【映画】『スープとイデオロギー』
敬愛するへんいちさんのnoteで知ったこの映画に足を運んで半月。いい感じに消化してきた今、やっぱり書いておきたいと思う。
『冬のソナタ』や日韓サッカーW杯共催で一気にお隣の国との距離が縮まり昨今では韓国のエンタメが世界制覇しつつある。私の周りでも沼にハマっている人が多数見受けられるし、実際私も感動した韓国ドラマがいくつもある。それでも日本に住む私たちの中で外国人への偏見のようなものはどこかに居座っている。だって日本は単一民族の国と刷り込まれているから。
1998年にアメリカに移住してすぐに気付いたことが3つあった。まず日本製品でアメリカが溢れていること。街をいく車はTOYOTA、NISSAN、HONDAなど日本車ばかりで、SONYやPanasonicの製品が電気店でも広告でも目についた。日本ってすごいな。
続いて日本でニュースに出てくる日米関係に相当するニュースが全くないこと。あれ?あんなに製品は売れてんのに日本の片思いちゃう?米日関係のニュースなんて見かけもしない。
最後に日本では日本人が特別と思ってたのにアメリカに来るとアジアの一国に過ぎなくて中国も韓国もタイもベトナムもフィリピンもインドも皆一括りだということ。まだ若かった私はそれまでの思い上がりに似たものは単なる勘違いだったと知った。
その前提で『スープとイデオロギー』を見に行って、同世代の同性の監督の熱量と才能と人生に心を揺さぶられてぼーっとなった。12歳年下の素敵な男性がみそめるのも当然。この新婚ご夫妻が実写で登場される。ドキュメンタリー映画だから。
乗り換え駅としていつも通過していた鶴橋がこの監督の生まれ育った場所。彼女が今日本と韓国、それから世界に向けて残しておくべき作品を仕上げられたことの意義は計り知れない。監督のお母様が経験された済州島の事件は体験した人がどんどんの世の中からいなくなっている。
なぜ韓国籍ではなく朝鮮籍を選んだのか、なぜ息子たちを北朝鮮に行かせたのか、この映画にすべて描かれている。
Netflixの韓国ドラマのうちとてもよかった『ミスターサンシャイン』では日本軍が朝鮮でどのように振る舞ってどのように恐れられていたを知ることができたし、『私たちのブルース』では済州島を舞台に人々の情と切なさに涙した。
この『スープとイデオロギー』というドキュメンタリー映画はそんな制作費やスタッフの数をかけていないのにそれらに勝る感動を与えるものだ。監督の、どうしても伝えないといけないという思いが乗り移っている。日本語、ハングル、留学されていたので英語もご堪能。聡明な方だ。
歴史として学ぶことも多いけれど一番好きなのはご主人荒井さんのお人柄。アメリカ人や日本人とは結婚してくれるなと言われて育った女性を愛し、その相手のお母さんを大切にする姿に何よりも魅力を感じた。
お母さんは映画の初めではかくしゃくとしておられたのに年々老いてアルツハイマーに冒されていかれる。実の娘以上にお母さんを大切にされる荒井さんなしにこの映画は成立しない。制作費集めにも貢献されたそうでエンドロールには大きくプロデューサーとして名前が出てきた。
今日は本格的な参鶏湯が飲みたくなりました。皆様もどうぞ良い日曜日をお過ごしください。