エッセイ 『旅のつばくろ』
読書記録です。
沢木耕太郎さんの『旅のつばくろ』を読み終えました。
この本は、JR東日本が発行している「トランヴェール」という雑誌の連載から選ばれた41編が単行本化されたものです。
JR東日本の「トランヴェール」という雑誌。恥ずかしながら、私は馴染みがなく知らなかったのですが、JR東日本が運行する新幹線の座席ポケットに搭載されている雑誌のようです。思い返せば、東北新幹線って1、2回しか乗ったことがない・・。
そもそも東北方面へ赴いたことがほとんどなく、大学時代に友人と青春18きっぷを利用して福島県の会津若松へ訪れた旅と、社会人になってから「びゅう」の日帰りツアーを利用して母と宮城県の仙台や塩釜、松島を訪れたくらいです。
『旅のつばくろ』を読み終えて、備忘録として記します。
人生のうちで、面として知っている土地をいくつくらい持っているか。それは人生の豊かさということに直結しているような気がする。
<点と線と面 より>
イラストレーターの黒田征太郎さんの言葉より、
「どんな者にでもなることはできる。肩書をつけた名刺を一枚持てばいいんだから。しかし、難しいのはなりつづけることだよ」
<なりつづける より>
なにより印象的なのは、そのような「お嬢様」育ちのはずの酒井さんが、常に、自分の人生は自分で「創る」ものなのだと意識して生きてきたという点である。
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《固定的な自分などどこにもありはしないのだから、これからは自分を自由に創り操作しながら生きるのだ》
<兼六園までⅡ より>
沢木さんは、金沢へむかう新幹線の中で、酒井美意子さんの『ある華族の昭和史』を読んでいた。酒井美意子さんとは加賀百万石、前田家の元華族の方だそうだ。
沢木さんは『ある華族の昭和史』を読んで、強い後悔の念を覚える。それは、沢木さんが昔駆け出しのライターだった頃、酒井さんにインタヴューした際に外見的な「元華族」の見た目と「オホホホホ」と笑うような女性はちょっと・・という点から苦手意識を持ち、敬遠してしまったそう。
酒井さんの内部に広がる豊かな言葉の湖の存在に気がつかなかった
そんな後悔の念を抱きながら、金沢に到着し、前田家の庭園であった兼六園を訪れ、思いを馳せながら旅をする沢木さん。
酒井美意子さんという歴史上のような人物の話と若かりし頃を思い出して苦い後悔の念を抱く沢木さんが印象的な章でした。
沢木耕太郎さんといえば、私は紀行小説『深夜特急』が真っ先に思い浮かびます。バックパッカーで海外を旅をしたイメージが強いのですが、今回読んだ本は、初の「国内旅エッセイ」なこともあり、沢木さんが16歳の時に挑んだ東北一周旅行の話題がよくでてきます。当時の経験が、その後の旅の仕方の基本的な性格、生きていくスタイルにまで深く影響したのでは、と書かれていました。
2020年8月のインタヴュー記事ですが、読んで興味深かったです。沢木さん、もう70代とは。シュッとした細身で、とても姿勢の良い写真のお姿に驚きました。
そして、以前途中で挫折した『深夜特急』を読みたいと思ったのでした。
最後までお読みいただきありがとうございました♪
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