木を見て森も見る
「歩いている時に何考えてるんですか?」
ロングトレイルを歩いていますと自己紹介すると、訊かれることが多いです。
哲学的な思考を巡らせたり、仕事のアイデアを考えている、みたいな答えを期待されていた方々、がっかりさせてしまい申し訳ない。
正直、何も考えてないです。
私が歩いているのは、「みちのく潮風トレイル」という東北沿岸部の道をつないだルートで、働きながらセクションハイクを続けています。
散歩の延長として始めて、連休を駆使すること足掛け3年、そろそろ歩き終えられそうです。
車道もあれば、登山道や峠道もあるし、アップダウンが繰り返される段丘地形をひたすら歩く区間もあります。
トレイルを歩いている間は、
見える景色
聞こえる音
香ってくる匂い
手や足が触れたもの
身体の疲労感
といった「いま起きていること」に対して感想が浮かんでくるくらいなもので、目の前で起こっていないこと(特に未来のこと)に考えが及ぶ時間は、ほぼありません。
低山に茂る木々を見ては「この木なんの木、気になる木〜(気になる木〜)」と思ってます。
未来思考なのは、今夜はハンバーグ食べたいな〜くらいです。
こういうハイカーはきっと私だけではないはず。
巷では、プロジェクトを登山に喩える表現を目にすることがあります。
山は「山場を迎える」などの仕事上の常套句としても使われますし、事前に計画を立てたり、現在地や進捗を確認するなど、プロジェクトと通ずるところも確かにあるように思います。
ただ、プロジェクトマネジメントの会社に勤めていて、かつ、トレイルで山を歩くこともある身としては、山はプロジェクトを表現するには不十分だと感じています。
プロジェクトにおいては「いま起きていること」もさることながら、「まだ顕在化していないこと」への意識も、結構重要なのではないかと思うからです。
たとえば、
別部門が予定している作業影響を受けるおそれがないか
将来的な意思決定に支障をきたさないよう、管理資料を最新化できているか
長らく議論されていないタスクの工数や優先度の認識にズレが生じていないか
のように、プロジェクトメンバーがそれぞれの担当範囲に集中していると意識しづらくなりがちなリスクを見据えて、関係者間での議論を促すことも重要だと感じるのです。
目の前のこと、まだ見ぬこと両方を意識しながら考え、実行していくことが求められるプロジェクトは、山中の木だけでなく、森の全容、森を抜けた先まで見通す力が必要ということなのかもしれません。
(結局、山に喩えてる…?!)
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