15.「令和の白拍子」 宝塚音楽学校へ〜殺気立つ高校時代(初受験編その1)
「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。
前回、無事に初恋が成就したまりちゃんですが、お相手であるネコザメさん(仮名)との恋の顛末を語るためにも、先に「宝塚音楽学校初受験〜不合格編」をお届けしたいと思います。
それでは15本目の記事、参りましょう!
■初受験へむけて
ネコザメさんと無事に思いが通じ合ったまりちゃんでありましたが、いつも浮かれていた訳ではありません。
中学三年生の時には挑戦しなかった宝塚音楽学校の受験に初挑戦することになっていましたので、レッスンの時は真剣そのものでした。
当時の受験はどの様な内容になっていたかと申しますと、第一次と第二次の試験科目はバレエ、声楽(課題曲、コールユーブンゲン、新譜の音取り)、第三次は面接の試験でした。
今はだいぶ試験の仕方が変わっている様でして、一次は面接だけになったそうです。
ですが、私たちの頃は実技からのスタートでした。
バレエのお教室でも、「模擬試験」と言って、先生方が試験官になって下さり、受験のリハーサルをして下さいました。
私はバレエを踊る時は少し気持ちが楽で、何なら少しドヤ顔で踊っていました。
ですが声楽の時はガチガチに緊張していた様に記憶しています。
声楽の恩師に出会ってからまだ一年足らず…。
どうしても、自分の声が会場に響くことが「居た堪れない」という気持ちになってしまうのです。
頑張って「息を吸おう、吐こう」とするのですが、呼吸は頑張って吸うものではありませんので、そりゃダメダメに決まってますよね。
模擬試験の時は自分の反省点が浮き彫りになり、そのあとのレッスンで、ひたすら先生方にダメなところを直して頂きました。
受験を控えたその年の冬は、風邪をひかない様にマスクとマフラーグルグル巻き、そして腹巻とカイロ。
基本的に夏でも冬でも薄着の私は、先生方に本当にご心配をおかけしました。
バレエの朝比奈先生には、レッスンの後にほぼ毎回「まりえちゃん、汗かいた後に薄着だと風邪ひくわよ!」とご注意され、声楽の関根先生に至っては「これ持って行きなさい!」と腹巻やらマフラーを持たせてくださる始末。
それでも、基本的に身体が軽い方が好きで、「暑い暑い」とボヤいていたと思います。
移動中は「コールユーブンゲン」という声楽の本を覚えるために常にイヤホン。
拍子を取りながら音源を聞くので、いつも太腿の脇を叩きながら電車に乗っていました。
なんなら、歩きながらでも太腿を叩いていました。
想像してみてください。
髪はひっつめのお団子。
マフラーはグルグル巻きで、マスク。
セーラー服は学則通り着ているので黒タイツ。
荷物はかなり多め。
そんな女子高生が、異常に目を吊り上げながら一点を見つめ、太腿を叩いて歩いている…。
怖いとしか言いようがありません。
もう、ただの不審者。
こういう不審な女子高生を見かけましたら、それは、大抵の確率で宝塚受験生です。
さて、受験の日が近づくにつれ、私の目はどんどん吊り上がっていた様に思います。
ネコザメさんと「らぶらぶデート」どころの騒ぎではありません。
それでもメールは毎日しておりましたけれど。
■第一次試験、いくさの朝を迎える
気を抜くと薄着がちになる私でも、風邪をひく事なく、無事に第一次試験の日を迎えることとなりました。
東京の一次試験の場所は、新百合ヶ丘駅にある昭和音楽大学でした。
我が家が東京の東側にありますので、当日に遅刻をしては大変だと、前日から近くのホテルに泊まり込みました。
寝る前に、バスタオルを敷いてホテルのお部屋でストレッチをして、課題曲をお風呂で歌って…。
目を閉じたら死んでしまう様な気がしてなかなか眠れなかったのですが、ふと気がついたらぐっすり寝ていました。
若さのなせる技です。
寝坊することなく無事に起きることが出来、とても安心したのを覚えています。
さて、いよいよ、いくさの朝。
髪を超絶ひっつめてお団子にいたしました。
これ以上つけられない程に整髪料(男性用のジェルとハードスプレー)をつけて、後毛一本出さない勢いです。
妙に落ち着き払っていたのが我ながら不思議です。
準備をし、ウォーミングアップをして、ホテルの部屋を出る時から「戦闘モード」。
「寄らば、切る」と殺気を出しながらシャキシャキと会場に向かいました。
人とぶつかる事なく、車に轢かれることもなく、無事に到着した昭和音楽大学のキャンパス。
そには、音楽学校の制服を着てお化粧をした「なっちゃん」が待っていたのでした。
■一次試験
なっちゃんは、バレエ教室の先輩でもあり同級生。
一足先に合格を果たしたなっちゃんの背中に追いつきたい、負けたくない…。
そんな一心でレッスンに励んでいた私ですが、会場には私が着たくて仕方のない「宝塚音楽学校の制服」を華麗に纏ったなっちゃんの姿がありました。
「あぁ…もうなっちゃんは『あちら側の世界の人』なんだなぁ…」
猛烈に羨ましくもあり、胸がキュンと締め付けられる様でもありました。
でも、一年前と少し違ったのは「なっちゃんがこの会場にいてくれてよかった」と物凄く安心感を覚えた事です。
実際、会場には様々な女の子たちがやってきます。
大きな受験スクールの子たちは大挙して団体を作っていますし、お互いにお互いを物色する様に、目で光線を飛ばしあっています。
会場は異様な興奮に包まれていました。
もちろん、同門のみんなと私も固まっていましたが、味方は少数。
会場の雰囲気に飲まれるまい!と必死でした。
そんなところに、輝くばかりの「なっちゃん」の姿。
常に、なっちゃんが私たちに付き添ってくれ「大丈夫?」と声をかけ続けてくれました。
それが、どんなにありがたく心強かった事か。
本当に、今でも心から感謝しています。
さて、肝心の一次試験の内容に関しては特に変わったエピソードはなく、淡々と課題をこなせたなという感触でした。
派手に転んだとか、音程を派手に外した…というトラブルがあった方が話としては面白いんですが、そこは真面目に黙々とこなしてしまうまりちゃんなのでありました。
あっという間に試験は終わりました。
会場を後にする時「これは全て夢だったのではないかしら」と思ったくらいです。
合否発表は次の日の朝、電報で知らされるという事。
もはやなす術はなく、運命の朝を迎えるために、ひたすら「待つ」だけとなりました。
ということで、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪
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