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絵と言葉

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いつか消えてしまうわたしが見ているすべての景色

こんにちは、誰かさん《庭師》

庭師は、庭師になって(厳密には庭師をこころざしてから)はじめて気がついたことがあります。 というか、ほとんど気がついたことばかりです。 まずは、長靴を履いているときの安心した気分を知りました。 大雨のあとのぬかるんだ濃い土のうえを、鏡のように空を映す水たまりのなかを、生い茂った草むらを、歩いていくことができるのは、長靴を履いているからなんです。 彼は長靴に本当に感謝しています。 それから、エプロン。 いつの間にやら、エプロンには多くのしみがついています。また、

こんにちは、誰かさん《魔女》

今日はほうきに乗らない日と決め、時刻表でバスの来る時間を調べています。 普段は時計をほとんど見ることがないのですが、幸運なことに近くの小学校の庭に背の高い丸い時計が立っていたので、それと照らし合わせれば、今の時間がわかります。あと15分ほどでバスが来るみたい。バスに乗る際に気をつけることは、小銭を用意しておくことと、バスの入り口や天井の高さとじぶんのかぶっているとんがり帽子との距離のことを忘れないようにすること。 もし気持ちが悪くなったら窓を開けて風に当たればきっと大

朝の

今日なんだ、 とわかった朝の、 わたし

Water

もうやめよう と思うころ はじまるのだった いつも 光る雨が降ってきて。 黄金のかまきりが 網戸のところにくっついて。

点たち

わたしたちは 世界に打たれた 一つの点 たち

ひっくり返してごらん

ひっくり返してごらん ひっくり返してごらんよ 重いものが軽くなり 軽いものは重くなり いぢわるはやさしくなって よろこびは悲しくなって 歩いてたのが飛んでる ひっくり返してごらん さむいがあったかいになって かえるは暗いところから明るいところへ出たよ

智慧が去ったよ

ふと目をあげたら、魔女が飛んでいました。 言葉が聴こえました、すぐそばか、心のなかか、どこからか。 「智慧が去ったよ。」

へんしん

すきないろがなにいろかとか ねこを飼っていたかとか 家にすみれの鉢を置いてきたことだとか そんなことはこれっぽっちも関係なく わたしは記号と番号になりました

光のつぶ

みんなはどんどん行ってしまう 立ち止まり 立ち止まり そこにあったのはちいさな光のつぶでした 光のつぶは言いました 見つけてくれてどうもありがとう 川のところへ還してくれる? 川へゆき、手のひらをひろげると 光のつぶは川の無数のきらきらのひとつに還りました

きみ

あの星も あの星も あの星も、 ぜんぶ きみだよ

わたしはみずうみ

わたしはみずうみ 空があります 雲があります アメンボがいて波紋が浮かびます 風が織物をつくります たえず形を変えます 鴨が食事を探します 森があります 葉っぱが泳いでいきます 橋の上から人がこっちを見ています ぽちゃんと魚が跳ねる音を聴いた子どもが耳を澄まします わたしは映します 空も雲も木々も わたしのうえを風が撫で わたしのなかに雨が落ち 魚が棲み あなたの瞳にはわたしが映ります わたしの水面にもあなたが映ります 分け隔てなく映ります

きみって

きみってば すぐ泣いちゃうね ぼくとおんなじだ

やら、やら

なくしたものを探してるやら だれかに会いたいのやら