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少しずつ現実になる世界の端っこ。簡単にできないから、名産なのかも。

去年の桜が散る頃、家にこもっているぐらいなら、と軽い気持ちで筍掘りの誘いを受けてから早1年。

大変で、疲れて、悩んで……をしている間に、季節がぐるっと一周。
この間に転職をして、新しい環境に四苦八苦しながら収穫シーズンに向けて、予定がない週末は竹薮の準備を手伝っていた。
作業をしている間にいつの間にかGWが終わってしまった今日この頃、二度目の収穫・出荷時期が終わった。

残念ながら、今年はとっても筍が不作。
数が取れなかった昨年の不作を超える不作。逆ボジョレーの悲しさたるや。

寒かった3月から、あったかくなる4月。大事なこの時期に雨が降らず一気に季節が春になってしまったことが主な原因らしい。
いよいよ成長しようという時に水分を蓄えないまま出てきてしまったもんだから、形も良くない、色も良くない、そしてちょっと固くて甘みも少ないというフルコンボ。

そのくせに、4月後半は毎週のように雨が降り続くもんだから、粘土質の斜面をずるずる滑るように歩く羽目になり、泥々と寒さにやられていた。
個人的には過酷な状況だったけど、何とか無事にやりきれたかな。

*

昨年の出荷シーズンを終えてから、週末だけの作業にはなるものの1年を通してやることは盛りだくさんだった。振り返りと備忘録を兼ねて。

まずは竹薮の整理。不要な竹や古い竹を切っては、せっせと運び続けて業者の方に引き渡して。

夏は蚊や虫と戦いながら、草刈機を手に山を練り歩く。それから斜面に肥料をまく。
普段使わない握力と振動にやられて、コップを持ち上げられない自分に笑えた。

秋は藁を一面に敷き詰める。
笹の隙間からもれる陽の当たり方によって、黄金色に見える瞬間があって。この時が一番好きだったなあ。

その後、冬にかけて藁の上に土をのせていく。
この組み合わせが薮をふかふかにして、土の中で育つ白くて甘い筍を育てるらしい。
けれど、数トンの土の山を目にした時の絶望感。

「これ、全部……?」って心の中で思いながらせっせと山を崩し、一輪車に積み、運んでは隙間がないように均一にのばす。

東京ドーム半分、どれもこれも斜面での作業。
……正気の沙汰じゃない。笑
(よく見るサイズ感で比較したけどよく分からなかったのは内緒)

*

去年の記事を振り返ってみると「竹林のマイナスイオンすごい!いえい!」みたいな感じだったけど、1年通して痛感したのは怖さだった。

まずは、作業には危険がつきものだということ。
私自身は元気だけど、身近で事故が起こってしまったから。慣れた、なんて気は抜いちゃいけない。一瞬で人生変わってしまう。

それから、「頑張ったから成果につながる」わけではないこと。
これも当たり前のことなのだけど。

すごく不作だったのは、近隣も全部同じだったらしい。
みんな口を揃えて「天気が……」って言ってたから、収穫間際の天候がいかに重要かに尽きるのかもしれない。

でも。
もしこれまでの工程で、従来と違うことをやってしまっていたら?
他の人がやっていたら、臨機応変に対応できたところがあったのでは?
今さらどうしようもないことが頭をよぎってしまう。

だけど。
その難しさも一個ずつ知っていきたいって思ってる私がいる。

作業が終わった後の清々しさや笹の光の入り方、普段と違う風景を見られるのは楽しみではあるし。
あくまでも手伝いの立場でしかないし、いつまであるか分からないけど。

来年こそはもっと美味しい筍ができますように。それから、ちょっとずつうまく掘れるようになりたい。
ようやく?あっという間に?巡っていく季節に合わせながら、来年に向けた準備にも足を突っ込んでいくのだ。

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