は今は少々冷めた目で振り返っている。
この本の中で「ゼロで死ぬ」ためには、資産を上手に切り崩しながら働き過ぎないことが大切というようなことが言われている。もちろんそれにも同意できる。しかし私が身近な人たちの例から思うことは少し違ったことだ。
「ゼロで死ぬ」ために最も大切なことは「自分の身の丈を熟知し、それに合った暮らしをする」ことである。もちろんこの本の中で言われているように、生涯使い切れないほどのお金を溜め込んで、そのまま死んでしまえば、お金はあの世には持っていけないわけだし、そのお金を獲得するためにせっせと苦労して働いていた時間や体力がもったいないと、私も非常にそれはその通りだと思う。
しかし、これはあくまで「身の丈に合った暮らしがきちんとできること」が大前提としてあるのだ。さらに言えば「身の丈に合った暮らし」さえできれば、自ずと「ゼロで死ぬ」確率はアップすると私は考える。
この本でも、実際に年間にかかる費用を計算した上で、寿命をシュミレートするアプリなどから自分の死ぬ年齢を算出し、あと何年生きられるのかと年間費用を掛け算して、死ぬまでに必要な合計金額を計算してみることを勧めている。本の中ではお金を生きている間に極限まで有効活用するにはどうしたらいいだろうかということが考えられ提案させているのだが、私が感じるのは、重要なのはお金を使おうとすることではなく、この死ぬまでに本当に本当にいくらくらいかかるのかを試算してみることなのではなかろうかと思った。
つい数年前にはニュースで老後2000万円問題なども話題になったが、実際に試算してみれば人によっては2000万円では済まない人もいるかも知れないし、もっと少なくても大丈夫な人もいるのかも知れない。私の父親がゼロ地点をぶっちぎりで通り越してのマイナスで死んでしまったのは、自分が結婚して子育てをしたいならどれくらいの収入でどれくらいの生活にしなければいけないのか、全く認識できていなかったからだろうと思うし、不幸なことに父親だけではなく母親も全く認識していなかったという惨劇だったからだろう。同世代の似たような仕事をしているような似たような環境にありそうな人たちも、こんなお金の使い方をしているのだから我が家だってできるだろう、という非常に危険な思い込みがあったのだと思う。それは大きな勘違いである。子供一人の3人家族で何々市で暮らしているからこれくらいの経済感覚、というのはもう一刻も早く忘れるべきことで、重要なのは実際の収入と実際の支出なのである。
自分のことは自分にしかわからない。もちろんプロの目線でアドバイスをもらうことは大切だが、結局はゼロで死にたかったら自分で試算してやってみるしかないのだ。試算もせずにただ不安だからという理由だけで貯金をし続けるのは、この本が言うように私もナンセンスだとは思うのだが。
この本は読んでいて色々思うところがあったが、確かに闇雲に老後の不安のためだけに人生の経験や時間を削ってまで労働を続けてしまうことには私も疑問がある。
必死に働いて働いて、なんだか疲れて、「私は一体、なんのために働いているんだろう」と思うことがあった時、この本はとても良い答えを提案してくれる本になるだろう。
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