失敗は成功の母だよね。
私が初めて簿記を勉強したとき、先生の説明が早すぎて、何を言っているのか暫く分からなかった。1年勉強しても、まだわからないことがあった。
授業中に先生に、「わからない」って言えなくて、そのままにしてしまったところもあったし、風邪でお休みしてしまって聞いていないところもあった。
それが・・・
今では簿記は私の人生の一部みたいになってしまったよ。
学校を卒業してから一般企業に就職して、本格的に簿記を使うようになったのは税理士事務所に就職してからだった。
本当に仕訳ってするんだ~!って感動したよ。
でも、仕事は教科書とは違う。
お客さんがいて、領収書の束を渡されて、それだけでは意味が分からないものは聞かなければいけないし、とにかくボリュームが違う。
領収書の山!それを一枚ずつ確認する作業。
仕訳・仕訳・また仕訳!
パソコンに入力する作業も、目が潰れそうなくらいで大変だった。
その後で、資格の学校の講師や会社の財務マネージャーもやったけれど、いろんなことがあって仕事を辞めてしまった。
これからどうしようかな・・・。
自分に何が出来るのか考えたとき、講師としての原点に戻ってみた。
元々優秀で、仕事帰りに資格の学校に通ってくるような会社員や大学生ではなく、普通の人に簿記の資格を取ってもらうお手伝いをしたいと思い立った。
そこから地元の主婦に簿記を教えたり、職業訓練校で簿記を教えたりもした。
教え方が悪いって文句を言われたこともあるよ。
文句を言ってきた人たちは、休憩時間を過ぎても全然戻ってこなかったり、講義中も居眠りしているような人だったから、わからないのは自業自得じゃない!と、こちらも怒っていた。でも・・・内心ショックだったよ。
講師として既に沢山の検定試験合格者を出していたし、自信もあった。
それなのに・・・。
当時の私は、学校から依頼されていたカリキュラムをこなそうとして、受講する生徒のレベルに合わせることが出来ていなかったと思う。
生徒のレベルに差もあったし、全員にとって良い講義は出来なかったが、もう少し上手く教えてあげられなかっただろうか。
元々勉強が嫌いで、受験した経験もなく、事務の仕事をしたことのないような人に、どうやったら簿記を理解してもらえるのか。
そこから、初めて簿記を学ぶ人向けに、市販されている問題集よりも簡単な自作の問題を作ったり、説明をするときにはゆっくり話すようにするなど、相手に合わせて指導方法を工夫するようになった。
喫茶店で個別指導をしていたこともあるよ。
途中でやめてしまう人や、約束をすっぽかされてお金を貰えなかったこともある。
それでも続けていたら、運命の出会いみたいなのが増えていった。
「助けてください!」
私に連絡をしてくる人の第一声である。
何としても次の検定試験で合格したい!という事情のある人が私のところに連絡をしてくるようになって、一生懸命教えた結果、皆、合格してくれた。
失敗は成功の母だね。
私は今、広い会場で講義をすることもあるし、オンラインで個別指導もしている。
「わかりやすかったです。」
昨日の講義のあとで言われた言葉である。
あのとき私に教え方が悪いと言って来た人達には感謝しているよ。
あのときは力になれなくてごめんね。
それから私は日本で一番やさしい簿記の本を目指して簿記の本を執筆し、読者から感謝の言葉が届くようになった。
簿記は、お金の計算をするための技術だから、誰だって知っていた方が良い知識なんだ。
これからも、誰からの力になれたら嬉しいな。