呼吸

すべてがとおざかってゆく
わたしに関係がないものとして

風が枝や葉を揺らし
光と影が頬のうえで会って去って
日陰は冷たく
芝生はふかふか
目のなかで一粒の光がひかる
爪は伸び
脚は太くなり
その一瞬一瞬をわたしは見逃し続け
いつの間にか
いつの間にか

あの人の憤りやあの人の悲しみやあの人の喜びやあの嘲り
すべては箱の中にしまわれて
紙の上で折りたたまれて

わたしは眼前の生き物の呼吸を確認する
それで一日が過ぎてゆく

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