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絵と言葉

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#イラスト

こんにちは、誰かさん《庭師》

庭師は、庭師になって(厳密には庭師をこころざしてから)はじめて気がついたことがあります。 というか、ほとんど気がついたことばかりです。 まずは、長靴を履いているときの安心した気分を知りました。 大雨のあとのぬかるんだ濃い土のうえを、鏡のように空を映す水たまりのなかを、生い茂った草むらを、歩いていくことができるのは、長靴を履いているからなんです。 彼は長靴に本当に感謝しています。 それから、エプロン。 いつの間にやら、エプロンには多くのしみがついています。また、

ひっくり返してごらん

ひっくり返してごらん ひっくり返してごらんよ 重いものが軽くなり 軽いものは重くなり いぢわるはやさしくなって よろこびは悲しくなって 歩いてたのが飛んでる ひっくり返してごらん さむいがあったかいになって かえるは暗いところから明るいところへ出たよ

へんしん

すきないろがなにいろかとか ねこを飼っていたかとか 家にすみれの鉢を置いてきたことだとか そんなことはこれっぽっちも関係なく わたしは記号と番号になりました

光のつぶ

みんなはどんどん行ってしまう 立ち止まり 立ち止まり そこにあったのはちいさな光のつぶでした 光のつぶは言いました 見つけてくれてどうもありがとう 川のところへ還してくれる? 川へゆき、手のひらをひろげると 光のつぶは川の無数のきらきらのひとつに還りました

きみ

あの星も あの星も あの星も、 ぜんぶ きみだよ

笛を吹く

笛を吹いたら 朝が来た 笛を吹いたら 葉っぱが舞った 笛を吹いたら 海辺の町の曲がり角 風が吹いて かもめが飛んで とんびが鳴いて あちらから歩いてくる母さん おなかのなかに僕 笛を吹いたら 星が出た 目をつむったら とんびが鳴いてる あの曲がり角

わたしが眠るまで

くだらないこと1000個 しらないこと1000個 買えないもの1000個 全部海に捨てようとしたら 海は いらない と云う 背負って山を登ったら 山は 海と同じ考え。 雲にのぼろうとしたら 重たくて底に穴が空いて尻もちをついた 巨人があらわれ 全部食べてやろう と云った ただし、お前も含めて。 どうせ逃げたってまた重たくなるのさ。 それでもわたしは逃げたのだ とっても汚い帽子と臭い服を着て。 海はわたしを洗ってくれた わたしは木の実

アボカド

種持ってる 世界持ってる 宇宙持ってる ここに立ってる わたしのキッチン

三番目の家

三番目の家 長女はぐっすり眠ってる 昨晩だれより働いたから 三番目の家 次女に届いたある封筒 だれにも見せない秘密の手紙 三番目の家 三女は屋根裏 だれかの自伝を読んでるところ グラタンすっかり冷めちゃった 三番目の家 世界がぐるぐる回っても 今日はここに三番目の家

あおがやってくる

あおがやってくる 砂漠をこえて 船に乗って うみのむこうから ラピスラズリ あおがやってくる 鳥の背中にのって 虫やくだものさがして飛びはねる オオルリ コルリ ルリビタキ あおがやってくる 光をあびて すこしおもたいグラスのうつわ アイスクリームを入れましょうか そのうえにエスプレッソをかけましょうか あおがやってくる わたしが生まれるずっとむかしの絵 女の子が頭に巻いてるの この子、どんな声だったのかしら なにいろの髪の毛してたのかしら