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音と身体と心

自粛生活が始まってから、オンラインレッスンを始めた。以前はなかなか定期的にレッスンをする時間を取れなかったけれど、今は毎週受けてくださる生徒さんも増えた。どうしても、演奏会が希望の多い土日に入ることが多いので、今後どの程度続けていけるかは分からないけれど、せっかくのご縁なので、続けられるだけ続けていけたらと思っている。

相手がプロでもアマチュアでも、教える時のスタンスはあまり変わらない。テクニック的なことも音楽的なことも、スムーズにいっていないところを見つけて、その原因を対話しながら探り、理論と感覚のバランスに気をつけながらアドバイスしていく。当たり前のことだけれど、おひとりおひとり体格も性格も違うので、私が感じていることをそのままお伝えするよりも、その方の感覚に寄り添って、オーダーメイドでその方に「響く」解決策を見つけていきたいと思っているし、そのプロセスがとても楽しい。その方がご自身で何かに「気づいた」瞬間、音が格段に変わる。大抵そういう時、身体も心もスムーズに動いている。表情も変わる。そんな素敵な瞬間に立ち合えるのが、教えることの喜びの醍醐味な気がしている。

さて、オーダーメイドとは言っても、私自身の感覚をお伝えすることも大事なプロセスなので、今まで無意識だった身体の内外の感覚を、慎重に言葉にしていく。言葉とは難しいもので、言葉にした途端に、本来の感覚を失うことがある。演奏している時の感覚は、私にとっては何よりもパーソナルで、私の人格そのものとも言えるような大事なものなので、本質のニュアンスに濁りを与えないよう、正直に、できるだけその「感覚そのもの」を「はい」と相手に見せるように伝えるよう、心がけている。だから、確立されたメソッドとか、効率のいい教え方とは違うかもしれない。でも、自分だけの宝物のような感覚を、生徒さんにも見つけて欲しいなと思うので、そこは焦らずに、しっくりくる感じを、時間がかかってもいいから、自分で掴んでもらえるよう、指導しているつもりだ。

音を奏でるとき、何かを偽ることは難しい。よくも悪くも、全ては音になって出てくると私は感じる。気の流れのように、身体と心の両方がうまく作用してはじめて、「その人」本来の音を見つけられる。毎日毎日調子がいいという訳にはいかないからこそ、楽器を持つ瞬間に、日々の変化をそのまま感じとることが大事だと思う。もちろん、演奏会という日程が決まっていれば、それに向けて色々なコンディションも整えていく。そのためにも、まずは一日一日、音と身体と心に、誠実に向き合っていたい。

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安達真理 - Mari Adachi
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